もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

140冊目 須田慎一郎「下流喰い―消費者金融の実態」(ちくま新書;2006) 評価4

2012年02月01日 06時13分34秒 | 一日一冊読書開始
1月31日(火):

219ページ  所要時間4:05

最期まで、読み切った本には、評価が甘くなってしまう。特に著者が、権力に対して捨て身の姿勢を少しでも示している場合には、評価は甘くなってしまう。

新聞一面の広告代は、全国紙だと約7000万円だそうだ。容易にそんな広告を出せるのは、外資系と自動車産業と消費者金融の3つしかない。そんな中で、消費者金融を批判・非難すれば、マスメディアは過剰に反応する。当の企業よりも、仲介をする博報堂・電通などの広告代理店が自己判断で検閲をし、圧力をかけてくるのだ。勿論、自粛・抑圧という圧力だ。そんな時に、捨て身でこれだけ、武富士とアイフルをはじめとする消費者金融の害毒について指摘したのは、立派だと思った

そして、2006年9月の出版以降に、武富士・アイフルがともに倒産した(2010年頃か?)ことを思い合わせると、ある意味、この本は、予言の書というべきだったのかもしれない。確かに、現在、TV画面から、あのチワワも、武富士ガールズの激しい踊りも消え去った…。でも、大人のモビットも、初めてのアコムも、プロミスさんも、ウリボウのリボちゃんも頑張ってるし、アイフルはゾンビ化して復活している…。まだまだ消費者金融の天下は続いてるのかな?

閑話休題、著者は、45歳、経済記者からフリージャーナリストへ。この本は渾身の取材・報道だと思う。決して読んでいて、楽しい内容ではない。冗談ではなく、本当に足元にぽっかりと真っ暗な深い落とし穴がある。一度そこに落ちれば、容易にはい上がることができない構造が出来上がっている。出口の無い闇、恐ろしい罠と言ってよいだろう

目次:序章 消費者金融と格差社会/第1章 サラ金一人勝ち/第2章 悪魔的ビジネスモデル/第3章 多重債務者350万人時代/第4章 下流喰いの深淵/第5章 庶民金融の虚実/第6章 何が必要なのか

*基本的に、消費者金融(サラ金、闇金含む)とは、金融活動ではないと思う。お金を貸すのは、彼らにとっては口実であり、きっかけに過ぎない。本題は、そこから始まるのだ。捕まえた弱い獲物を如何にして逃げられないようにしながら搾取し続けるのかが最大の課題なのだ。つまり、消費者金融で金を借りるということは、離れてくれないダニのようなヤクザと関係を結び、挙句に金をむしり取られ続けるということなのだ

*アイフルが完璧に身に着けていた「サラ金三悪」=高金利/過剰融資/過剰な取り立て

*利息制限法の上限金利は年18%で、罰則規定がない。そのため消費者金融では、罰則のある出資法の上限金利、年29.2%で貸し付ける。これを「グレーゾーン金利帯」と言う年29.2%の恐ろしさは、どんなに頑張っても元金が減らず、増え続ける元金を最悪の場合、死ぬまで利息を払い続けても返し切れない<構造>だということだ

*2005年、2006年と続けて、最高裁が「グレーゾーン金利帯」を認めない判決を下したのは、決定的意味を持つ。これで、「過払い金返還訴訟」を起こされれば、消費者金融側は必ず負ける!、と実は安心していてはいけないのだ。多重債務者化した人々は結局、非合法なマチ金、ヤミ金に流れていくことになる。これは必然性を持った流れだ。そして、ヤミ金では想像を絶する法外な利息が待っている。

2003年の「八尾ヤミ金心中事件」では、68歳のB子さんは生活が苦しく、ヤミ金と3万円の融資契約を交わした。業者は半分を初回の利息として天引きし、残り分1万5千円を振り込んだ。結果的に夫婦は、わずか43日間で、出資法の上限金利(29.2%)の約270倍、13万5千円の利息を支払わされた。だが、それでも元金は減らない。催促の電話が夫婦のアルバイト先、長兄(81歳)の自宅などに1日中かかるようになった。略。夫婦は心中する直前まで、総額で200万円を返済していたとされる。

*多重債務者で逃げ回っている人は、初め、決して何百万も借りたわけではない。10万円の借金が、1年後に50万円になっているのだ。そして、借金の利息を返すために、また借金をして元金を増やし、また借金をして利息を返す。そして、親戚や知り合いすべてに見放されて返済能力が無くなった段階で「ヤミ金業者はためらうことなく業者間で客のキャッチボールや騙し合いを始める。要はババ抜きの論理だ」サラ金からマチ金へ、さらにヤミ金へと債券とともに売り飛ばされるのだ。はい上がることなんてできるわけがない。これは出口のない「悪魔的ビジネスモデル」なのだ。*この本の内容は、ある面で宮部みゆき「火車」よりもリアルで恐ろしかった

*ヤミ金の経営資源=タネ銭(もしくは金主)/携帯電話/銀行口座⇒「これを見ただけで、略、ヤミ金と「オレオレ詐欺」「架空請求詐欺」「振り込め詐欺」などが、なべてイコールの関係にあることが一目遼前」である。

消費者金融の毒はマスコミ全体にまわっている

※日本を代表するメーカーに勤める友達から、銀行で住宅ローンを3000万円借りたら、結局6000万円返すことになった、という話を聞いて、貧乏な俺はびっくり仰天したことがある。真偽のほどは、ともかくそれに近いことがあるのだろう。まともな銀行融資ですら、こうなのだからやはり消費者金融は恐ろしい。ましてやその先に、マチ金、ヤミ金が控えていることを思えば、それは「借金やめますか?、人間やめますか?」の世界だ。ましてや、「追い込み」をかけて、大切な家族・親族・友人・知人・職場のひとびと・隣近所のつきあい、すべてを人質にとられて、巻き込んで不幸になることを考えれば、この世には本物の悪魔が生息していると痛感する。消費者金融で金を借りるのは、取り返しのつかない地獄への片道切符なのだ。と言うより、たとえ銀行から借りるのであっても、借金というのは恐ろしいものだとつくづく思った

もう寝ます。
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