小林多喜二の「蟹工船」が、若者のブームなのだそうだ。
私は、ふと7年ほど前を思い出します。(今夜は、ちょっと真面目に)
用度担当の私は、質の良いものをより安くをモットーに仕事をこなします。
ある日、某卸さんから素材の提案がありました。
確かに安いのだが、仕上がりが素人目にも悪すぎる。中国製でありました。
当然、即却下であったが、その3年後には、品質が格段に上がっていました。
また、別の材料は、320円から270円で購入可能になるという。
素材の変更と生産拠点の移転(マレーシアから中国へ)の結果だという。
1材料で、年間100万円単位のコストカットにつながるのだから即採用である。
しかし、ふと一抹の不安が過りました。
日本から東南アジアへ、そして中国へと安い人件費を求め、生産拠点が移転する。
私の子どもたちが、成人となる時、日本の製造業はどうなっているのだろうかと…。
そして、その不安が、現実になろうとしている。
約30年前に読んだスタインベックの「怒りの葡萄」を思い出す。
日銭を稼ぐ農夫の賃金が、日を追うごとに切り下げられていく。
新たな仕事先を求め、ただ移動する農夫たち。
世界恐慌時代の産物と思っていた状況が、映画の世界と思っていた状況が、
今、現実になろうとしているのである。
餓えて衰弱した農夫に、乳房を含ませ、ニヤリと笑う女の生へのしたたかさ
が、脳裏を過るのである。
踏まれても、なお、生き残る「たんぽぽ」の力強さを身につけたいと思う。