もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

129冊目 脇田晴子「室町時代」(中公新書;1985) 評価3(5)

2012年01月21日 04時26分26秒 | 一日一冊読書開始
1月20日(金):

261ページ  所要時間1:30

著者51歳。一昨年(2010年)、文化勲章受章。評価3は、ひとえに私の力不足で、本当の価値は5である。    

この本を、なぜか私は2冊持っている…。しかも、長年本棚の肥やしとして、読んだことがなかった。

それなりに人生を忙しく生きてきた中で、この本と付き合うには、鉛筆を持って、ポイントをチェックしながら10時間はかけないと太刀打ちできない、のが分かっていたのだ。ちなみに、そんな本が我が家の本棚には、売るほどたくさんある。「馬鹿だなあ…」と思いながら、ついつい買ってしまうのだ。         

歴史が好きで、特に日本史が好きなのだ。司馬さん風に言えば、「『室町時代』という背表紙の文字を見ただけで、私の中では、すでに詩が始まっている…」という感じで、読める見通しもないのに、歴史関係の本が、どんどん溜まっていくのだ。    
今日、家に戻り、読む本を「何か無いか」と探していて、同じ本が2冊仲良く並んでいるのが目にとまった。最も脂の乗った51歳の学者が、それまでの研究の、総決算として取り組んだ本である。手も足も出ずに跳ね返されることだけは解っていたが、「こんな機会でもなければ、死ぬまで御縁を結べない」と思い、手に取った。   

但し、いつものように、やみくもに読むのではなく、多くの同様の歴史本に今後取り組む練習・たたき台にでもなればよいと、「1ページ15秒(見開き2ページ30秒)眺め読み」、すなわち、読み切る(理解する)読書ではなく、「一日に一人の優れた人格(小説家、学者(文系・理系)、宗教家、記者、碩学、英雄、聖人、etc)にお付き合いいただく栄に浴すること」が目的で、読み切ることに拘らない<遊書(付き合い読書)>の原点に戻るということだ。   

実際にその速度で読み始めると、勿論日本史の基礎知識は持ち合わせてるので、どういうことを問題にしてるのか、ある程度は漠然と分かるが、「神は細部にこそ宿る」のであり、その意味では、全く歯が立たなかった。ただ、久しぶりに中世日本史の専門用語満載の文章に触れて気持ち良かった、と書きたいところだが、速読を意識して30分以上眼球を上下に速く動かし続けると本当に目が回ってきて気分が悪くなり、休みを入れざるを得なかった。 

目次:
序章 室町時代の特質
「「有徳人」と乞食に代表されるような室町時代の時代的特色はどこから生まれてきたのであろうか。それは鎌倉中末期から全国的規模で、農村にも浸透しはじめた商品経済が、中世の伝統的な庄園制社会をくずしはじめたことによる。本書は、このような商品経済の影響による変化が時代を規定していると、考えて、それに焦点をあてて、「室町時代」を見ようと試みたものである。」
第1章 東アジア世界のなかの日本
 1、日明貿易の仕組み
 2、将軍権力の確立
 3、貿易の政治性
 4、貿易の実態
 5、日明貿易・倭寇・密貿易
第2章 土倉と徳政
 1土倉・酒屋・日銭屋
 2、高利貸業者の掌握
 3、土一揆と私徳政
 4、分一徳政令と徳政免除
第3章 変貌する畿内と諸国
 1、豊作飢饉と地主制の成立
 2、小経営の存立基盤
 3、京と諸国
第4章 自治を高める都市と農村
 1、自検断の村々
 2、職種別結合の座の成立
 3、自治都市の成立
 4、差別された人々の集団
結びにかえて―戦国・近世への展望   

