足立 真一のTriton Blog

株式投資の実践、グローバルな視点での投資戦略。
銘柄選択は、成長株、中・小型株、新興市場株にバイアスを置く。

個人投資家のセンチメント好転

2008-01-25 17:50:30 | 株式

新興市場は個人投資家のセンチメントの指標的な存在である。

なかでもマザーズ指数の動きがそれを端的に物語る。

マザーズ指数は20061月に2799.06でピークを打った。ライブドア事件の時である。そして昨年918日に620.42で第1番目の底入れになった。その間の下げ率は‐77.9%であった。

本欄では当時の下落率がITバブル反動時のナスダック指数の下落率‐78%に達したので「底入れ」とみた。別にこの数字には科学的な根拠はないが、このような下落率は相場のバブルのはじける場合のひとつの経験測でないか?

東京市場での資産バブル相場の下げは1989年~2003年が‐80.5%であった。後世の経済史家は、20世紀が生んだ典型的な相場のバブルのひとつとして、今後、さまざまな研究のテーマに取り上げていくだろう。

さてマザーズ指数は昨年9月の底に続いて、122日に608.17まで下げ‐78.3%となった。典型的な2番底いれである。東京市場だけではなく、ウォール街の投資家のセンチメントも極度に悪化した。先行き景気に問題があるにしても、明らかに下への行き過ぎである。

再び新興市場の銘柄には高値から31以上の下落を記録する銘柄が出てきた。

大底が入ったとみるが、問題はどの銘柄に投資するか?

ひとつのスクリーニングの方法として指数は新安値になったが、株価は9月安値より上にある銘柄に注目したい。株価は目先の業績の好調を物語っているとみるからである。


VIX指数・任天堂の決算をみる

2008-01-24 18:00:19 | 株式

昨日のウォール街ではVIX(恐怖)指数が37.57と4月のチャイナ・ショック時を上回った。引値は31.01。4月の時はその後の上昇相場のきっかけになった。今回もウォール街のセンチメントの弱さを示すが、逆張りの発想からは底値を暗示した。

さて任天堂(7974)が第3四半期の決算を発表した。注目点は3つ。まず第3四半期(200710~12月)の売上は3ヵ月で6216億円、営業利益2052億円であった。同社の場合は為替の変動によって経常利益に影響が出るので営業利益でその実態を把握すべきである。業績は昨年前半6ヵ月分を3ヵ月で実現した。

営業利益率は第3四半期だけでみると33%と、中間決算の27%から大きく上昇した。DSWiiが予想以上の増加になり、ハードの規模の利益が出た。ソニーとは対象的である。限界利益率はソフトよりも、ハードのほうが大きい。これからその趨勢がより強く出てくるだろう。

2点は配当を期末に1株当り1050円出すことだ。為替が現在の水準なら、さらに引き上げられる。日本企業ではもちろん新記録である。

3点目は円高の影響で前年同期に比べて259億円の為替差損が出た。これは帳簿上のことでキャシュフローのベースでは関係はない。

われわれの視点は20093月期にある。9ヵ月でソフトはDS17900万本、Wii11500万本になった。合計29400万本で、中間期に岩田社長が「いずれソフト販売3億本を実現する夢を実現したい」と語ったのが、今期中に実現する。

20083月期はもちろん増額修正があるだろう。昨年度に販売したWiiのソフトの「Wiiスポーツ」と「はじめてのWii」が依然として売れているとうのは、大きな注目点だ。ゲーム業界の常識を覆した。

3点目には為替予想を1ドル=110円、1ユーロ=155円に修正した。この変動を問題にして株価の価値を評価するのは間違いである。

アナリストの間での見方が分かれてきた。あす夕方、社長による説明会が開催される。


だれも相場を正確に読めない・・・ピーター・リンチ

2008-01-23 16:37:54 | 株式

現在のように相場の先行きが読みづらくなったとき、いつも棚から保存しているスクラップを引き出して読み返す一文がある。

2000920日のウォールストリート・ジャーナル紙の1面をつぶして掲載されたピーター・リンチのマーケット・コメントである。20世紀が生んだ伝説的なファンドマネジャーで、世界最大のマジェラン・ファンドを育てた。

