もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

10031~063 コウノドリ全32巻

2021年08月24日 22時23分39秒 | 一日一冊読書開始
7月       

1冊平均 ページ     所要時間平均2:00      ヤフオク4月19日(月)4251円(2900+送料1351)で落札。一通り読んだ後、寝床で数冊ずつ再読をしている。

ドラマ第1シリーズ,第2シリーズを録画して何度も繰り返して観て涙した。面白い(興味深い)ドラマだった。その後,この原作を読んだ。全32巻を読み通して,やっぱり原作がすごかったのだと確認できた。ドラマは,多少のアレンジを加えているが,セリフも気のきいたやり取りなどもほぼ全てが原作の中の言葉や設定である。「このドラマの面白さは,原作に基づいている」ことが確認できた。脚本家は,原作の味わいをできるだけ忠実に再現,生かしているに過ぎない。大都市の総合病院の周産期医療センター産科の医師・助産師を中心にNICUの医師・看護師,さらに救命救急の医師たちを妊婦,夫,親族,ベビー(赤ちゃん)たちを考える。本来,産科医療は,人生の一時期の一瞬しか縁のない狭い世界にすぎないと思っていたが,そこで繰り広げられる世界は驚くほど広く奥行きが深かった。お産はただ単に赤ん坊が生まれる場所なのではなく,社会の縮図ともいうべき様々な悩み苦しみ喜びに満ちた世界である。医師は何でも屋ではなく,専門性が極めて高く,専門を跨いで医療行為をすることも,専門を越えた患者のその後をイメージすることもなかなか難しい。例えば,産科,NICUの医師は,早期胎盤剥離などで非常に未熟な状態で生まれた子どもであっても全力で命を援けにいく。ひと昔であれば救えなかった多くの赤ん坊の命が,今は救われることになってきたが,それは同時に後遺症で生涯,看護措置を必要とする障害を背負うことにもつながっている。その看護の負担は多くの場合,母親に被せられ,母親の疲弊,家族生活・人生の犠牲にもつながる。「命さへ救えればよい」という言葉ではなかなか解決とはいかない問題がある。妊産婦と夫婦,家族の様々な問題。産後ウツ。命の選択。災害時救命救急医療。僻地医療。出生前診断と染色体異常の中絶。医療裁判。LGBTのお産。特別養子縁組。単なる産科とNICUの活躍を描いた漫画でとどまらず,予想外に幅広く医療の世界が描き出され,さらにそこから社会全体を見渡していく。
 一方で,著者の笑いのセンスは秀逸であり,笑いの背景に人間的な優しさがあるので安心して笑うことができる。少し涙しながら笑ってしまう時もあった。著者の社会を観るまなざしは切れ味鋭く,物語り作りの才能は達者である。終始一貫して「中身のある面白さ」を提供してくれる。最後の第32巻まで余力を残して緩むことなく駆け抜けた感じである。始めから終りまであんこの詰まったたい焼きのような作品であった。
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