マリー・アントワネット (KCデラックス モーニング) | |
クリエーター情報なし | |
講談社 |
マリー・アントワネットの物語というとやはり
反射的に革命に至る激動の物語を期待するわけだが、
こちらの、ヴェルサイユ宮殿監修による『マリー・アントワネット』は
マリーのお輿入れから宮殿での生活を、
最新の研究成果などを織り込んで描いたもの。
ルイ16世が長身のイケメンで、不器用ながら聡明なところを見せるところや、
マリーが、豪奢に明け暮れ民衆の困窮に無頓着な貴婦人ではなく、
自身の立場に戸惑いながらも状況について考える少女であるところなど、
従来のイメージを覆す要素が満載である。
人物像だけでなく、服飾や宮殿の意匠、宮殿での作法やふるまい、
あるいは輿入れのときの街道の風景などにいたるまで、
徹底した考証が反映されている。
物語としてのインパクトは弱いかもしれないが、
そういう細部に至るまでの史実がぎっしり詰め込まれており、
従来の定説をひっくり返すという点では、
帯に書かれた惹起である「歴史に革命を起こす」という売り文句も
そんなに大げさではないということがじわじわと分かってくる。
ということで、ベルばら世代とか歴女の方とか真実を知りたい人(?)にはおすすめ。
****
日本側の企画かなと思ったんだが、どうも
フランス側からのオファーで出来た作品のようです。
フランスでの「マンガ」受容は、受容第1世代が大人になって、
ざっくりいうと一層の深みを持ち得る段階にあるので、
フランスの出版社などではそこに文化的なチャンスを見出しているということですね。
そういう点では、総領冬実さんの資質はばっちり適任て感じです。
ここまでフランスの文化を具体的に絵として表してくるのは
日本のマンガ文化ならではという感じがします。
巻末の30ページくらいが解説に費やされていて、これも本編理解のためには必読。
あと、関連本で『マリー・アントワネットの嘘』も必読。
こちらには『マリー・アントワネット』制作の経緯や、
最新研究における新事実や、
総領冬実さんと萩尾望都さんの対談などもあり。
マリー・アントワネットの嘘 | |
クリエーター情報なし | |
講談社 |
あと、個人的には、冒頭のプチ・トリアノンの建物や風景の描写にムネアツ。
昨年行った時の空気感がよみがえった。
そんでもって、とても大変そうだけど、この路線で続編続々編があるといいなあ。。。