もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

5 029 池上彰・佐藤優「新・戦争論 僕らのインテリジェンスの磨き方」(文春新書:2014)感想特5

2015年11月15日 02時45分14秒 | 一日一冊読書開始
11月14日(土):  

255ページ     所要時間 6:35     ブックオフ260円

池上彰64歳(1950生まれ)。
佐藤優54歳(1960生まれ)。

池上彰にハズレ無しの池上さんと、立花隆の後を継ぐ知の巨人佐藤優、俺が今一番読みたい著者二人による対談本である。結論を先に言えば、無茶苦茶面白かった!、の一語に尽きる。一度読み終わってから、もう一度50分かけて眺め直した。高校レベルの歴史・地理・宗教・政治経済の知識が身についてない読者には多少難しく感じられるかもしれないが、それ以上のプラスαを求める読者には通常の読書では手に入らないハイレベルな知識・情報・視点が提示され、心が沸き立つような知的興奮を覚えさせてくれる本である。

読みながら何度も自分の知識の奥行きと間口がぐぐぐっと押し広げられるのを感じた。本当にハイレベルな内容をよく理解できてるからこそのわかりやすい分析・解説、そして今後の世界の見通し。現在の世界情勢を理解する上で大切な知識・情報・視点を存分に与えてくれるすごい本です。読み終わった時、確実に世界の見え方が大きく変わったのを覚えた。

読みながら、今日あったISによるフランス・パリでの同時テロのことを考えてしまい、「(本戦場から本国撹乱戦になるとは)こりゃ世界的な<応仁の乱>の始まりだな!」と連想してしまった。

ちなみに本書でも、佐藤優の歴史・地理・宗教・外交での知識量は半端でなく圧倒的な力量を見せつけてくれた。正直「この人はどれほどの知識を持ってるのか」と空恐ろしい気分にもなった。俺の印象では、佐藤6.5に池上3.5ぐらいの話量である。ただ、池上彰は、佐藤の放つ話題に食い下がり、粘り腰で受け止め、攻められるところでは十分に語り聞かせることでこの人もただ者でないことを感じさせてくれた。その意味では、他の対談本で佐藤優が一方的に対談相手を圧倒するのを読んできたのとは違う印象だった。池上さん、さすがである。

佐藤自身、池上に語ることで相当な満足を覚えたのではないかと思う。対談はやはりバランスが大事だ。

本書を読んでいて、俺はただの一カ所も違和感や不愉快を感じる部分がなかったことを言明しておきたい。二人の話には歴史修正主義やいじましい独善的ナショナリズムなどが一切無く、終始落ち着いたコモンセンス(常識)が貫かれていた。非常に上質な知的テキストである。

【目次】 はじめに  池上彰
序章 日本は世界とズレている :外からは奇妙に見える日本/有名無実の「集団的自衛権」/安倍総理の「心」を見よ/自民党も朝日新聞も信者/慰安婦問題の本質とは?
第1章 地球は危険に満ちている :クラウゼヴィッツ「戦争論」は古くない/イスラエルの無人機は“暗殺者”/「イスラム国」は四割が外国人兵士/殺しが下手なアメリカ―攻撃・暗殺・テロの有効性/民間会社が行なう新しい戦争/エボラ出血熱の背後に人口爆発あり
第2章 まず民族と宗教を勉強しよう :毛沢東の予言/「中華民族」は存在するのか/ダライ・ラマと五回会った/「宗教は毒だ」と毛沢東はダライ・ラマに囁いた/中国政府VSヴァチカン/クリスチャンだった金日成/フランスは完全世俗国家/今、世界は拝金教/「イスラム国」の正体は?/破綻国家とビル・ゲイツ/慰安婦問題はアメリカが深刻/「遠隔地ナショナリズム」が世界を覆う
第3章 歴史で読み解く欧州の闇 :エネルギーが世界を動かす/ウクライナの内部断絶/肉屋に人肉が吊るされていた/ナチスに協力したガリツィア/避暑地とソ連のセックス事情/ウクライナの意味は「田舎」/底辺労働力としてのウクライナ人/スコットランド独立騒動の真相/イギリスは「民族」にもとづかない国家/EUの首都ベルギーが危ない/ヨーロッパが再び火薬庫に
第4章 「イスラム国」で中東大混乱 :アラブの春の後の無惨/シリアのキーポイントは、アラウィ派/ムスリム同胞団を皆殺しにしたアサド父/オバマ大統領の失敗/「イスラム国」の横取り戦略/アメリカとイランの接近の理由は?/湾岸の黒幕、サウジアラビア/一夫多妻と「時間結婚」/スンニ派で一番過激な派は?/白人は皆、若くて強い!?/十二イマーム派とハルマゲドン/嘘つきシーア派/アサド政権を支持するイスラエル/モサド長官の交渉力
第5章 日本人が気づかない朝鮮問題 :アメリカは日朝交渉をつぶしたい/期待値上げオペレーション/北朝鮮のミサイルは、日本への求愛行動/金正日と金正恩の違い/張成沢はなぜ処刑されたか?/中国人に怒る平壌の人々/日本のカネが頼りの北朝鮮/「日本人問題の最終解決」の怖さ/「日本人大量帰還」は北朝鮮のカード/日本VS朝鮮、一対一の戦争はなかった/中・朝「歴史戦争」が始まる
第6章 中国から尖閣を守る方法 :中国の思惑通りに進む尖閣問題/中国の空母は怖くない/毛沢東化する習近平/ネットと世論は同じか?/トルコと回族がつながるウイグル問題/民族主義か、イスラム主義か?/中国にとって尖閣よりウイグルこそ重要
第7章 弱いオバマと分裂するアメリカ :教養が邪魔するオバマ/「白人」だけの民主主義/アメリカの宗教事情/大統領候補はヒラリー?
第8章 池上・佐藤流情報術5カ条 :息が詰まる日本のネット空間/軽軍備ならインテリジェンスを/公開情報だけで世界はわかる/情報は「信頼できる人」から/重要記事は即、破る/情報は母国語でとれ/スケジュールからメモまで「一冊の大学ノート」で
終章 なぜ戦争論が必要か :新帝国主義と過去の栄光/嫌な時代
おわりに  佐藤優
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