ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

「スカラムーシュ・ジョーンズ」

2022-08-23 10:47:15 | 芝居
8月18日下北沢・本多劇場で、ジャスティン・ブッチャー作「スカラムーシュ・ジョーンズ」を見た(演出:鵜山仁)。



1899年12月31日、十九世紀の終わり、大晦日のカーニバルの中、美しい褐色の肌を持つ女から生まれた小さな赤ん坊は
抜けるように白く、何か特別なことのために生まれてきた子だ・・・と、つけられた名前は道化師を意味する、スカラムーシュ。
生涯で唯一我が家だといえる場所をわずか6歳で後にし、たった一日で孤児となり、奴隷となり、流浪の身となり・・・そして
これが、これから長く続く波瀾万丈な旅路へのスタートとなる。
時にその光景や匂いに恍惚とし、この世のものとは思えぬ魅力的な音楽と共に旅をした。自身の透き通るような白い肌によって
巻き込まれた数奇な運命は、恐怖と喜びに満ちていた。
そして今夜は1999年12月31日、二十世紀のどん尻でありミレニアム・イブ。
大きな花火が打ち上がる大晦日にスカラムーシュー道化師ーが己の人生を、仮面を剝がすように語り始める(チラシより)。

その初日を見た。
主人公の母は娼婦で、毎晩何人もの客を取っていた。息子の彼は、それを見ていた。自分の父親が誰なのか、どんな人なのか知りたがったが、
母は何も教えてくれなかった。ただ一度だけ「イギリス人よ」と言った。周囲の人々はみな肌が褐色なのに、自分だけ白い。彼のイギリスへの憧れはつのった。
6歳の時、母が事故死し、孤児院に入るはずが奴隷商人に売り飛ばされた。その後は蛇使いと共に路上で何年もショウをやったり、或る国のゲイの王子に
拾われて船旅をするが、迫られそうになって海に飛び込んだり、ジプシーの一団に助けられたり・・。
そのうち第2次大戦が始まり、ジプシーたちとポーランドのクラクフに行くことにするが、いろいろあって12歳の娘と結婚することになったり、
ユダヤ人と一緒にいるところをナチスに捕まり強制収容所に入れられたり、だが彼はどう見てもユダヤ人には見えないので墓掘りをさせられたり・・。
とにかくひと言で言うと「数奇な人生」。

舞台の背後に主人公の旅する国の地図を映したり、当時のニュース映像を流すなど工夫を凝らして、一人芝居の単調さを補っていた。
トム・ハンクス主演の映画「フォレスト・ガンプ~一期一会」にテイストが似ているかも。
だがその中身は、と言うと、映画と違ってあまりに表面的で内容が無い。
人間も描かれていない。
19世紀の末の大晦日に生まれて20世紀を丸々百年生きた、と言うが、だから何?と言いたい。
数字をそろえることに何か意味があるのか?
人間を描く芝居を見たい。

加藤さんがチャレンジ精神旺盛なこと、自分に自信があること、そして芝居が心底好きなことは伝わってきた。
そんな彼を応援し続けるコアなファンが大勢いることも。まあ評者もその一人だが。
この日は何だか芝居を見たような気がしなかった。
芝居の楽しさ、面白さというのは、何よりも作者の力量にかかっていると改めて思った。


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