もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

7 046 司馬遼太郎「燃えよ剣 上巻」(新潮文庫:1964)感想4

2018年04月14日 23時03分38秒 | 一日一冊読書開始
4月14日(土):  

457ページ     所要時間2:10     蔵書(1990年の43刷)

著者41歳(1923~1996:72歳)

ふとその気になった。理由は明白で、3月4日(日)放送の菜の花忌シンポジウム「司馬遼太郎が描いた゛新選組”」(NHK)の録画を最近見直したためだ。その中で、4人のパネリストの一人である磯田道史さんが、この対談の直前「本屋に寄って急いで読みました。やっぱり土方歳三って格好いいですよね」と言ってるのが頭の隅に残っていてモチベーションになったようだ。

「そんな直前に急いで読めるものなのか!?(例えば「翔ぶが如く」であれば、文体的にも、内容的にもまず無理だ!)。それじゃあ、試してみるか。」とふと思い立ったのだ。さすがに、450ページ超の上巻を普通に読むのは集中力がもたない。幕末の展開は頭に入っているのだから1ページ15秒の眺め読みをやってみた。体調に大きく左右される読み方だが、今日は体調的に集中が持続してうまくいった。

体調以外の理由として、一つは会話部分が多かったことがある。司馬さんの全盛期の作品は、「覇王の家」「翔ぶが如く」「空海の風景」など時代の状況解説が大部分を占め、会話が極端に削られて、主人公たちが何か遠景のように描かれるものが増えてくる。これらは、1ページ15秒読みは、まず無理で、真正面からがっぷりよつに組まないと歯が立たないのだ。もう一つは、浅田次郎「壬生義士伝」をはじめ、新選組の小説、ドラマで゛見せ場”のポイントは頭に入っているので、会話部分をどんどん端折っていっても迷子になることが全くなく、「ああ、司馬さんはここをこういう風に書いてるのか」とある意味で、ポイントごとに確認する感じになったことである。

あと、司馬さんの小説は女性の描き方が今ひとつで、女性との色恋が出てくると何となく興ざめすることが多いのだが、本作での女性の描き方は、俺には自然でよかった気がする。

ということで、本作品は、多摩の百姓出身で、近藤勇とともに天然理心流という田舎剣法の試衛館をもとに武士を目指して、幕末の風雲に身を投げ入れた土方歳三が主人公である。新選組は創設者の清河八郎が去り、新見錦、芹沢鴨、山南敬助らを次々粛正する中で、土方は局長の近藤勇を支える副長という地位を最大限に生かして、局中法度を定め、徹底する中で新選組を強靭な組織に作り上げることに情熱を燃やす。土方にとっては、強靭な組織を作ることそのものが最大の目的であり、思想などはどうでもよかった。一方で、近藤は幕末の政局で名士として扱われ、いっぱしの政治的意見を求められることに喜び、気をとられていく。

土方は、蛤御門の変後、名士気取りの近藤が佐幕の新選組の中で、長州の攘夷派と関係を深めていく伊東甲子太郎によいように流されそうになるのに対して苦々しく思い、伊東一派の壊滅を目指す。幕末の風雲まさに最高潮のところで、上巻は終わる。

新選組は、斎藤一、原田左之助、沖田総司、長倉新八、藤堂平助、吉村貫一郎など名前を見るだけで、何か別のストーリーが頭に浮かぶ。たとえとして適当かは分からないが、水滸伝の梁山泊に結集する豪傑たちと少しイメージが重なる気がする。

感想4は、ひとえに時間が短すぎることであらすじを追うので精一杯だったからである。もっとゆっくり味わえば、もちろん感想5になるはずである。
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