氷: 氷三部作2 (氷三部作 2) | |
ウラジーミル ソローキン | |
河出書房新社 |
ソローキン「氷」読了
先に「ブロの道」を読んでいたので、困惑することはなかったが、
第1部はミステリアスな構成
背景を知ることがなかったら、一体何が起きているのか
全くわからないだろうと思う。
その点では、執筆順に「氷」から先に読むのも面白いと思う。
説明なく常識はずれのことが次々起こるのは
タッチとしてはストルガツキーを思い出す感じ。
ストルガツキーよりは整然としているけど。
第2部で一応の種明かしがある。
第2部をさらに詳細に語ったのが「ブロの道」ということになるのかもしれない。
第3部と第4部はちょっとコンセプチュアルな側面。
しかしこの選民思想的なユーフォリア物語はどう収束していくのだろう。
確かに「氷」だけでは不足なのかもしれない。
人間の営みを徹底して異化して蔑んで見せるこの物語、
それは絶望なのか、
人間にはもはやどこにも希望をつなぐ地点などないのだということなのか
金髪碧眼、過剰なまでの同胞愛、他者への徹底した冷淡さ、神話的起源への絶対的信頼
などなどは、むしろ人間の歴史の暗い側面を強く思わせる。
そこにはおいそれと未来の希望を託すことなどできない。
その意味でこれは深い絶望か、恐ろしい全体主義かのどちらかに転んでいく
救いのない小説なのだ。
次の「23000」ではどうなっちゃうのか、恐ろしい・・・
しかし、これを間に受けて小説と現実の区別がつかなくなるヤツがきっと何人かはいると思うと
背筋が凍るよ。
今頃実際に氷のハンマーを作っている金髪碧眼のロシア人が絶対一人か二人いるよなあ・・・
ああ、これは出版は2002年だからもう古いのかもしれないが。
あと金髪碧眼ってところが、少しほっとした
これが東洋人的な特徴を持った奴らだったら、
日本でも妄想に囚われて氷のハンマー作るやつが出るところだ。
今の日本はそういう選民思想的なことはすぐに蔓延するからな。
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