鎌倉時代は、何やら古代の尻尾が付いていて霞がかかっている、それならいっそ平安時代までいった方がが面白い。一方、戦国は見飽きたし、江戸は逆に近代的過ぎて、多様過ぎるのと、通俗時代劇で見飽きたしまった。やはり、「室町時代がいい!」。領主(土地)支配中心の時代から、商品流通、貨幣経済、産業の多様化、東アジア貿易へと何か、世の中の構造が、根っこから、静かに確実に、変わって行くのに、表面の政治は超ユルユルで和むか、と思えば6代将軍足利義教のように「おいおい、なにしなはんねんな?、もうー、あきまへんがなー!」と突っ込みを入れたくなるようなシビアーな悪御所が出たり、人の世虚し応仁の乱で、大義も何もなく、ただ私利私欲で戴く人間(義視と義尚)を入れ替える「とりかえばやものがたり」のしまりの無さ、そして何よりも土一揆・国一揆・一向一揆で庶民が本気で領主と闘い始め、富を蓄えた堺や博多の自治都市、祇園祭を担って一変させた京都の町衆の心意気、なにか人間の欲望がむき出しになり、<乱れに乱れてるのに豊穣な時代>が、室町時代である。私は、この時代が好きなのだ。

しかし、大河ドラマで「室町時代」は、随分冷遇されている。1994年の「花の乱」は、主役の市川団十郎がプーで、ダメだったが、1991年の「太平記」では、あまりの出来栄えの良さに毎週日曜日齧りつく様にして観ていた。「南北朝正閏論は、NHKはん、どう描かはりますねん?」、「後醍醐天皇はやっぱりええでえ!、そやけどなんで正成の言うことちゃんと聞いたらへんのや」、「あんなに仲の良かった尊氏と直義兄弟やったのに、<観応の擾乱>は厳しいなあ」「陣内さんの佐々木道誉、洒落てて、いかしてる!」、終わった後も、録画した「総集編」は、何十回も見直してほとんど頭に入っている。

ここまで書いたので、ついでに、もみさんの歴代大河ドラマ・私的ベスト10を紹介させて頂きます。

第1位1977年「花神」
第2位1991年「太平記」
第3位1992年「翔ぶが如く」
第4位1987年「独眼竜正宗」
第5位1995年「八代将軍吉宗」
第6位2000年「葵徳川三代」
第7位1980年「獅子の時代」
第8位1978年「黄金の日々」
第9位1979年「草燃える」
第10位2002年「利家とまつ」
他の力作:1997年「毛利元就」
1976年「風と雲と虹と」
1993年「琉球の風」&「炎立つ」
1994年「花の乱」
2008年「篤姫」
etcである。
他にも概ね、1990年代までの作品は粒ぞろいだった。改めて順位付けするとなると、結構難しい。1位~4位は、ほぼ鉄板だが、それ以下は気分によって上下しそうである。

こうして振り返れば、一目瞭然で1970年代~90年代のNHK大河ドラマは、骨太の開拓者精神に富む制作を成し遂げていた!!!、ということが分かる。NHKには、現在の視聴者に迎合し、阿る制作では結局、後世に評価される仕事は残せない、ということと、資料収集・時代考証的に困難ではあっても、「飛鳥・白鳳」、「奈良・天平」、「平安(弘仁・貞観、摂関政治、院政期)」、「室町」、「大正」、「暗い昭和前期」などを、NHK自らが発掘して歴史のスタンダードを創造するんだという気概を持って欲しい

顔よりも、演技力で勝負して下さい。顔や、嘘くさいスウィーツストーリーもすぐメッキが剥がれます。日本の歴史は、視聴率の取れる「戦国」と「幕末」だけでは断じてない!、ということを、率先して表現して下さい。    

と、ここまで書いてきて、俺が、本書の内容に、ほとんど触れていないことに気が付いた。ただ、分かって欲しいのは、たとえ歯がたたない内容の本であっても、歴史の本は、これだけ歴史への溢れる思いを喚起する力があるということだ。    

現在、酒精を相当に摂取しており、本書の内容については、後日少しでも補足したいと思います。   

※今回の文章は、分類上、『読書記録』というよりは、『日記』で掲載させて頂きます。  

それでは、皆様、「歴史好きの人たちは、この指とまれ!」ってことで、お休みなさいませ。
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