Credo, quia absurdum.

旧「Mani_Mani」。ちょっと改名気分でしたので。主に映画、音楽、本について。ときどき日記。

「アリゾナ・ドリーム」エミール・クストリッツァ2回目

2016-02-28 23:53:24 | cinema
アリゾナ・ドリーム [Blu-ray]
クリエーター情報なし
ジェネオン・ユニバーサル


アリゾナ・ドリームArizona Dream
1992フランス/アメリカ
監督:エミール・クストリッツァ
脚本:デヴィッド・アトキンス、エミール・クストリッツァ
音楽:ゴラン・ブレゴヴィッチ
出演:ジョニー・デップ、ジェリー・ルイス、フェイ・ダナウェイ、リリ・テイラー、ヴィンセント・ギャロ

前回は面白く観たがやはりクストリッツァの本流ではないと思い
とくにこだわりを持っていない作品でありましたが、
今回マーメイドフィルムさん他による特集上映という機会に、
一度しか観ていなかったこいつをもう一度見てやろうと思い立ちました。

再観してこれは実に愛すべきフィルムだと思いました。
クストリッツァ的なモチーフとパッションはしっかり持っていて
舞台をアメリカに置いた、魔術的リアリズムによる青年成長譚
+失われるものへの哀歌でありました。

脚本にクレジットされているデヴィッド・アトキンスさんはどんな人なのか
あまりはっきりわからないのだけれど、
根拠のない推測としては多くの部分の原案を持ってきたのではないかしら
それにクストリッツァが反応してかなり肉付けをしたのではないかしら。
結果とても独特なアメリカが描かれることになる。
その化学反応に驚く。



冒頭からかなり意表を突かれ、
我々はあの冒頭の世界が何を意味するのかをずっと考えながら観つづけることになるわけだけど、
そこはそれでまあそのうち考えるとして(笑)、
ここで特筆しちゃうのは、「動物使いクストリッツァ」が
冒頭から強力に炸裂するところです。

あの犬たちはもう人間の言葉を解しているのでありましょう。
あるいはクストリッツァもしくは撮影スタッフの誰かが
犬語を操れるに違いありません。

犬たちの奇跡の名演技のうち、特に吹雪に吹かれながら
どこか平常心をもったまなざしでのアップを披露する白犬くん、
彼は終盤であろうことか人間の俳優によるそのショットの模倣が行われるほどの
雄弁な表情です。

もう必見です。

その後動物使いクストリッツァはやはり犬やら豚やらを多用して
見事な画面アクセントを刻み込むばかりか、
爬虫類である亀すらも意のままに操り絶大な効果を上げます。

というかあのテーブルの亀くんは
エンドロールでクレジットしてほしいくらいのコメディアンです。

エンドロールでは動物の扱いについて出ていましたが、
残念ながら目で追いきれませんでした。
おそらくは虐待には当たりません的なことがかいてあるのかな

****

動物で興奮してしまったが、、
もうひとつ。

空中浮遊はクストリッツァ的なモチーフだが、ここではガンガン飛ぶ。
『ジプシーのとき』ではどちらかというとタルコフスキーぽいつつましい浮遊でありましたが、
ここではああいうたしなみはなくガンガン飛ぶ。
『北北西に進路をとれ』を引用するのは実に正しい。それも2度にわたり。

ジョニデのアクセルくんは潜在的にモノを浮かせる力を持っているのだと考える。
すると『ジプシーのとき』との繋がりが表れる、かもしれない。
両者とも青年が代償を払って大人になる物語であるからだ。

彼らは愛する女性を宙に浮かせる力を持っていると考える。それは自覚されていないと思うけど。
アリゾナ・ドリームでは後半はもうそのことしか関心がない。
アクセルはエレインの飛ぶ願望の実現に昼夜を忘れて取り組み、成功させる。
それは愛の成就であるとともに、
もう一つの愛の終焉でもある。
あの夜に慎ましく椅子に座ったまま浮遊したグレースの姿を思い出す。
その幸福そうな笑顔と、その浮遊の意味を知っているはずの彼女の心の内を。

切ないねえ。

******

ジェリールイス演じるおじさんもなかなかに味わい深い。
彼は過去を体現する。
過去は甘く懐かしい。
彼はアメリカンドリームという大きな過去も
ホームムービーという小さな過去も体現する。
失われたもの。
彼との惜別もアクセルの成長の代償だ。

ヴィンセント・ギャロも素晴らしいよね
彼が劇中でも映画フリークだということが素晴らしい。
北北西に進路を取れ、レイジングブル、ゴッドファーザー。。。

そんでもってリリ・テイラーいいよねえ^^
前半はそうでもないけど
後半どんどん魅力的になっていく


というとりとめのない書き散らしでスンマセン。。。


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