Credo, quia absurdum.

旧「Mani_Mani」。ちょっと改名気分でしたので。主に映画、音楽、本について。ときどき日記。

「西遊妖猿伝 大唐編」諸星大二郎

2009-04-05 04:44:54 | book
西遊妖猿伝 大唐篇 1 (1) (モーニングKCDX)
諸星 大二郎
講談社

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西遊妖猿伝 大唐篇 2 (2) (モーニングKCDX)
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西遊妖猿伝 大唐篇 3 (3) (モーニングKCDX)
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西遊妖猿伝 大唐篇 4 (4) (モーニングKCDX)
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西遊妖猿伝 大唐篇 5 (5) (モーニングKCDX)
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西遊妖猿伝 大唐篇 6 (6) (モーニングKCDX)
諸星 大二郎
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西遊妖猿伝 大唐編

新装版が出たのを機に購入。

で、すごい面白いんですけど!これを今まで読まなかったのは失敗だった~(どんな失敗だ?)
以前「巨人伝」について書いたときに、諸星氏の作風を「洗練を拒否した円熟」と評したけれど、ちょっと撤回。明らかに諸星氏の筆力は向上しており、表情豊かな人物、ダイナミックな活劇、スリリングなコマ運び、すっとぼけたユーモアなどなど、以前からの持ち味をさらにグレードアップしていて、いまやヘタウマをやや超えている。第4回手塚治虫文化賞マンガ大賞受賞だけのことはあるね~

大唐編、西域編、天竺編の3部構成の構想のようだけど、大唐編だけで83年~97年にかけて各誌に連載、その後ようやく08年から西域編の連載が開始されたというから、これは完結までにいったいどれだけかかるのだろう・・是非生きているうちに最後まで読みたいものだが。。というか諸星さんももういい歳だし、完結するのか??

*****

西遊記の物語に着想を得つつ、隋から唐への政変など中国の史実を織り交ぜ、西遊記とはまったく別の物語となっている。この妄想力は『孔子暗黒伝』などでも発揮される諸星得意の世界だけれど、まったくすごいもんである。日々こんな物語を妄想しているのかと思うと、また不思議な人生だよね~

隋の圧政下に、野人と人間の間の子として生まれた孫悟空は、虐げられた民衆の怨念をパワーにする巨大妖怪無支奇と出会い、民衆の怨みのために世の秩序を乱し戦う運命にあることを告げられる。無支奇から「斉天大聖」の称号を与えられた孫悟空は唐による群雄征伐に巻き込まれ、唐の将を仇と都で大暴れをするなど、各地で騒乱を引き起こす。普段は悪しきを挫く正義感だが、追い込まれたりすると斉天大聖のアナーキーな本性に支配され、人間離れした力で見境なく殺人・破壊をくりかえす。
孫悟空自身は斉天大聖としての定めを拒絶し自由を求めている。その気持ちに呼応するように、純真な気持ちで法の真理を探るため天竺へ向かう僧玄奘と度々出会い、天竺への旅に同行するようになる。

というのが大まかな筋なのだが、これに付随する逸話が面白い。唐の都の地下に広がる隋煬帝が残した地下宮殿にひそむ私生児が自分を真の皇帝と信じている話とか、その地下宮殿の壊滅、唐の政変である古事「玄武門の変」に悟空たちをからませて李世民の宮殿をめちゃくちゃに破壊するところとかが最初のクライマックスかもしれない。

それから、人が面白いようにばたばたと死んでゆく。昔の中国(に限らず)では人の命が今よりはるかに軽かったということもまた事実で、そういうところもなんかどこか超越的な雰囲気に一役買う。


毎晩寝る前に読むことにしているが、うっかりすると夜更かししてしまうので、眠剤を飲んで強制就眠するようにしている。そうするとあまり読み進まないので、長く楽しめるというわけさ。


講談社の新装版は全10巻の予定。



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