もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

3 054 天木直人「さらば外務省! 私は小泉首相と売国官僚を許さない」(講談社;2003/9) 感想2+

2014年01月08日 21時53分13秒 | 一日一冊読書開始
1月8日(水):

250ページ  所要時間 1:35     図書館

著者56歳(1947生まれ)。前駐レバノン特命全権大使。

本書を借りたのは、佐藤優「国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて」(新潮文庫;2005、2007)を読んだ後である。同じ時期の外務省の事情を知りたかったのだ。

仕事の疲れで、睡魔に襲われながら流し読みを始めたが、50ページを越えたあたりで違和感を覚えて読むのを止めようかと思った。人柄と内容がいびつな感じがするのだ。しかし「これでやめたら二度とこの本を読むことは無いだろう。ならば、とりあえず最後までページを繰ってしまおう」と考え直して眺め読みを続けた。結論から言えば、本をたくさん読んでると、たまに出会う「トンデモ本」の一種だと思う。

著者は、2003年の小泉首相によるイラク戦争協力を諌止して、外務省を止めさせられた元キャリア官僚である。小泉政権の対米従属姿勢と外務省内部の事なかれ主義の堕落腐敗ぶりを、具体例を挙げて事細かに実例とともに批判し、個人攻撃を続けている。

ならばリベラルで、しっかりとしたコモンセンスの持ち主かと言えば、著者の文章を読む限りではそうは思えない。意固地で柔軟性の無い人柄で、組織や世間と上手く関係を持てないのだが、異常にプライドが高いので、エネルギーが周囲への批判・非難・軽蔑・攻撃に向かい、自らを反省する力は弱いのだ。

本書に書かれている外務省の堕落ぶり、人物論は恐らくすべて事実だろう。ただ読んでいて、一面的批判だとも思われて、著者の批判に共感することもできない。誰かれ構わず口汚く罵るのを聞きながら「それはそうだが、別の面もあるだろう…」と思ってしまう心理である。

例えば、外務省のキャリア官僚を批判しながら、著者が、ノンキャリア官僚たちを批判する部分が一か所だけあったが、彼はノンキャリアなんてのは、それ以下のつまらない奴らだと斬って捨てている。著者と同時期にノンキャリアとして佐藤優が外務省で活躍していたはずだが、一切触れていない。見えていないのだ。要するに、著者は外務省キャリア官僚の下らなさを力説しながら、自身も全く同じぐらい下らないキャリア官僚のプライドでしか組織や世間を観ていないことに気づいていない。視野が非常に狭いのだ。

反小泉、反官僚だから、「敵の敵は味方か?」 俺にはそうは思えない。著者は、批判するエネルギーだけは強いが、一面的であり、著者自身の中に非常に保守的な部分を抱えており、リベラルぶる部分は非常に幼稚でレベルが低く無責任な放言が目立つ。俺は、この著者とは組みたくない。偏屈な著者も堕落した外務省もどっちもどっちだと思う。

著者が見下して軽蔑する外務省ノンキャリアの佐藤優に比べて、著者の人物ははるかに下品である。この人には、政治家も、官僚も務まらない。評論家だったらかろうじて糊口をしのげるだろう。現在、天木直人という著者の名を、メディアや書籍で目にすることは寡聞にしてほとんどない。それが著者の実力だったのだろうと思う。
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