なんだかんだと読む時間がなかったけれど、やっと読み終えた。
期待の俊英テッド・チャンの短編集で、いまのところ唯一の出版物。
今のSFの最先端に触れた思い。どの作品も密度がとても濃い。
着いていくのがやっとな博識と見識は頭が下がる。
やっぱり表題作の「あなたの人生の物語」が好きだな。
認識とか記憶とか時間の概念とかの根本に触れながら、
エイリアンとの接触を通じて人生がどう見えるようになったかを、
泣けるツボを攻めつつ描く。
「理解」は表題作にちょっと似たところがある。
世界を認識/表現するのに、多元的・ホログラフィックな概念を
持ってくるあたりが似てる。
あとは「地獄とか神の不在なり」も面白かったなあ。
天使の降臨がぽこぽこ発生するという設定もおもしろいけれど、
神への愛の真実を知ったとたんに神の不在を痛いほどに知る、という
最後のプロットがなんだかかっこいい。
他の作品も水準が高い。
物語としてのドラマ性という観点では、ちょっと薄いのかもしれないけれど、
着想を掘り下げて物語につなげるところだけで十分に面白い。
これだけのものを書くと、次作は結構プレッシャーなんじゃなかろうか。
これでさらにトータルなドラマ性が高まれば恐ろしいことになるな。
長編に期待しよう。(というプレッシャーがかかってるだろうなーw)
しかし面白かった。大絶賛。
次はティプトリーを読みます!
チャンさんは作品や覚え書きを見るとけっこう神経が細かそうな人なので、本当にプレッシャー感じてそうですね~。でも期待しまくっちゃってます(笑)
タイプは違うけど、イーガンと対はるかも、と思ってます。私も表題作に脱帽です。
テッド・チャンいいですよね!テーマの張り方はもしかしたらイーガンよりも深いかも。プレッシャーに負けないよう、よい作品を書いてほしい作家ですね。