4月30日(土): 副題「1万3000年にわたる人類史の謎」
317ページ 所要時間 3:25 図書館→アマゾン注文1円
著者60歳(1937生まれ)。米国ボストン生まれ。専門の生物地理学や生理学に加え、文明論の著作もある。1998年のピュリツァー賞受賞作『銃・病原菌・鉄』、『文明崩壊』(ともに草思社)など著書多数。
リハビリ読書として、1ページ30秒でページに目を這わせた。意味を捉えるのが困難でしんどい読書になったが、最後まで行くことを最優先にした。感想3+は、俺の読み取り能力の問題である。きちんと読める人から見れば、談論風発、縦横無尽の痛快な読書体験になるかもしれず、評価は確実に4以上になると思う。
人類史で、アフリカや南北アメリカ大陸が出遅れた理由を南北軸に置き、ユーラシアの優越を東西軸に据えた論理。アメリカ先住民が、ユーラシアの伝染病によって壊滅的人口減少を受けたのに、アメリカからユーラシアへの伝染病は梅毒以外これと言って大したものがなかった理由を、人類が大きな被害を受けた伝染病の多くが家畜に由来することを指摘し、アメリカでは家畜化がほとんど進展しなかったからだと説明する。
・著者による本書内容の要約「歴史は、異なる人々によって異なる経路をたどったが、それは、人々のおかれた環境の差異によるものであって、人々の生物学的な差異によるものではない」35ページ
・もう一つの間違った思い込みは、移動しながら狩猟採集生活を営む人たちと、定住して食糧生産に従事する人たちとははっきり区別されるものだ、という考え方である。われわれはこの二つのグループを対比させて考えることが多いが、自然の恵みが豊かな地域の狩猟採集民のなかには、定住生活に入ったものの、食料を生産する民とはならなかった人々もいる。(もみ注:これこそ我が縄文文化である!)152ページ
・野生のアーモンドには数十個で致死量となる青酸カリが含まれている。165ページ
・ドングリは素晴らしい食糧供給源となりうるのだが、いまだに栽培化されていない。→①成長の遅さ。②苦みが複数の遺伝子でできてるので品種改良が困難。188~189ページ
・家畜化できている動物はどれも似たものだが、家畜化できていない動物はいずれもそれぞれに家畜化できない者である。233ページ
・こうした相違は、アメリカ大陸やアフリカ大陸が南北に長い陸地であるのに対し、ユーラシア大陸が東西に長い大陸であることの反映ともいえる。そして人類の歴史の運命は、この違いを軸に展開していったのである。286ページ
・非ヨーロッパ人を征服したヨーロッパ人が、より優れた武器を持っていたことは事実である。よ進歩した技術や、より発達した政治機構を持っていたことも間違いない。しかし、このことだけでは、少数のヨーロッパ人が、圧倒的な数の先住民が暮らしていた南北アメリカ大陸やその他の地域に進出していき、彼らにとってかわった事実は説明できない。そのような結果になったのは、ヨーロッパ人が、家畜との長い親交から免疫を持つようになった病原菌を、とんでもない贈り物として、進出地域の先住民に渡したからだったのである。317ページ
【上巻目次】
日本語版への序文――東アジア・太平洋域からに見た人類史 1
プロローグ ニューギニア人ヤリの問いかけるもの: ヤリの素朴な疑問 16/現代世界の不均衡を生みだしたもの 19/この考察への反対意見 22/人種による優劣という幻想 24/人類史研究における重大な欠落 29/さまざまな学問成果を援用する 35/本書の概略について 38
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第1部 勝者と敗者をめぐる謎 47
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第1章 一万三〇〇〇年前のスタートライン:人類の大躍進 48/大型動物の絶滅 57/南北アメリカ大陸での展開 62/移住・順応・人口増加 71
第2章 平和の民と戦う民との分かれ道:マオリ族とモリオリ族 77/ポリネシアでの自然の実験 79/ポリネシアの島々の環境 83/ポリネシアの島々の暮らし 86/人口密度の違いがもたらしたもの 89/環境のちがいと社会の分化 95
第3章 スペイン人とインカ帝国の激突:ピサロと皇帝アタワルパ 99/カハマルカの惨劇 101/ピサロはなぜ勝利できたか 109/
銃・病原菌・鉄 119
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第2部 食料生産にまつわる謎 121
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第4章 食料生産と征服戦争:食料生産と植民 122/馬の家畜化と征服戦争 129/病原菌と征服戦争 131
