もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

190709 二年前:6 079 中村哲「天、共に在り アフガニスタン三十年の闘い」(NHK出版:2013)感想特5

2019年07月09日 22時44分40秒 | 一年前
7月9日(火):
6 079 中村哲「天、共に在り アフガニスタン三十年の闘い」(NHK出版:2013)感想特5
2017年07月05日 01時27分38秒 | 一日一冊読書開始

2017年7月4日(火):         


254ページ   所要時間9:45      図書館→途中でAmazon発注1568円(1311+257)著者のサイン入り本だった。嬉しい!!  

著者67歳(1946生まれ)福岡県生まれ。医師・PMS(平和医療団・日本)総院長。九州大学医学部卒業。日本国内の診療所勤務を経て、84年にパキスタンのペシャワールに赴任。以来、ハンセン病を中心とした貧困層の診療に携わる。86年よりアフガニスタン難民のための医療チームを結成し、山岳無医地区での診療を開始。91年よりアフガニスタン東部山岳地帯に3つの診療所を開設し、98年には基地病院PMSを設立。2000年からは診療活動と同時に、大旱魃に見舞われたアフガニスタン国内の水源確保のために井戸掘削とカレーズ(地下水路)の復旧を行う。より根本的解決を図るために2003年から大河クナール川からの取水口を設け、全長25kmに及ぶマルワリード(真珠)用水路を拓き、広大なガンベリ砂漠の緑地化までも達成した。その仕事は、グーグルマップで確認できる!

【目次】はじめに―「縁」という共通の恵み/序章 アフガニスタン二〇〇九年/ 第1部 出会いの記憶1946~1985(天、共に在り/ペシャワールへの道)/第2部 命の水を求めて1986~2001(内戦下の診療所開設/大旱魃と空爆のはざまで)/第3部 緑の大地をつくる2002~2008(農村の復活を目指して/真珠の水―用水路の建設/基地病院撤収と邦人引き揚げ/ガンベリ沙漠を目指せ)/第4部 沙漠に訪れた奇跡2009~(大地の恵みー用水路の開通/天、一切を流すー大洪水の教訓)/終章 日本の人々へ

著者のことは、これまでに断片的に見聞きしてきたが、昨年9月10日のNHKETV特集「武器ではなく 命の水を~医師・中村哲とアフガニスタンの録画を繰り返し繰り返し見続けることで強く意識するようになった。恥知らずな人間が幅を利かせる日本に絶望しかけていた中で、「こんな偉い誇らしい日本人がいる!」のが素直に嬉しかった。「6 077 中村哲「医者、用水路を拓く」(石風社:2007)感想5」を読んで著者への信頼と尊敬は確信となった。

本書の内容は、NHK「知るを楽しむ―この人この世界 2006年 6ー7月 (NHK知るを楽しむ/月) 中村哲 アフガニスタン・命の水を求めて ある日本人医師の苦闘」のテキストに7年分加筆修正を加えたもの。マルワリード用水路第1期工事13km完成までを描いた中村哲「医者、用水路を拓く」(石風社:2007)との内容的重なりはできる範囲で省かれているので、重ね読みの感じはない。著者の幼少期、青年期から語り起こしている。人には定めがある。アフガニスタンでの取り組みの総決算的な内容。

本書を早く読みたかったが、新本を定価(+税)1728円で購入するのは厳しいので、図書館に購入希望を出したらすぐに買ってくれたので喜んで6月30日(金)から読み始めた。読みだすとどんどん付箋が増えていく。どうしても自分の本にしたくなり、ブックオフを3軒探して回ったが、ダメだった。諦めて数年後の値下がりを待つ気になりかけた。

著者の本は速読しづらい。読み取りにくい外国の地名、人名が出てくるからというわけではない。読みにくいのかと言われれば、著者は職業作家でないのに、論理的かつ人のぬくもりを感じさせる良い文章を書く。著者は、常に弱い立場の人々に寄り添う生き方を貫いていく。著者は、自らの意志で青年期にキリスト教に改宗している。結局、「読み飛ばすのがもったいない気高く優しい精神がそこにある」ということになる。

複雑で変転著しい国際紛争・国際関係や気候変動などの困難な事態に翻弄され、自らの小ささ、無力を覚えながらも、アフガンの人々と信頼を重ね、手探りで一歩ずつ進んでいく著者や日本人、現地スタッフの様子を自分に置き換えて感じることの中に真実が現れているのであって、そこを読み飛ばすことは俺レベルの読み手には読まないに等しい。

読んでる側から見ると途方もない困難に直面しているにもかかわらず、著者は極めて冷静である。慌てふためき、深い絶望を覚え、あたふたじたばたし続けているのだが、著者の心の奥底に静かに「覚悟」が鎮座している。そのため、外見的にどんなに絶望的状況にあっても、著者の考えや行動およびその継続性は全くぶれない。理屈を超えた圧倒的な内容は、わずかな想像力さえあれば、日本社会にはびこる軽々しい理屈の愚かしさ、安っぽいウソをわからせてくれる。本書の内容の偉大さがわかる。

