ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

「シャーリー・ヴァレンタイン」

2024-07-30 18:20:40 | 芝居
7月23日下北沢OFF・OFFシアターで、ウイリー・ラッセル作「シャーリー・ヴァレンタイン」を見た(演出:加藤健一)。





平凡な主婦シャーリー・ヴァレンタイン(加藤忍)。
それは彼女の結婚する前の名前。
その頃の彼女は生き生きと冒険心を持って生きていたはずだった。
しかし今、年月が経ち、中年となった彼女は、台所の壁に向かって、夫や子供たち、そして自分自身への
愚痴をしゃべる日々を送っている。
そんな虚しい毎日を送ってきたシャーリーが、ふとしたきっかけにより出かけたギリシャへの一人旅で、
自分の姿を再確認していく姿を描く。

現代を生きる女性たちの普遍的な叫びをすくい上げた傑作ヒューマンコメディ(チラシより)。

加藤忍の一人芝居。その初日を見た。

息子ブライアンは自称「詩人」。
女性校長との嫌な思い出、学生時代のクラスメイト・マージョリー、
隣人ジリアン、娘ミランドラ、バツイチの友人ジェーン。
ジェーンが一緒にギリシャに旅行しよう、と誘ってきたけど、シャーリーはまだ迷っている。
台所の壁に向かってこんなことをしゃべりつつ、彼女はチップス(フライドポテト)と目玉焼きを作る。
彼女は48歳。
料理しながら白ワインをおいしそうに飲む。
本当は木曜の夕食はお肉と決まっていて、スーパーでひき肉500gを買っていた。
だが、近所の人に犬の世話を頼まれていて、その飼い主がヴェジタリアンで、その犬は大きな狩猟犬なのにヴェジタリアンにされているので
可哀想になって、そのひき肉をやってしまったという。
そのために今日の夕食はチップス&エッグになった。
きっと夫は怒るだろう・・。
案の定、夫は怒って皿を押しやり、妻の膝に卵などが流れて・・。
その時、彼女は決心する。
それから3週間かけて準備万端。
2週間分の料理を作って冷凍。
自分がいない間は、毎日母に来てもらって、それらを解凍してもらう約束もとりつけた。
(この夫は解凍もできないのだろうか?)
<休憩>
ギリシャ。日焼けしたシャーリー。ビキニ姿。その上に白いTシャツを着る。
一緒に来たジェーンは、飛行機の中で知り合った男にディナーに誘われて行き、4日も戻って来ない。
その男は島の反対側に別荘を持っているとか。
夜、海辺のレストランに行き、テーブルを浜辺まで持って行っていいかとボーイに尋ねる。
それがコスタスとの出会い。
彼は、その夜遅く閉店すると、グラスを片づけに来るが、その時シャーリーは泣いていて、ワインはまだ飲んでいなかった。
コスタスはそばの砂浜に座る。
「明日、兄の船に招待します。沖に出ましょう」
迷うが、彼が強引に誘うのでOKする。

翌朝ジェーンが戻って来て「ごめんなさいね!」と謝っているところにコスタスが迎えに来る。
呆然とするジェーン。
「これだから旅慣れてない中年女は!こっちの男のいいカモなのよ!」
これを聞くと、シャーリーはまっすぐ部屋を出て行った。

楽しい一日。
彼女は船の上で服を全部脱いで海に飛び込み、コスタスも続く・・。
だが別れの日が来る。
空港で、ジェーンと列に並び、スーツケースがベルトコンベアに乗って吸い込まれて行った時、
ここを離れてはいけない、と思った。
すぐに後戻りする。
後ろでジェーンが大声で叫んでいた。

コスタスの店に戻ると、彼が女性客に話しかけていた。
初めて会った、あの夜に、シャーリーに話しかけたのと全く同じ口説き文句だったw。
彼は彼女を見ると椅子から転げ落ちそうになった。
だが彼女は落ち着いていた。
「大丈夫よ。あなたの邪魔はしないわ。ここで働かせて欲しいの」
こうして彼女は、主に英国人観光客相手に接客の仕事を始める。

夫から2度電話があった。
今日、夫がここに来る。
彼女に会いに、そして連れ戻しに。
だがこれからどうするかは、まだ彼女自身にもわからないのだった。

~~~~~~~ ~~~~~~~

チラシのあらすじを読んで、つまらなそうだなと思ったが、残念ながら予想通りの展開。
まず主人公に感情移入できない。
子育ても終わり、夫と二人だけの生活。
親の介護もなく、実母とは良好な関係。
家事をすればいいだけの優雅な暮らしなのに、何が不満なのか。
長年の夢は海外旅行。特に葡萄の採れる土地の海辺でワインを飲むことだが、夫は旅行が苦手。
ただそれだけ。
生活のためにあくせく働かなくても済むことに、感謝の気持ちがない。
夫のいない昼間、ありあまる時間を使って好きなことができるのに。
特にやりたいことがないのだろう。
自分でも自分のことをバカだ、と言っているが、とにかく衝動的で、家族や友人を振り回す。
わざわざ遠い外国に行かないと自分探し(自己実現)ができないのか。
ストーリー的には、ギリシャですぐに仕事が見つかるのも都合が良すぎる。

デイテールには面白いところもあった。
かつてのクラスメイト・マージョリーに憧れていたが、何十年も後に再会して話をしてみると、何と彼女もシャーリーに憧れていた、とか。
「歩くワイドショー」のようなジリアンというおしゃべりな隣人が、彼女の旅行のことを聞いて、邪魔するかと思いきや、
「あなたは勇気がある」と尊敬の眼差しを向け、ステキなピンクのガウンをプレゼントしてくれる、とか。

それと、加藤忍がうまいことが、改めてよくわかった。
彼女は何人もの声を自在に使い分ける。
ポテトを手際よくカットするのも、見てて面白い。

芝居をしながら料理するというのは、かつて蒼井優主演の、英国の劇作家の作品でも見たことがある。
2019年12月、デヴィッド・ヘア作「スカイライト」(演出:小川絵梨子、新国立劇場小劇場)。
あの時は、大量の野菜を次々と洗って切って炒めてパスタソースを作り、パスタを茹で、しまいにちゃんと食べていたっけ。





コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする