Credo, quia absurdum.

旧「Mani_Mani」。ちょっと改名気分でしたので。主に映画、音楽、本について。ときどき日記。

イェジー・カヴァレロヴィチ「尼僧ヨアンナ」

2005-07-19 15:41:54 | cinema

 

1961ポーランド
監督:イェジー・カヴァレロヴィチ
原作:ヤロスワフ・イワシキェウィッチ
脚本:イェジー・カヴァレロヴィチ
   タデウシュ・コンヴィッキ 
出演:ルチーナ・ウィンニッカ、ミエチスワフ・ウォイト
   アンナ・チェピェレフスカ


昔観たケド全く覚えてなかったので、再観。

悪魔に憑依された尼僧がいる尼僧院。
悪魔払いのためにそこに赴く神父。
尼僧ヨアンナは普段は普通の尼僧だが、その内には複数の悪魔が憑いている。
他の尼僧たちもどこか変。
悪魔払いの儀式を経て、ヨアンナの悪魔を自ら引き受ける以外にないと
悟る神父。
自体は恐るべき、そして不可解な結末に・・・


全編徹底した様式美を追求した画面で
観ていて居住まいを正すような風格があった。
でもそのわりに本気で「悪魔憑き」を演じていて、
今のSFXな感覚からいうと意外な作風。

でも怪奇映画ではないので、抑制がきいてる分、神秘的だ。

冒頭、地面にうつぶせて延々祈る神父にはじまって、
血手形のシーンや、
尼僧がひとりだけくるくるスピンするところとか、
尼僧が全員地面にひれ伏したのを俯瞰するシーンとか、
神父が自分で自分をむち打つ苦行とか、
一度だけハンドカメラになって世界が揺れ動くところとか、
ユダヤ教のラビ(多分)と神父の論争とか
なんだか記憶にしっかり残るシーン満載の宗教劇だった。

神父がヨアンナの罪(悪魔)を引き受け、殺人さえ犯し、
悪魔に「私とともに居ろ」と独白するところなどなかなか鬼気迫る設定だ。

しかもヨアンナはそれによって救われたのかどうか。
最後まで判らないし、
そもそも悪魔はいるのか、救いとはなにか。

そんな後ろ髪引かれるようなラスト。
森に迷った人を導くために鳴らすという修道院の鐘が、
音もなく揺れるシーンは、
どこへも導かれなかった登場人物や観客の心を暗示するかのようだ。

ヨアンナ役の女優さんの怪演がみもの。
(好き嫌い分かれそう・・・・)

17世紀フランスでの史実に基づいて書かれた小説が原作。
史実か~
1961年のカンヌで審査員特別賞だそうです。

監督のイエジーさんは他にもポーランド文学の名作クオ・ヴァディスなどを撮っている。
ワイダと並び称されるらしいが作品は少ないな・・

コメント (5)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 髪の毛の基準 | トップ | 体重・体組成 »

5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
これの前話が (st/ST)
2006-06-30 02:59:48
ラッセルの『肉体の悪魔』ということで

しかもこの映画も意識していると思われたりして

やはりどちらも傑作だと思います。

原作はどちらも読んでませんが...。

(一応、岩波文庫で出たのと、ハクスリーになるのかしらん?)
返信する
へえ(こればっか) (manimani)
2006-06-30 12:53:16
☆st/STさま☆

ラッセルの「肉体の悪魔」はラディゲをベースにしたものではないんですか?

う~んまったく何も知らない私です。

ラッセルは観たいですね。

原作も読みたいです。

なかなか時間ないですね~
返信する
ようするに (st/ST)
2006-07-01 02:12:02
この2本は

ルーダンの悪魔事件と呼ばれるモノが題材になってるのですね。

ラッセルのは邦題のせいでややこしいのですが...。



この事件は

澁澤さんの著作でも言及されてましたね(どれだか忘れました)。

で、

『尼僧ヨアンナ』の原作は恒文社と岩波文庫で、

事件そのものというよりも、

事件後の調査を描いていたと記憶しております。



『肉体の悪魔』は事件の方を映画化したわけですが

原作では無いものの、参照したと思える

オルダス・ハクスリーの『ルーダンの悪魔』は人文書院で出てます。

『肉体の悪魔』は TSUTAYA あたりだとありませんか?

返信する
ああ、上の書き方ですと (st/ST)
2006-07-01 06:08:14
『尼僧ヨアンナ』の本を読んだみたいですが

事件後を描いたという記憶は映画の方でありました。
返信する
はあ、なるほど (manimani)
2006-07-03 12:52:04
☆st/STさま☆

ラッセルの「肉体・・」はきっとTSUTAYAにありますね。

こういうつながりなら観ないといけませんね。

原作にもチャレンジだ!
返信する

コメントを投稿