昨年9月10日のNHKETV特集「武器ではなく 命の水を~医師・中村哲とアフガニスタン」の中で全く描き切れていない果てしなく尽きることのない困難の繰り返し、繰り返し、繰り返し。そして、最終目的地ガンベリ砂漠の灌漑の段で、<栄光>という言葉が浮かんだ。これこそ真の<栄光だ>。

グーグル・マップでアフガニスタンのジャララバード付近を見てみると、明白に確かに著者の成し遂げた仕事(灌漑事業)が、目視できた。これは本当にすごい偉大なことである。

時間をかけて読み進むうちに、発作的に定価に近い1568円のアマゾンプライムをクリックしていた。本が、昨日7月3日(月)届いた。驚いたことに著者「中村哲」のサインが入っていた。同じ日にアマゾンで届いた著者の「医者 井戸を掘る アフガン旱魃との闘い」(石風社:2001)258円(1+257)にも著者の「中村哲」のサインが入っていた。全く同じ字体だった。著者の謦咳に少しでも触れたい俺にとっては望外の幸せであった。ただ考えてみれば、全くの私的組織であるペシャワール会の活動を広げるために著者が懸命に本を売ろうとしてきたことの証拠だろう。仇や疎かにはできない。著者の著作の多さは、大変な発信力であるが、実はPMSの活動への理解、協力を求める戦いであったと思い至る。今後、俺も必ずペシャワール会に寄付をするぞ!

やっぱり自分が所有する本はいい!。読みかけの図書館の本から付箋を付け替えながら要所を読み返し、横線を引き続けて、無上の幸せを味わった。「この人を見よ!」「この小柄で日に焼けた日本人を見よ!」 本書は真実の「真理と知恵の書」だと思う。著者は、単純な善悪二元論思考ではなく、とことん現実的で多元的なしぶといへこたれない思考・行動をとる。一方、根っこで<縁>を大切にしながら、人間の存在を前向きに信じて捉えている。

本書(=著者の人生)の評価は読み手によって違うだろう。読み飛ばして、本書の良さがわからない人もいるだろう。しかし、著者は「人は見ようとするものしか見えない」という言葉をよく口にするが、その言葉に従えば、俺にとって本書は「実践的な大いなる知恵の書」であり、感想は特5以外には考えられない。中村哲医師と同じ日本人であることが心の底から誇らしくありがたく思える。

本書の内容をまとめて紹介する時間も力も俺にはない。しかし、最後にアフガニスタンというまだ紛争の収まり切れない渦中で活動する著者の活動のすさまじさの一端を紹介して擱筆する。

・全254ページの終わり近く225~227ページで: (2010年の大洪水に際して)「水路を切れ、排水だ!」略。「俺に貸せ、水路は後で治せる。人命が先だ!」自ら掘削機に乗り込み余水吐きを必死の思いで切り崩し始めた。略。「ドクターサーブ、危ない!」と引き留めたが、見る見るうちに水嵩が増していた。略。これは戦場だ。やらねば多くの村民が死ぬ。

「信頼」は一朝にして築かれるものではない。利害を超え、忍耐を重ね、裏切られても裏切り返さない誠実さこそが、人々の心に触れる。それは、武力以上に強固な安全を提供してくれ、人々を動かすことができる。私たちにとって、平和とは理念ではなく現実の力なのだ。私たちは、いとも安易に戦争と平和を語りすぎる。武力行使によって守られるものとは何か、そして本当に守るべきものとは何か、静かに思いをいたすべきかと思われる。 244ページ

今、周囲を見渡せば、手軽に不安を忘れさせる享楽の手段や、大小の「権威ある声」に事欠かない。私たちは過去、易々とその餌食になってきたのである。このことは洋の東西変わらない。一見勇ましい「戦争も辞さず」という論調や、国際社会の暴力化も、その一つである。経済的利権を求めて話を損ない、「非民主的で遅れた国家(もみ注:北朝鮮か)」や寸土の領有に目を吊り上げ、不況を回復すれば幸せが訪れると信ずるのは愚かである。人の幸せは別の次元にある。/人間にとって本当に必要なものは、そう多くはない。少なくとも私は「カネさえあれば何でもできて幸せになる」という迷信、「武力さえあれば身が守られる」という妄信から自由である。何が真実で何が不要なのか、何が人として最低限共有できるものなのか、目を凝らして見つめ、健全な感性と自然との関係を回復することである。/略。進歩だの改革だのと言葉が横行するうちに、とんでもなく不自由で窮屈な世界になったとさえ思われる。 245ページ


アフガニスタンは、本来食料自給率100%の国(日本は28%)であったが、100年に一度あるかないかの干ばつで大変な食糧難になっている。

餓死とは、抵抗力がなくなった状態で、汚い水を飲んで子供など弱いものから腸をやられて簡単に死んでいく。
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