もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

4 044 米原万里「オリガ・モリソヴナの反語法」(集英社文庫:2002) 感想7(特々5)

2015年02月12日 23時41分11秒 | 一日一冊読書開始
2月13日(木):

531ページ  所要時間 12;30  アマゾン594円(337+257) 

著者52歳(1950~2006;56歳)。ロシア語通訳・翻訳家。作家・エッセイスト。

語学力と才能と経験と人間性の奇跡のコラボ、著者米原万里以外に、こんな壮大なスケールかつ繊細で周到な謎解き物語りを書ける者は存在しない。人生でそう多くない<本との幸せな出会い>だった! 12時間を超えても楽しくて仕方のない読書って「どうよ!」ほとんど経験がない。

あまり興奮を表に出すと恥ずかしいのだが…。終盤、数々の謎が解き明かされていくのを読みながら、鳥肌が立つような気分になった。バラバラのパズルをどう感動的にまとめ切るのか? そして、奇跡は過不足なく実現した。「著者(の才能)は“神”だ!」と思った。また、「著者は激しい怒りを抱きながら書いている! でも、何に対して?」と思った。

旧ソビエト連邦について、これほど壮大でスリリングでリアルな叙事詩を書く日本人がいた!、ということがまず発見であり、驚きである。眉間にしわを寄せて複雑で小難しい理屈を使った長たらしい退屈な物語りなら、書ける作家はたくさんいるだろう。しかし、本書を読む二日がかりの12時間、一瞬たりとも嫌にならず、飽きることなく、深まりゆく物語りの世界に引き込まれ続け、良い意味で繰り返し繰り返し予想を裏切られ続けた。この疾走感! 最後は一気呵成に語り下ろされるのを読まされた先に、著者を「“神”だ!」と思った。こんな読書経験は、ほとんどない。

高橋和巳「邪宗門」は、面白かったが、苦行だった。本書は、途方もないスケールの物語りなのに面白く且つ楽しい読書になった。例えとして適当ではないかもしれないが、高橋和巳と重松清を足して2で割った感じか。

サンステファノ条約が締結された1878(明治11)年に生まれ、1968(昭和43)年プラハの春に亡くなったチェコスロバキアのプラハ・ソビエト学校の舞踊教師オリガ・モリソヴナ。1960年頃、フルシチョフ時代のプラハで彼女の教えを受けた弘世志摩(シーマチカ)が、ソビエト連邦崩壊直後の1991年、オリガ・モリソヴナの真実の姿を追うのモスクワの旅。

読み進むうちに、スターリン時代~フルシチョフ時代のソビエト連邦、秘密警察NKVD、ラーゲリ(強制収容所)、さらにその崩壊直後のロシア社会の様子が手に取るように再現され、その時代を生きる人々の息遣いまで感じられる気がした。

こんな物語りは、一流のロシア語通訳だった著者にしか書けない。

あらすじを書く時間も気力もない。ただ一言、「まあ騙されたと思って、読んで見なはれ! この上なく上質で、本当に重厚かつ面白くて楽しい読書ができますよ!」とだけは言っておきます。ただし、大人としてのある程度以上の知識と理解力は必要ですから、「面白くなかったぞ!責任とれ!」と言われても、責任はとれません。「ああそうそう、そういう人は最後まで行けないでしょうから、心配ないか?!」

・「これぞ想像を絶する美の極み!」
・「ああ、神様!これぞ神様が与えて下さった天分でなくてなんだろう、そこの眉目秀麗な神童!あたしゃ感動のあまり震えが止まらなくなるよ」
・「えっ、もう一度言ってごらん、そこの天才少年! ぼくの考えでは……だって!! フン、七面鳥もね、考えはあったらしいんだ。でもね、結局はスープの出汁になっちまったんだ。分かった?!」
・「きんたまより上には飛べない。」
・「去勢豚はメスに乗っかってから考える」
・「他人の掌中のチンポコは太く思える」
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 140211 1360PV。m(_ _)m... | トップ | 150214 腰抜けの朝日の社説... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

一日一冊読書開始」カテゴリの最新記事