ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

「良い子にご褒美」

2013-10-04 23:02:27 | 音楽劇
9月10日サントリーホールで、トム・ストッパード作アンドレ・プレヴィン作曲の音楽劇「良い子にご褒美」をみた(台本翻訳・演出:
村田元史、指揮:飯森範親、オケ:東京交響楽団)。

日本語上演。休憩なし・約1時間。日本初演。

「正気の人間が刑務所に囚われている」そんなことを口にする奴は反体制の危険人物だということで、アレクサンドルは精神病院に
収容される。「あんなことを言った自分は病気だった。今は治った」そう認めれば釈放すると言われる。だが彼はそれを断るばかりか
ハンガーストライキまでして自分の正しさを主張する。「1足す1はいつも2だ。3と言えと強要されても受け入れるわけにはいかない」
息子のサーシャは父の釈放を願って「もう治った、とウソをついて!」と嘆願する。
アレクサンドルと同じ監房に本物の狂人イワーノフが収容されている。自分の周りにオーケストラが存在すると信じている男だった・・・

この作品が生まれた経緯は少々変わっている。
1974年、プレヴィンがストッパードに、生のフル編成のオーケストラを必要とする芝居を書かないか、と声をかけたのだ。

作者自身1978年版序文に書いているように、「通常、芝居というのは作家の頭の中で、ある特定のことについて書きたいという思い
から生まれるものであり、本来それが望ましい。」まさにその通り。だからここからは、どうしてもこれを伝えたい、という強い情熱が
伝わってこない。作者は実に正直だ。「そもそもオーケストラについても、頭のおかしい人間についても書くべき真の理由はなく、
書くことがなかった」「そろそろはったりもおしまいにしようと思いかけていた」というのだから思わず笑ってしまう。

1970年代だったらもっと感情移入できたと思う。
初演は1977年つまり36年前だ。この間に世界は大きく変わった。

トム・ストッパードと言えば、舞台「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」を古田新太と生瀬勝久の共演で見て、その面白さ
に驚いたのが評者の彼との出会いだ。
その後、彼が脚本を書いた映画「恋におちたシェイクスピア」(1999年アカデミー賞脚本賞受賞)でも堪能させてもらった。
さらに舞台「コースト・オブ・ユートピア」(2009年日本初演)を渋谷Bunkamuraで見たのも懐かしい思い出だ。上演時間9時間の
大作ゆえ昼食と夕食持参で乗り込んだのだった。役者たちもみな高揚していた。彼はこれらでトニー賞を4回も受賞している。
それら綺羅星の如き作品群からみると、この作品は残念ながら地味で微妙だ。
ただプレヴィンの音楽は十分楽しめた。

息子サーシャ役の堀川恭司君(小4)は音程も良く、好演。
他の俳優たちは劇団昴の面々。
東京交響楽団はなかなか芝居っ気があるオケで、この作品にぴったり。


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