債券運用の最高の権威者であるビル・グロス(ピムコの経営者)が、混乱する債券市場で積極的な行動をとりはじめた。
サブプライム問題が発生し、連銀がFFレート5.25%の引き下げを決めた9月、「今回の利下げではFFレートは3%まで下がる」と、だれよりも早く大幅な金利の低下を予想した。
当時、その話を聞いたとき、「そこまでは無理だろう」という印象をもったが、現在では3%説が現実的になってきた(現在は4.25%)。ウォール街の投資銀行のなかには2%台のFFレートを予想するところも出てきた。
ビル・グロスは評論家やエコノミストではない。実践家であり、言行一致の人だ。
昨日のウォ-ル街で流れたニュースによると、最近は現金の比率を落とし、債券運用の比率を2003年9月以来の高水準にした。特に投資格付けの高い住宅抵当証券の比率を高めた。現在の利回りは10年国債の利回り(3.88%)より2.17%も高い。この種の30年債には政府の抵当証券機関の保証がついている。インフレ率が3%としても充分に利益の出る水準である。運用資産1100億ドル(12兆円)の債券ファンドを自ら運用するだけに、その行動には注目したい。
そういえばビル・グロスだけではない。世界的な富豪であるウォーレン・バフェットも、自ら経営するバークシャー・ハザウェイで、金融関連株に積極に投資を始めた。
グローバル化が進んだ東京市場であるが、残念ながらこの種の投資家は日本では皆無である。天才的な投資家は「今日のこと」ではなく、「数年単位」で運用を考える。
時には視点を変えて、この2人の行動の意味を考えたい。
昨日のワシントンでの講演でバーナンキ議長は「政策は後手に回った」ことを認めたという。2人の天才には注目しているはずだ。