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20年ほど前から、いつか読んでやろうと思っていたのだが、
やっと読むことが出来た。
タイトルのイメージや、よく目にしていたのは国書刊行会の全集(選集?)版だったせいか(装丁がおどろおどろしい印象)、埴谷雄高のような観念的な小説だとばかり思っていた。
タダでさえ反ユダヤ主義者だの対独協力者だのときな臭い評判も聞こえるし。
しかし、実際に読んでみると、そこには、正の方向にも負の方向にも過剰なまでに広がりうずまくエネルギーの固まりのような小説だった。理想を語るときはとことん、猥雑な時はこれまたずぶずぶに、罵倒するときは徹底的に、落ちるときは奈落の底まで、上下左右前後に極度の振れ幅をもった驚異的な小説だった。
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フランスの悪名高い?作家セリーヌが1936年に発表した小説。
いや~まいった。毒気に当てられるというヒマすら与えられない。枠組みの腐りかけたジェットコースターをがたがたのトロッコにしがみついて猛スピードで走り抜けたような気分だ。。
筋としては、20世紀初頭、パリの貧しい路地に生まれた少年フェルディナンが、労苦に苛まれた両親のもとで物心つき、なんとか成長する間におこる、様々な社会とのあつれきが中心。
子供時代の両親の不当(と思える)抑圧の思い出。
夏のさなか困難な職探しに歩く情けなさ。
やっとありついた職でも雇用主は横暴で同僚は狡猾。
悪事にはめられても弁解することすら出来ず、地域社会のはみ出しもの扱い。
見かねてイギリスの寄宿学校にやられるが、異文化への不信と持ち前の意固地さでいっさい英語も覚えずに帰還する。
伯父さんの計らいで怪しげな発明家にところに転がり込むも、これまた怪しげな雑誌販売やサギまがいの発明コンペの片棒を担ぐことになり、暴動まで引き起こしてしまう。
発明家夫婦とともに農村に逃げ隠れるが、そこで農作物の成長を促進するという装置で壮大な農業革命を描くも、もちろん失敗。食べるものもなく着るものもなく、クツすらない状態で、悲惨な結末を迎える。
そんなようなことが延々区切りもあいまいな文体でがんがんまくしたてられる。
この怒濤のパワーはいったいなんなんだろう??
たぶんセリーヌさんは怒っているのではないだろか。
それも道義的怒りとかいうんでなくて、もう理屈をこえて、
この時代の生ってやつはいったいなんなんだ?!
ろくでもないじゃないか!?どうしてくれるんだ?!
という、もう頭に血が上っちゃった状態なんだと思う。
1910年代から20年代の物語だから
時代も相当にきな臭いわけで、あの時代、そうした怒りが反ユダヤ的思想につながったって全然不思議ではないだろうし、書かれている内容から受ける印象は、とにかく特定のイデオロギーにおさまるものではない。現状における人間の扱われ方、労働と資本、貧困と絶望、そうしたものに対する憤懣やるかたなしという思いを、かなり詳細なディテールをもった物語として結実させたものという印象だ。
これに対して、後の反ユダヤ等のセンセーショナルな側面をもって否定してしまうのは、やはり別の次元のことだと思えてならない。
イデオロギーの混迷を含めて世界を丸ごと活写してしまった小説を前に、そのスケールのでかさにひたすら驚きを持つ意外無いのだ。
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しかし、ここで描かれているパリや郊外の人々の様子。そのバイタリティ/人情/いやらしさ/利己主義/貧富格差/etc..
これがパリの民衆なのか?
フランス革命のおどろおどろしさも、また今日もれ伺うパリジャン社会の冷酷なまでの個人主義も、なにやらこれで納得がいくと言うものだ。
いや~フランスおそるべし。。
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性描写のところとかは結構出版時に手直ししたらしいが、100部くらいの限定版は修正前のもので発行されたらしい。
もちろんこの翻訳は手直し後のものが底本になっている。

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これ、私もここ5、6年ずっと「そのうち読みたい…」と思っているのですが、やっぱり面白そうですね~!
読みた~い!
1936年発表という時代がまた興味津々です(^^)
私も怒濤の物語に呑み込まれたい!!
魂の浄化なんてない!っていったんですか
セリーヌすごいなあ
まさにそういう小説ですよ
時代の暗部に浸かっちゃってますね
☆ntmymさま☆
面白いを通り越してますよこの小説は。
読みやすく意外とフェルディナン少年も健気なところがあるにも関わらず、どこか禍々しくて、読んではいけないものを読んだような気にさせられます。
次は「夜の果てへの旅」を読みます。