もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

64冊目 井上ひさし著「吉里吉里人(上)」(新潮文庫;1985)  評価5

2011年11月06日 02時33分27秒 | 一日一冊読書開始
11月5日(土):

501ページ  所要時間4:30

かつて『4千万歩の男』を読んで博覧強記さに驚かされた時から、井上ひさしを<文豪>だと思ってきたが、今回もその思いを強くした。死蔵していた『吉里吉里人(全3巻)』をこの機会に少しでも攻略できれば、と思って挑んでみた。ただ正攻法で言葉の洪水の中を掻い潜るのは、はじめから諦めて、1ページに30秒という戒を決めて何とか眺め読みで、上巻の終わりまでたどり着いた。

突如として現れた東北の独立国『吉里吉里国」、どうしてこんなにと思うほど言葉が溢れかえっている。ことに、全巻にわたって施された吉里吉里語のルビは、いつでも気が向いたときに東北弁を味わえる楽しみと奥行きを作品に与えている。

著者には、戯作者としてのプライドを強く感じる。言葉遊び・駄洒落・エロ・下ネタに乗せられ、げたげた笑いを止められないでいるうちに、いつの間にか傾聴すべき世界観(東北愛・憲法・平和・天皇制・農業)へと引き上げられている。そしてまた、腹を抱えて笑ってるうちに…、繰り返される上下の振幅・落差が大きくて目をくるくるさせている気分になった。そのうちに「吉里吉里国は、泣くのは嫌だ、笑っちゃお!の“ひょっこりひょうたん島(の発展型)”なんだな」とふと思えた。

吉里吉里(村)はアイヌ語の『砂浜』の意味の実在の地名で、現在は合併により岩手県大槌町の中に位置する。吉里吉里国立中学校付属大学による吉里吉里語の国語・文法・翻訳事業には面白さと興味深さに圧倒され、立ち止まって熟読玩味したい誘惑に何度も襲われた。

後半途中、話が横道にそれ過ぎて、よく分からなくなりかけたが、それも作品のスケールの大きさを表しているのだろう。さて、中巻・下巻は読めるかな…。自信はない。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« アーカイブ 福沢諭吉著「福... | トップ | 65冊目 永井路子「乱紋(上... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

一日一冊読書開始」カテゴリの最新記事