第5章 持てるものと持たざるものの歴史: 食料生産の地域差 133/食料生産の年代を推定する 135/野生種と飼育栽培種 140/一歩の差が大きな差へ 148
第6章 農耕を始めた人と始めなかった人:農耕民の登場 149/食料生産の発祥 151/時間と労力の配分 154/農耕を始めた人と始めなかった人 156/食料生産への移行をうながしたもの 158/
第7章 毒のないアーモンドの作り方:なぜ「栽培」を思いついたか 165/排泄場は栽培実験場 167/毒のあるアーモンドの栽培化 169/突然変異種の選択 174/栽培化された植物とされなかった植物 180/食料生産システム 183/オークが栽培されなかった理由 185/自然淘汰と人為的な淘汰 190
第8章 リンゴのせいか、インディアンのせいか:人間の問題なのか、植物の問題なのか 193/栽培化の地域差 195/肥沃三日月地帯での食料生産 199/八種の「起源作物」 204/動植物に関する知識 210/ニューギニアの食料生産 217/アメリカ東部の食料生産 222/食料生産と狩猟採集の関係 227/食料生産の開始を遅らせたもの 229
第9章 なぜシマウマは家畜にならなかったのか:アンナ・カレーニナの原則 233/大型哺乳類と小型哺乳類 234/「由緒ある家畜」 236/家畜化可能な哺乳類の地域差 239/他の地域からの家畜の受け入れ 242/家畜の初期段階としてのペット 245/すみやかな家畜化 246/繰り返し家畜化された動物 248/家畜化に失敗した動物 248/家畜化されなかった六つの理由 251/地理的分布、進化、生態系 260
第10章 大地の広がる方向と住民の運命: 大地の広がる方向と住民の運命 263/食料生産の伝播の速度 264/西南アジアからの食料生産の広がり 270/東西方向への伝播はなぜ速かったか 275/南北方向への伝播はなぜ遅かったか 279/アメリカ大陸における農作物の伝播 280/技術・発明の伝播 283
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第3部 銃・病原菌・鉄の謎
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第11章 家畜がくれた死の贈り物: 動物由来の感染症 288/進化の産物としての病原菌 292/症状は病原菌の戦略 295/流行病とその周期 298/集団病と人口密度 300/農業・都市の勃興と集団病 302/家畜と人間の共通感染症 304/病原菌の巧みな適応 306/旧大陸からやってきた病原菌 310/新大陸特有の集団感染症がなかった理由 313/ヨーロッパ人のとんでもない贈り物 315
内容紹介文:銃と軍馬―― 16世紀にピサロ率いる168人のスペイン部隊が4万人に守られるインカ皇帝を戦闘の末に捕虜にできたのは、これらのためであった事実は知られている。なぜ、アメリカ先住民は銃という武器を発明できなかったのか?彼らが劣っていたからか?ならば、2つの人種の故郷が反対であったなら、アメリカ大陸からユーラシア大陸への侵攻というかたちになったのだろうか?
否、と著者は言う。そして、その理由を98年度ピューリッツァー賞に輝いた本書で、最後の氷河期が終わった1万3000年前からの人類史をひもときながら説明する。はるか昔、同じような条件でスタートしたはずの人間が、今では一部の人種が圧倒的優位を誇っているのはなぜか。著者の答えは、地形や動植物相を含めた「環境」だ。
たとえば、密林で狩猟・採集生活をしている人々は、そこで生きるための豊かな知恵をもっている。だが、これは外の世界では通用しない。他文明を征服できるような技術が発達する条件は定住生活にあるのだ。植物栽培や家畜の飼育で人口は増加し、余剰生産物が生まれる。その結果、役人や軍人、技術者といった専門職が発生し、情報を伝達するための文字も発達していく。つまり、ユーラシア大陸は栽培可能な植物、家畜化できる動物にもともと恵まれ、さらに、地形的にも、他文明の技術を取り入れて利用できる交易路も確保されていたというわけだ。また、家畜と接することで動物がもたらす伝染病に対する免疫力も発達していた。南北アメリカ、オーストラリア、アフリカと決定的に違っていたのは、まさにこれらの要因だった。本書のタイトルは、ヨーロッパ人が他民族と接触したときに「武器」になったものを表している。
著者は進化生物学者でカリフォルニア大学ロサンゼルス校医学部教授。ニューギニアを中心とする長年のフィールドワークでも知られている。地球上で人間の進む道がかくも異なったのはなぜか、という壮大な謎を、生物学、言語学などの豊富な知識を駆使して説き明かす本書には、ただただ圧倒される。(小林千枝子)
