もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

0053 杉山登志郎「発達障害の子どもたち」(講談社現代新書;2007) 感想5

2013年04月07日 02時41分10秒 | 一日一冊読書開始
4月6日(土):

238ページ  所要時間3:30      ブックオフ105円

著者56歳(1951生まれ)。精神科医。「アスペ・エルデの会」(軽度発達障害の会)創設者の一人。2007年は、特別支援教育の完全実施元年である。 

※「特別支援教育とは通常教育で行う特殊教育のことと考えるべきである」212ページ

本書を読むのは、2度目である。前回は図書館の本だったが、その後ブックオフで105円で購入してあった。

今回の読書は、体調不良と読書開始時間の夜遅さで、失敗読書だった。しかし、立花隆が、「読むのをやめたくなっても、とりあえず最後までページだけはめくり続けろ。意外な収穫があるものだ。」と書いているのを思い出して、何とかページをめくり、線を引き、ページの耳を折って最後まで行けた。最後まで読めて良かったと思える。

知識の定着という点では難があったが、展開されている話は、医療現場、医療政策、発達障害の子どもたちと保護者、学校現場に対して、実践に裏打ちされた地に足のついた論が展開されている。それが巷間流布されている思いこみ・俗説の間違いを指摘し、正しいあるべき理解に無理なく導いてくれている。恐らく本書は、「発達障害の子どもたち」に関する正しい理解と認知を広げる最もスタンダードなテキストになるべき良書だと推奨できる。

著者は、発達障害の児童・生徒の置かれている通常学級や特別支援クラス、特別支援学校の事情に非常によく通じている。そして、思い込みや俗説に対して明確な指針を出してくれる。選択の基準は、あくまでも「障害を持つ子供自身にとってプラスなのか、マイナスなのか」に尽きる。そしてその答えは、その時点の目先のニーズではなく、子どもたちが成人後にどういう結果になるかから逆算して今の選択を考えるべきだと説く。

一般に小児科医は通常学級が好きであるが、これは成人になるまで子どもたちをフォローアップしていないからであると思う。これまで述べてきたように、成人に達した状態から逆に、今、何が必要かを考えたとき、通常学級に固執することは意味をなさない201ページ

※一世を風靡したスウェーデンなどのインテグラル教育(統合教育)も、古い考え方になってしまった感がある、ように感じたが…、その理解でよいのか。本書が、発達障害者に対する<排除の論理>につながるのは、著者の本意ではない、と思う。統合教育との整合性を整理して欲しい

【目次】*コピペです。
第1章──発達障害は治るのか
第2章──「生まれつき」か「環境」か
第3章──精神遅滞と境界知能
第4章──自閉症という文化
第5章──アスペルガー問題
第6章──ADHDと学習障害
第7章──子ども虐待という発達障害
第8章──発達障害の早期療育
第9章──どのクラスで学ぶか―特別支援教育を考える
第10章─薬は必要か
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