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「麒麟の翼」斜め読み2/2

2024年05月10日 | 斜読

斜読・日本の作家一覧>  book564 麒麟の翼 東野圭吾 講談社文庫 2014

 (1/2の続き)  香織は八島冬樹が最後に電話をかけてきた現場が気になり、人形町の浜町緑道に出かけ、捜査に行き詰まって事件の原点である浜町緑道に来ていた加賀と出会う。2人で事件現場を歩いていて、加賀は香織から映画の試写会の抽選をあてて2人でよく映画を見た、八島はコーヒーは飲まずココアが大好きだったことなどを聞く。
 八島の死体検案書の未消化物にココアはなかった。青柳と会っていたのは八島ではなさそうだ・・八柳犯行説がまたも崩れていく・・。
 八島が面接を受けようとしたのは京橋の家具・雑貨を販売しているストックハウスで、求人内容が違っていたので断られ、八島はストックハウスを出たことが分かる。
 ストックハウスは1階が土足禁止で、八島が穴の空いていない靴下を探していたわけが分かり、加賀は八島のその後の足取りを探す。

 悠人は高校の担任と進路について話し合ったあと、杉野に黒沢と「あのこと」を話したいと言う・・あのこと?。事件の核心が匂う・・。
 杉野と別れた悠人が家に帰るとき小竹に会う。悠人は父青柳武明をすべての黒幕にして片をつけようとする小竹に怒り、顔面を殴る話しが挿入される・・悠人が父を信頼し始めていた表れのようだ・・。

 加賀は、八島がストックハウスを出たあと近くの本屋に寄ったのではないかと考え、日本橋中央通りの本屋の防犯カメラを調べ、八島らしい後ろ姿を見つける。香織に確認してもらうと冬樹に間違いないと言う。時間は19:45だが、防犯カメラの後ろ姿だけでは八島の無実を証明しにくい。
 八島が本を手に取る映像もあったので、加賀は八島が手に取った本を探し、鑑識に指紋を調べてもらう。

 加賀は松宮と修文館中学を訪ね、水泳部顧問の糸川に3年前の夏休みに起きた事故について聞く・・青柳が胸を刺されて殺される直前に誰かとコーヒーを飲んでいる、八島はココア派である、事件の3日前に青柳は修文館中学の糸川と電話で話している、といったことがシャッフルされたのだろうか。まだ水泳部顧問糸川と事件とのつながりが見えない・・。
 加賀は水天宮の御利益に水難除けがあることに気づき、インターネット検索で3年前の夜7時ごろ、修文館中学のプールで2年生が溺れた事故を見つける。加賀と松宮は、第1発見者だった糸川に会って生徒の名は吉永友之で、その日の大会で成績が悪く友之は1人で練習していて溺れたことを聞く。学校を出た加賀と松宮は糸川が何か隠していると直感する。
 松宮は、修文館中学校水泳部創設60周年記念誌から吉永友之の軽井沢の住所を見つける。

 加賀は、水天宮などの願掛けは悠人のためで、麒麟像は武明から悠人へのメッセージだったと推論し、それを確かめようと悠人に話を聞くが、悠人はプールで吉永が溺れた事故のことについて何も知らないと答える・・どうやらプールでの事故が重要な鍵のようだが、青柳が刺された事件とどこでつながるのか?・・。

 本に残っていた指紋は八島冬樹と判明した。19:45ごろ八島は本屋にいたことになる。被害者青柳といっしょにいたのは誰か・・いよいよ核心に向かう・・。
 悠人は黒沢翔太を訪ね、3人で話をしようと持ちかけ、明日の5時に中目黒駅前と約束する。

 加賀と松宮は軽井沢の吉永友之を訪ねる。母美重子が出迎え、友之はプールで溺れた事故以来眠ったままと話す。加賀が水天宮のことを知っているかと聞くと、美重子は友之の看病日記のつもりで「キリンノツバサ」というタイトルのブログを開いたところ、「東京のハナコさん」から折り鶴を100羽ずつ毎月供えているメールが来た、と話す。
 東京に戻った加賀と松宮は修文館中学で糸川に事故当日の大会の結果を聞く。200mリレーは第1泳者 青柳悠人(3年)、第2泳者 杉野達也(3年)、第3泳者 吉永友之(2年)、第4泳者 黒沢翔太(3年)だった。

