もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

124冊目 山崎豊子「運命の人(二)」(文芸春秋;2009) 評価4

2012年01月15日 08時23分14秒 | 一日一冊読書開始
1月14日(土):

253ページ  所要時間5:25

主人公弓成亮太記者が、取調室で参考人から突然、被疑者として逮捕されてから、物語は俄然緊迫を帯びて動き始める。弓成は、代用監獄で耐え難い屈辱をなめる。毎朝新聞をはじめ報道他社は、一斉に国民の「知る権利」を前面に出し、取材への国家権力の介入を非難するキャンペーンをはる。

弓成に外交機密を漏らした外務省事務官三木昭子は、憔悴し切って、検察に対して全面的に事実関係・罪を認めて降伏、公判での協力を受け容れる。

弓成と三木が別々に保釈された後、検察庁で『外務省機密漏洩事件事件』の起訴状が発表される。そして、隠し玉「被告人弓成は、被告人三木とひそかに情を通じ、これを利用して同被告人をして前期安西審議官に回付される外交関係秘密文書ないしその写しを持ち出させて記事の取材をしようと企て……。」が明かされると、検察による意図的記載の「情を通じ、これを利用して」という部分が問題化し、世間の事件に対する風向きが逆転し、毎朝新聞は大混乱状態になる。弓成は休職に追い込まれる。

新聞取材によって国民の「知る権利」を守るという理念の闘いは、国家権力によって、人間の下半身の下品なゴシップに強引にすり替えられたのだ。そして、多くの関係者が深く傷ついていく。

弓成を支える5人の弁護団が結成され、無罪をかけて、検察との闘いが始まる。公判でのシーンは、全く状況が逆で違うのに、「白い巨頭」の公判風景が思い出されて、弓成亮太が頭の中で唐沢寿明の財前五郎と重なってしまった。

公判で検察側は、外務省の北米一課長をはじめ、超エリートの実力者を次々と証人として繰り出してくる。これも、白い巨頭の公判を思い出してしまう。結局は、真実が一番強いはずなのだが…、どうなるのやら。外務省の証人たちは、最後まで虚偽の証言を組織ぐるみで押し通した。これで第二巻の終わり。
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