317ページ 所要時間 3:25 図書館→アマゾン注文1円
著者60歳(1937生まれ)。米国ボストン生まれ。専門の生物地理学や生理学に加え、文明論の著作もある。1998年のピュリツァー賞受賞作『銃・病原菌・鉄』、『文明崩壊』(ともに草思社)など著書多数。
リハビリ読書として、1ページ30秒でページに目を這わせた。意味を捉えるのが困難でしんどい読書になったが、最後まで行くことを最優先にした。感想3+は、俺の読み取り能力の問題である。きちんと読める人から見れば、談論風発、縦横無尽の痛快な読書体験になるかもしれず、評価は確実に4以上になると思う。
人類史で、アフリカや南北アメリカ大陸が出遅れた理由を南北軸に置き、ユーラシアの優越を東西軸に据えた論理。アメリカ先住民が、ユーラシアの伝染病によって壊滅的人口減少を受けたのに、アメリカからユーラシアへの伝染病は梅毒以外これと言って大したものがなかった理由を、人類が大きな被害を受けた伝染病の多くが家畜に由来することを指摘し、アメリカでは家畜化がほとんど進展しなかったからだと説明する。
・著者による本書内容の要約「歴史は、異なる人々によって異なる経路をたどったが、それは、人々のおかれた環境の差異によるものであって、人々の生物学的な差異によるものではない」35ページ
・もう一つの間違った思い込みは、移動しながら狩猟採集生活を営む人たちと、定住して食糧生産に従事する人たちとははっきり区別されるものだ、という考え方である。われわれはこの二つのグループを対比させて考えることが多いが、自然の恵みが豊かな地域の狩猟採集民のなかには、定住生活に入ったものの、食料を生産する民とはならなかった人々もいる。(もみ注:これこそ我が縄文文化である!)152ページ
・野生のアーモンドには数十個で致死量となる青酸カリが含まれている。165ページ
・ドングリは素晴らしい食糧供給源となりうるのだが、いまだに栽培化されていない。→①成長の遅さ。②苦みが複数の遺伝子でできてるので品種改良が困難。188~189ページ
・家畜化できている動物はどれも似たものだが、家畜化できていない動物はいずれもそれぞれに家畜化できない者である。233ページ
・こうした相違は、アメリカ大陸やアフリカ大陸が南北に長い陸地であるのに対し、ユーラシア大陸が東西に長い大陸であることの反映ともいえる。そして人類の歴史の運命は、この違いを軸に展開していったのである。286ページ
・非ヨーロッパ人を征服したヨーロッパ人が、より優れた武器を持っていたことは事実である。よ進歩した技術や、より発達した政治機構を持っていたことも間違いない。しかし、このことだけでは、少数のヨーロッパ人が、圧倒的な数の先住民が暮らしていた南北アメリカ大陸やその他の地域に進出していき、彼らにとってかわった事実は説明できない。そのような結果になったのは、ヨーロッパ人が、家畜との長い親交から免疫を持つようになった病原菌を、とんでもない贈り物として、進出地域の先住民に渡したからだったのである。317ページ
【上巻目次】
日本語版への序文――東アジア・太平洋域からに見た人類史 1
プロローグ ニューギニア人ヤリの問いかけるもの: ヤリの素朴な疑問 16/現代世界の不均衡を生みだしたもの 19/この考察への反対意見 22/人種による優劣という幻想 24/人類史研究における重大な欠落 29/さまざまな学問成果を援用する 35/本書の概略について 38
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第1部 勝者と敗者をめぐる謎 47
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第1章 一万三〇〇〇年前のスタートライン:人類の大躍進 48/大型動物の絶滅 57/南北アメリカ大陸での展開 62/移住・順応・人口増加 71
第2章 平和の民と戦う民との分かれ道:マオリ族とモリオリ族 77/ポリネシアでの自然の実験 79/ポリネシアの島々の環境 83/ポリネシアの島々の暮らし 86/人口密度の違いがもたらしたもの 89/環境のちがいと社会の分化 95
第3章 スペイン人とインカ帝国の激突:ピサロと皇帝アタワルパ 99/カハマルカの惨劇 101/ピサロはなぜ勝利できたか 109/
銃・病原菌・鉄 119
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第2部 食料生産にまつわる謎 121
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第4章 食料生産と征服戦争:食料生産と植民 122/馬の家畜化と征服戦争 129/病原菌と征服戦争 131
