はなればなれに紀伊國屋書店このアイテムの詳細を見る |
思ったより劇映画していた。
もちろん初期のゴダールらしいアイロニーとウイットにあふれているけれど、作品としては「勝手にしやがれ」のほうが破壊力はあるかもしれない。
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フランツは英語教室(全然英会話教室ではないところが面白い)のクラスメイト、オディールと仲良し。オディールがやっかいになっている伯母の家に大金が画されていることを知り、悪友アルチュールと大金強奪をたくらむ。オディールの手引きのもと、TVのサスペンスものよろしく立ち回る二人だが・・・??
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疾走する映画である。オディールのアンナ・カリーナをはじめ、登場人物たちがとにかく走り回る。自分の足で、自転車で、車で。歩道をはみ出し、車道をはみ出し、パリをはみ出し、1.33:1の画面をはみ出さんばかりに、走る。
映画=運動の快楽ということをシンプルに思い出させてくれるこのスピードへの挑戦は、ルーブルを走り抜けるあのすがすがしい名シーンを生み、のちにベルトルッチ「ドリーマーズ」において模倣されることになる。いいなあ。
ほかにも名シーン多し。
カフェでのダンス(ハリ・ガリという当時流行のダンスらしい)や「1分間の実験」もいい。例によって唐突に踊り出す彼らのなんとキュートなこと。この唐突さを寄せ集めてアンナ・カリーナを清濁のイコンとしたのが「女と男のいる舗道」という感じかも。
アンナ・カリーナは、「ちゃんとした演技」をしたかったんだと、どこかで読んだ気がする(ああ、どこだかおもいだせない)。そういう彼女の思いと、ゴダールの傍若無人さが歩み寄ってできあがった作品なのかも。そう考えると、アンナの魅力を最大に引き出しているのが、演技とははなれたところ、ダンスや無意味的なアップやどうでもいい会話での表情だったりするのもなんとも皮肉っぽいというか、残酷な現実というか・・
あとハリウッドとかTVドラマへの目配せもあって、強盗たちはTVドラマなみに「派手に」ぶちかます(あのステッカーどこで用意したんだ(笑))とか、エンディングのチャップリンばりのメロドラマと人を食った「予告」なんかが、確信犯的ふてぶてしさで思わず苦笑。
そもそもゴダール自身によるナレーションは全編まじめに聴いてたらバカをみるような外しブリ(笑)で、アメリカ的ノワールなものに倣いながらもすっぽり骨抜きにしてしまう気概が心地よい。
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日本版タイトルの「はなればなれに」もなかなか魅力的なタイトル。だけど、原題はBANDE a PARTなので、「はみ出し者たち」とかいう意味?
「はなればなれに」というのは、終盤のフランツの、異様にとってつけたようなセリフから取られていると思われるので、なんとなく全体のタイトルとしては今ひとつピンとこないかもしれない。
そういや原題をバンド名にしているグループもあるな。(気持ちはわかる)
ゴダールとしては異例なくらいわかりやすい作品ですヨ。
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原題はタランティーノのプロダクション名にもなっておりますね。
元気な映画という印象でした。
絶妙の突っ込み(いやツッコミとはいわんか)サンクスです。
タランティーノはノーマークなのです。
(まあいくらでもノーマークはあるんですけどね)