もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

7 101 池田清彦「真面目に生きると損をする」(角川新書:2016)感想4

2018年07月22日 22時56分09秒 | 一日一冊読書開始
7月22日(日):  

199ページ      所要時間3:20       ブックオフ108円

著者69歳(1947生まれ)。東京生まれ。生物学者。早稲田大学国際教養学部教授。構造主義生物学の立場から科学論・社会評論等の執筆も行う。出身校、東京教育大学(学部)、東京都立大学(大学院)。

養老孟司の著作に昆虫愛好家仲間としてよく登場する。互いに影響し合ってもいるようなので、ブックオフで昨日、本書を見つけて、即買った。読んでみると確かに、養老と近い考え方、スタンスの持ち主だった。アベとハシモトトオルを徹底的に批判する考え方には共感を覚えた。

近年、俺は世の中で当然のように使われる言葉の論理の立て方の前提に対して根本的疑問を感じている。例えば、「<国民>や<日本人>とは一体誰のことか」「<国益>とは、一体誰の利益か」「<愛国心>とは、一体誰のための精神か。そもそも<国家>とは、誰のために、何のために存在しているのか。5W1Hが知りたい!」「政治的<中立>とは、どうやって測るのか。<中立>の両端は誰が決めるのか」「<普通>とは、<正義>とは、そもそも誰が決めるのか」

他の動物に比べて弱い人類が生き残り、さらに繁栄できた条件は、できるだけ大きな群れを維持する<集団化>であった。そのため、他者との同調・共同を維持するためにミラー・ニューロンを発達させてきた。日本では、<世間>という極めて強い同調圧力を求める社会の中でミラー・ニューロンがフル回転している。

先述した根本的疑問を俺が他人に口にすれば、今の日本では「うるさい奴」「うっとうしい奴」として敬遠されるのが落ちである。国民をなめ切って、民主主義の弱点を最大限利用しているアベ・アソウ・創価学会の疑似独裁政権が高をくくって目指している思うつぼの社会になっている。

著者は、さまざまな通俗の論理の前提に対する根本的疑問を学者の立場から明確に「おかしい」と口にしてくれている。この点では、同根であっても養老さんより随分明確でわかりやすい。良く物が見えている人だと思う。

ただ歯に衣着せぬ、明け透けな物言いはアクが強くて上品な物言いとは言いがたい。読んでいて不快を覚えるところもあって感想3+にしようか、と思った時もあった。ただ、喫煙者に対する国家ぐるみのいじめ・差別などについては、元喫煙者である俺自身がふだんから感じていたことであり、そのほか多様性に対する配慮を強く求める一方で、違う存在同士が理解し合えない部分は尊重して残すべきだという考えなど、やはり《加減》《塩梅》を考えているところなど共感できるので、感想4にとどめた。

言ってることは正しいんだけど、この人もうちょっとものの言い方を変えれば、読みやすいんだけどなあ。まあ、それも含めてのひとりの人格ということか…。

【目次】1 ジタバタしない生き方・死に方 :人生に生きる意味などない/日本人の死について/祖父母はなぜ孫を可愛がるのか/老人になって考えること/医療費はなぜ増大するのか/がんになったらどうするか?
2 日本の教育と知性について :小保方さんの学位取り消し騒動に思う/大学研究費問題/先生の尻を叩けば叩くほど教育は疲弊する/反知性主義と国民の政治離れについて(1)/反知性主義と国民の政治離れについて(2)/「絶滅危惧語」について
3 国家と資本主義のワナ :「温暖化真理教」に席巻された日本国/ペテン国家・日本の環境行政/原発は人類史上最悪の道具/少子化とグローバル・キャピタリム/資本主義は生き延びるか? /コンピュータ化とベーシックインカム
4 マイノリティを叫び格差社会を生きる :民度が低くて民主主義が機能しない日本/同調圧力とミラーニューロン/異質な他者を認めよう/「地方創生」と高級官僚の地方移住/拡がる所得格差を是正しよう

【内容紹介】「正義」と「善意」はウソばかり!? どうせ死ぬから、言わせてもらおう。
正義と善意はウソばかり。屁理屈を信じるのは、もうやめよう!/長生きは良いことか。地球温暖化は本当か。働き者はナマケモノよりも偉いのか――病気と医療、教育や環境、格差社会ほか避けられない身近な諸問題を、独自のマイノリティ視点で一刀両断。いい加減くらいが、ちょうどいい!? もっともらしい「正論」や「常識」のウラに隠された世の偽善を見抜き、ジタバタせず楽しく生きる心構えを教える。
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