その一部の箇所を抜書きしよう。

「目先の相場の行方は?」という見出しで始まる。

30年間運用の仕事に携わり数多くの困難な局面に遭遇してきた。1987年のクラッシュ(1日でダウ平均が23%も暴落)、5回のリセッションーそれでも答えは出せないし、いままで言い当てたことはない。だれにも次の1000ドルの相場の変動を的確に予想はできない。相場には波乱がある。愉快なことではないが、通常にみられる現象だ。しかし大切なのは、なぜわれわれが株式投資をするかということを考えることである”

“だれも1,000ドルから2,000ドルの足取りを確実に予想はできないが、10,000ドル、20,000ドル、40,000ドルになることを、私は固く信じている”

“米国の問題解決の能力、勤勉、イノベーションを信じるなら、長期的な視点で、われわれの経済システムに自信を持とうではないか”と結んでいる。

同時テロ事件後、NYダウは8,200ドルまで下落した。200710月には14,066ドルになった。


テクニカルにも「陰の極」

2008-01-22 21:28:12 | 株式

新興市場を除いて日米欧など先進国の株価はバリュエーションからみてリターンの期待できる水準になってきた。

PER(株価収益率)は日米が13倍、ヨーロッパは10倍弱である。それにもかかわらずなぜ世界の投資家は株式投資にそっぽを向くのか?

ヨーロッパのヘッジファンドとこの問題について話をする機会があった。

PERE(利益)に問題がある」という。ウォール街ではコンセンサスの利益予想についてアナリストとマクロのエコノミストの間では10%以上の開きがある。このためにPERそのものをベースに投資評価をするのに2の足を踏む。予想数字はいつ覆ってプラスがマイナスになるかもしれない。

いまひとつは金融市場が技術革新とグローバル化のために複雑化し、これまでの「相場分析の常識が通用しなくなった」こと。政策当局の行動には、昨年10月までは市場も信頼感を置いていたが、11月以降は中央銀行に対しての信頼感がゆらぎ、最近では「政策の出遅れ」を指摘する向きが増えてきた。当然、世界でももっとも優れた頭脳集団であるヘッジファンドの運用者たちは、市場と中央銀行の判断のずれを利用する。結果論からするとヘッジファンドに問題があるのではなく、政策当局の判断のミスにある。

この点は政策当局も充分に承知のはずだ。手遅れてしまえばゼロ金利でも景気が反転しないという日本の例を熟知している。

ヘッジファンドの見方は、このように明快であった。

本日の株価の暴落で、東京市場のテクニカル指標は20019月の同時テロ事件時よりも、好転した。市場の合理性とテクニカル要因の勝負になってきた。


株価の動向のカギはバーナンキ議長に

2008-01-21 19:11:54 | 株式

マザーズ指数が先週は620.40ポイントと、昨年9月18日の920.42ポイントをわずかながら下回り2番底をつけた。

2006年1月16日の史上最高値の2799.06ポイントから-77%の下落で、ITバブル崩壊の-78%とほぼ同じ水準である。一時は10月29日の965.17ポイントまで+55%も急反発したので、大底いれと読んだが、第1部市場の下落に影響されれて再び新安値に顔合わせした。新興市場の戻り相場で個人投資家のセンチメントの回復を期待したが、NY株の先行き不安に押されて2番底形成のパターンにはいった。

かねて本欄で指摘してきたように、最近の東京市場は前日のNY株の動きに影響されるというよりも、翌日のNY株がどうなるかを先読みする習性が定着した。

東京市場というよりも世界株式市場というNY株があって、それに付随する形で日本株、アジア市場が位置づけられれるようになってきた。グローバル・マネーが世界の市場を動かせるだけに、その傾向はますます強くなる。

日本国内では個人投資家の力がなくなり、主体性のある投資家が不在になってしまったからである。

ウォール街で先週のブッシュ大統領の景気対策に株価が反応しなかっただけに、市場の期待と批判のホコ先はバーナンキ議長に向いてきた。

利下げ幅は0.75~1.00%と、臨時のFOMCの開催を催促する。当然、公定歩合の4.75%も4.00%の水準にまで引き下げられるだろう。銀行が中央銀行から資金を借りるときの金利である。

いまウォール街で話題になっている本に過去105年間にわたっての調査では、株価のバリュエーションが低く(PER15倍)、金融緩和という2点が組み合わされた時には、株価は年30%以上昇したというデータがある。

株価を景気対策としてバーナンキ議長が利用するかどうか、NY株をはじめ世界の株式は正念場を迎えている。