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熱海梅園を歩く

2019年05月17日 | 旅行

<静岡を歩く>   2019.2 静岡を歩く 熱海の梅

 河津桜はソメイヨシノより開花が早い。2016年2月に久能山を訪ねたあと宿に向かおうと国道414号線を走り、河津で大渋滞に巻き込まれて車窓から河津桜を眺めることになった。
 2019年2月、列車を利用して熱海の梅、河津の桜を訪ねた。
 上野東京ラインを利用すると熱海まで乗り換えなしでおよそ2時間半、2300円ぐらいである。東京駅から伊豆の踊り子号に乗ると1 時間20 分かかり3300円ぐらい、新幹線を使うと熱海まで50 分ほどで3700円ぐらい、まさに時は金なりである。現役のときは踊り子号や新幹線を使って時間を節約したが、年金暮らし、乗り換えなしでのんびり本を読むことにして上野東京ラインに乗った。

 熱海梅園は来宮駅から徒歩 10 分である。来宮駅は熱海駅で伊東線に乗り換え次の駅だが、伊東線は平日にもかかわらずたいへんな混みようだった。梅に早桜、最近は伊豆半島ジオパークも加わり、伊豆の人気は高い。
 来宮駅で降りる。駅前を見回すが、手ごろな食事処が見当たらない(写真)。梅見に向かう人、梅を見終わった人が少なくない。上り道を10分ほど歩くと、右手に入場口が現れる。コースは分かりやすい。
 熱海梅園は、ふだんは無料開放だが梅まつり中は一般は300 円、熱海市民と熱海宿泊客は100 円、中学生以下は無料になる。梅園の手入れは大変にもかかわらず300 円、熱海宿泊客100 円の設定に、観光資源を財源とする熱海市の熱意を感じる。

 熱海梅園は、明治初め、内務省・長与専斎の提唱で、1886年に開園した。初川沿いの斜面地2.5ha、南端から北端までおよそ400mに、早咲き梅270本ほど、中咲き梅100本ほど、遅咲き梅100本弱、ほかに桜、桃、楓、柿、柳、松、杉などが植えられていて、年間を通して樹園を楽むことができるそうだ。
 入園するとさっそく梅が迎えてくれた(写真)。桃色に近い紅梅、清楚な雰囲気をただよわす白梅、近づくとほんのりと香る。風がなく、日差しがあるから寒さは感じない。
 平凡だが、菅原道真の「東風吹かば 匂い起こせよ梅の花 主なしとて 春な忘れそ」を思い出す。

 園内の遊歩道はいくつかに分かれている(写真)。初川に沿って上り、漸佳橋を渡る。梅園という佳境の入り口、といった意味合いで名付けられたらしい。高台の上が中央広場で、屋台が並んでいた。ほかに食事処がないので、ここでかき揚げうどんといなり寿司を食べた。梅見酒といきたいが、我慢、持参の炭酸水で代用する。
 梅園マップには芭蕉の句碑「梅が香に のっと日の出る 山路かな」が書かれていたが、見落としたらしく迎月橋に出た。
 迎月橋からは視界が開け、月の出を楽しめる、といった意味合いらしい。
 芭蕉の句は、梅の香りにさそわれるかのように太陽がのっという感じで現れた、という早春を喜ぶという解釈のようだ。解釈は自由なので、私は、梅の香りに気を取られ日が高くなっているのに気づかず、のっと現れたように感じた気分を想像した。
 いずれにしても芭蕉の時代にこの梅園はないから舞台は熱海ではなさそうだが、梅園にちなんだ句や歌が紹介されていれば、日ごろの不勉強を補ってくれる。

 迎月橋を渡らず、左の散策路を歩く。初川に中州があり、左岸、中州、右岸にまたがって雙眉橋が架かっている。雙は双の旧字で、二つの眉のような橋といった意味のようだ。
 橋の途中まで渡り、梅園を眺める。梅の花は小さいから満開でも桜のような勢いがない。その分、可憐、清楚といった印象になる。梅園マップにはホタルと記されているから、時期になるとホタルも楽しめそうだ。
 雙眉橋を戻り、左の道を上ると、また中州があり、左岸から中州に渡る駐杖橋が架かる。梅に目を取られ立ち止まる、といった意味合いで名付けられたらしい。
 梅園マップには、中州に武田鴬塘(おうとう)の「夏すでに 漲る汐の 迅さかな」の句碑が記されている。武田鴬塘(1871-1935)については知らなかった。新聞記者、小説家、俳人として知られるそうだ。10月生まれだが、本名は桜桃四郎(おとしろう)である。10月生まれに桜、桃の名前とは名付けた方の風流心だろうか。その風流心に応え、俳人になったのかも知れない。

 駐杖橋も渡らず、左の園路を上り、梅見の滝をくぐる。滝に梅の光景がいい。先客が自撮りで滝+梅を撮っていた。
 私たちはそのまま上り梅園橋を渡ったが、梅見の滝から右に下ると香浮橋に出る。初川に枝垂れる梅の香が漂っているような意味合いだろうか。
 梅園橋の先の和風庭園で行き止まりである。ここが梅園では最も高い。梅にあふれた風景を眺める。
 下ると、伝統的な韓国の塀が巡らされた韓国庭園がある。なかには韓国伝統民家の片鱗が再現されていた。

 さらに下ると、熱海市の伝統民家を移築した中山晋平記念館が建っている。外観を眺め、初川沿いの園路に出る。
 見事な枝垂れ梅がそこかしこで優美な姿を見せる(写真)。この梅園は梅を始め樹種が多く、それぞれに名札がかけられ、花の特徴が付記されている。惜しいかな、すべて日本語だった。外国人観光客のための工夫を期待したい。
 マスクをつけて園内を散策する人が少なくない。風邪だろうか、花粉症だろうか。マスクを取らないと梅香は楽しめない。
 そこで一句、「マスク取り 鼻水かみて 梅香る」、梅香るといった華やいだ気分からほど遠い句になった。まだまだ未熟である。

 およそ1時間の梅見を終え、入場口に戻る。来宮駅までは下り坂だから7~8分で行けるが、伊東線の混雑を考え、熱海始発に乗ろうとバスで熱海駅に向かった。市街の狭い道を右に左に曲がりながら、10数分で熱海駅に着いた。
 この選択は正解で熱海始発に座れたが、伊東線は来宮駅で梅見を終えた観光客、続く各駅から花見に出かける温泉客?でかなりの混雑になった。人混みの隙間から駿河湾が見える。天気が崩れだし、大島はぼんやりとした島影になっていた。
 熱海駅からおよそ1時間、3時半過ぎに伊豆高原駅に着く。ショップで地ビールの伊豆の国ビールを買い、宿の送迎バスに乗り込む。
 かんぽの宿伊豆高原は高台に立地し、駿河湾を一望できるが、あいにくと雲が覆い、海と空の境も分からない。
 部屋からも露天からも空とも海とも見分けのつかない鈍色を眺める。湯上がりに鈍色を眺めながら伊豆国ビールを飲み一句「海の春 天飲み込みて 鈍色や」、凡人レベルの句になったと思うが。
 夕食は駿河湾に面したレストランだが、相変わらず海も空も鈍色である。会席と純米吟醸「臥龍梅」をいただきながら、鈍色を楽しんだ。 続く  (2019.5)

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