第5章 持てるものと持たざるものの歴史: 食料生産の地域差 133/食料生産の年代を推定する 135/野生種と飼育栽培種 140/一歩の差が大きな差へ 148
第6章 農耕を始めた人と始めなかった人:農耕民の登場 149/食料生産の発祥 151/時間と労力の配分 154/農耕を始めた人と始めなかった人 156/食料生産への移行をうながしたもの 158/
第7章 毒のないアーモンドの作り方:なぜ「栽培」を思いついたか 165/排泄場は栽培実験場 167/毒のあるアーモンドの栽培化 169/突然変異種の選択 174/栽培化された植物とされなかった植物 180/食料生産システム 183/オークが栽培されなかった理由 185/自然淘汰と人為的な淘汰 190
第8章 リンゴのせいか、インディアンのせいか:人間の問題なのか、植物の問題なのか 193/栽培化の地域差 195/肥沃三日月地帯での食料生産 199/八種の「起源作物」 204/動植物に関する知識 210/ニューギニアの食料生産 217/アメリカ東部の食料生産 222/食料生産と狩猟採集の関係 227/食料生産の開始を遅らせたもの 229
第9章 なぜシマウマは家畜にならなかったのか:アンナ・カレーニナの原則 233/大型哺乳類と小型哺乳類 234/「由緒ある家畜」 236/家畜化可能な哺乳類の地域差 239/他の地域からの家畜の受け入れ 242/家畜の初期段階としてのペット 245/すみやかな家畜化 246/繰り返し家畜化された動物 248/家畜化に失敗した動物 248/家畜化されなかった六つの理由 251/地理的分布、進化、生態系 260
第10章 大地の広がる方向と住民の運命: 大地の広がる方向と住民の運命 263/食料生産の伝播の速度 264/西南アジアからの食料生産の広がり 270/東西方向への伝播はなぜ速かったか 275/南北方向への伝播はなぜ遅かったか 279/アメリカ大陸における農作物の伝播 280/技術・発明の伝播 283
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第3部 銃・病原菌・鉄の謎
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第11章 家畜がくれた死の贈り物: 動物由来の感染症 288/進化の産物としての病原菌 292/症状は病原菌の戦略 295/流行病とその周期 298/集団病と人口密度 300/農業・都市の勃興と集団病 302/家畜と人間の共通感染症 304/病原菌の巧みな適応 306/旧大陸からやってきた病原菌 310/新大陸特有の集団感染症がなかった理由 313/ヨーロッパ人のとんでもない贈り物 315
内容紹介文:銃と軍馬―― 16世紀にピサロ率いる168人のスペイン部隊が4万人に守られるインカ皇帝を戦闘の末に捕虜にできたのは、これらのためであった事実は知られている。なぜ、アメリカ先住民は銃という武器を発明できなかったのか?彼らが劣っていたからか?ならば、2つの人種の故郷が反対であったなら、アメリカ大陸からユーラシア大陸への侵攻というかたちになったのだろうか?
否、と著者は言う。そして、その理由を98年度ピューリッツァー賞に輝いた本書で、最後の氷河期が終わった1万3000年前からの人類史をひもときながら説明する。はるか昔、同じような条件でスタートしたはずの人間が、今では一部の人種が圧倒的優位を誇っているのはなぜか。著者の答えは、地形や動植物相を含めた「環境」だ。
たとえば、密林で狩猟・採集生活をしている人々は、そこで生きるための豊かな知恵をもっている。だが、これは外の世界では通用しない。他文明を征服できるような技術が発達する条件は定住生活にあるのだ。植物栽培や家畜の飼育で人口は増加し、余剰生産物が生まれる。その結果、役人や軍人、技術者といった専門職が発生し、情報を伝達するための文字も発達していく。つまり、ユーラシア大陸は栽培可能な植物、家畜化できる動物にもともと恵まれ、さらに、地形的にも、他文明の技術を取り入れて利用できる交易路も確保されていたというわけだ。また、家畜と接することで動物がもたらす伝染病に対する免疫力も発達していた。南北アメリカ、オーストラリア、アフリカと決定的に違っていたのは、まさにこれらの要因だった。本書のタイトルは、ヨーロッパ人が他民族と接触したときに「武器」になったものを表している。
著者は進化生物学者でカリフォルニア大学ロサンゼルス校医学部教授。ニューギニアを中心とする長年のフィールドワークでも知られている。地球上で人間の進む道がかくも異なったのはなぜか、という壮大な謎を、生物学、言語学などの豊富な知識を駆使して説き明かす本書には、ただただ圧倒される。(小林千枝子)