もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

3 064 岡野雄一「ペコロスの母に会いに行く」(西日本新聞社;2012) 感想5

2014年02月05日 01時29分06秒 | 一日一冊読書開始
2月4日(火):
    

191ページ  所要時間 2:35      図書館

著者62歳(1950生まれ)。

ペコロスとは、小玉ねぎで坊主頭の著者を指す。夫の死後、80歳を超えて認知症を発症した母が、介護老人施設に入所し、著者は定期的に母の下を訪ね、その度に小さな騒動を経験し、一方で昔のことを思い出す。また、10人兄弟の長女として生まれた母の結婚前の姿などを想像する。現在と過去が認知症の母の頭の中で錯綜し、それを外から見て、長男の著者が優しく想像し作品化する。

「孝行をしたい時には親は無し。さりとて墓に布団は掛けられぬ」だったかな。読んでいて何度も、温かくて深い思いを抱かせられた。何度も泣けてきて仕方がなかった。

自分の母にも呆けるほど、もっと長生きをして欲しかった。もちろん、苦労はたくさんあるだろうが、それも含めて父母にはもっともっと生きていて欲しかった。素直に、そう思わせてくれる作品だ。

絵が優しく、施設での認知症の現実を描いているのに、ファンタジーで詩情あふれる物語りには、何度もうならせられた。“何度も”が多くなったが、いい作品集である。途中に挟まれている随想もとても良かった。

毎週週刊朝日の連載を立ち読みしていて、その度に涙ぐんでしまう。お母さんの老化は確実に進んでいる。そう遠くない時期にこの作品の第一弾は終わりを迎えるだろう。そのことが、さらにこの作品への思いを深めている。

映画化された作品の評判も随分高いみたいだが、やはり原作の素晴らしさによるのだと思う。TV放映されたら録画して何度も見ようと思う。

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