 松宮は中目黒駅の黒沢翔太を訪ねるが、青柳と会うと出かけていた。加賀は杉野達也を訪ねたが帰宅していなかった。加賀と松宮は中目黒駅前で落ち合い、青柳悠人と黒沢翔太を見つけるが杉野達也はいない。
 加賀は杉野を探すよう緊急手配し、悠人と翔太を日本橋署に連れて行き、悠人に君は後悔しているから折り鶴を折って水天宮に供え、七福神めぐりをし、「東京のハナコ」と名乗って「キリンノツバサ」にメールした、と話しかける。
 悠人は隠しおおせないと観念し、「水泳部の先輩が部員の泳ぎを見て2年の吉永友之は理想的な泳ぎだ、みんな杉野を見習ったほうがいいと話し、それを聞いた3年の青柳、杉野、黒沢は吉永を生意気と感じるようになり、大会のリレーでタイムが出なかったことから、その日の6時過ぎ、修文館中学校の塀を乗り越えて入り込み、プールで吉永の足を持って泳ぎの特訓をしていたとき吉永が沈んでしまった、3人で吉永をプールサイドに運んだとき異変に気づいた糸川が現れ、3人を帰し、吉永に心臓マッサージをしたが意識は戻らず眠ったままになった。
 その後、悠人は杉野から「キリンノツバサ-いつか羽ばたく日を夢見て」のブログを聞き、母親が息子の回復を祈っているのを知って愕然となり、和紙の専門店で折り紙を購入し、一番上のピンク色で百羽の折り鶴を折って水天宮に供え、写真を「キリンノツバサ」に送った。翌月は赤色で百羽を折り、七福神の別の神社に供えて写真を送り、翌月は茶色と折り鶴を折って別の七福神に供えたメールを送っていたが、あるとき、父に「東京のハナコ」でメールを送っていたこと知られてしまったので、アドレスを消し、折り紙と折り鶴を処分し、そのまま記憶も薄れていった。
 悠人は父が死んだあと、松宮から父が胸を刺されながらも日本橋の麒麟像まで歩いていったことを聞き、吉永友之の母のブログの「キリンノツバサ」は日本橋の羽を広げた麒麟像のことだったことに気づき、久しぶりにブログ「キリンノツバサ」を開くと、悠人がメール送信を止めたあとも「東京のハナコ」から日本橋の七福神に百羽の鶴を供え新しいたデジカメで撮影した写真が定期的に届いているのが分かった。
 悠人は、父が息子の気持ちを引き継ぎ、吉永友之の回復を祈って千羽鶴を完成させ、瀕死の状態で麒麟像を目指し、息子に「勇気を出せ、真実から逃げるな、自分の信じたことをやれ」と伝えたかったに違いない、と思った」ことを打ち明ける・・疑問=麒麟像と七福神巡りの謎は解けたが、青柳殺害は誰か・・。
 加賀は悠人に、「人は誰でも過ちを犯す。大事なことはそのこととどう向き合うか」と話す。そこへ杉野達也の自殺未遂と青柳殺害自白の報が入る。

 杉野達也の自供で、「青柳殺害の当日、学校から帰るとき吉永友之の父と名乗る人から電話があり、プール事故のことで話をしたいというので、護身用にナイフを忍ばせ、約束の午後7時に日本橋の改札で待っていると、吉永を名乗った青柳の父が現れ、コーヒーショップでカフェオーレを2つ買って本当のことを話してくれと言うのですべてを告白して心が軽くなったが、将来、大学進学がふいになると思った途端に歯止めが効かなくなり、夢中で青柳を刺してしまった、気づいたら地下道で、全力で逃げた」ことが明らかになる・・東野氏の、あちらこちらに伏線を張り巡らせ、読み手に推理を楽しませる筆裁きで事件が解決した・・。

 加賀は糸川に、青柳武明は過ちを犯してもごまかせばなんとかなるといった間違った教育を受けた息子に、命を賭して正しいことを教えようとした、それが分からないあなたは教育者失格、と諭す。
 香織は加賀と松宮に、「東京に来たことを後悔していない、冬樹君と楽しい思い出を作れたし、それは絶対壊れないし、失われない」と話し、福島に帰る。
 悠人は黒沢と千羽鶴を持ち軽井沢の吉永友之を訪ねる。悠人は、友之がいつか目を覚ますことを心から祈ろうと思う。

 杉野達也が、吉永友之がプールで溺れた事故の真相が明らかになるのを恐れ青柳武明をナイフで刺す、のは短絡過ぎる。いまはそうした短絡的な犯罪が多いということか。
 カネセキ金属が危険な作業を派遣社員にさせて起きた労災事故の隠蔽を、死人に口なし、青柳武明に押しつけたのも気になる。これもいまの社会を象徴しているということであろうか。
 悠人が吉永友之が眠ったっまま快復が難しいのを知り、罪の重さを感じて七福神を参拝するというのも想像しにくい。そもそも加賀が七福神巡りに気づくのも唐突に感じる。など、気になることもあるが、東野氏の筆裁きで事件を粘り強く調べ解決する展開を楽しんだ。  (2024.4)

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