ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

「デカローグ 10 ある希望に関する物語」

2024-07-21 17:59:21 | 芝居
7月4日、新国立劇場小劇場で、クシシュトフ・キェシロフスキ作「デカローグ 10 ある希望に関する物語」を見た(演出:小川絵梨子)。



 父の死により久しぶりに再会した兄弟は
 父の遺品によって予期せぬ事件に巻き込まれていく。
パンクロックグループのリーダーである弟のアルトゥルは、会場に
やってきた兄イェジーから、疎遠になっていた父が亡くなったことを告げられる。
父のフラットを訪れた兄弟は、彼が膨大な切手コレクションを残していたことを知る。
父親のコレクションに計り知れない価値があることを知った兄弟は
次第にコレクションへの執着を募らせ、偏執的になっていく・・・(チラシより)。

兄弟が亡父のフラットに入ると、警報装置が鳴り響く。
部屋の中には、壁一面に切手のコレクションが詰まった棚。
水槽の金魚は死んでいた。
そこに父の友人という男が来て、父に金を貸していた、22万、と言う。
兄弟は驚く。
二人共、そんな金はない。
仕方なく、それぞれ車やアンプを売って金を返すことにする。
切手の中に、兄(石母田史朗)の息子が好きそうなのが1枚あるので、兄は息子にやることにする。
兄弟は2年振りの再会。
昔みたいにのんびりしよう、と語り合う。
兄弟は、葬儀に来ていた人の中に、確か切手協会の人がいたから、その人に頼んで切手を売ってもらおうと相談する。

その人の話を聴いて、二人は初めて父の切手の価値を知る。
これらを買える人はポーランドにはいない、サザビーズとかに持ち込まないと売れない、と言われる。
特に、3枚組のうちの1枚が欠けているのが惜しい、3枚そろっていればワルシャワの中心部に
豪邸がいくつも持てる、という。
それは、先日たまたま兄が息子にやってしまった1枚だった。
兄はすぐに息子に会いに行く。

だが息子はチンピラにだまされ、安く売ってしまっていた。
兄はそのチンピラを見つけ、4万で売ったという切手商の店に案内させる。
売った切手を買い戻そうとすると、切手商が「24万ですな」と言うので、兄は怒って帰宅。
弟(竪山隼太)に話すと、今度は弟が行くことにする。
彼は兄より世慣れており、切手商との会話を録音して、「盗品だろ?」という彼の言葉を聞かせる。
法に触れることをした証拠を突きつけられた彼は諦めて切手を返すが、さらにいい話がある、と持ちかけ、別室に案内する。

兄は父の部屋に植物をいくつか置き、新しい金魚を買ってきて飼い始める。
切手の適切な保存のために、部屋の空気を清浄に保とうというのだ。
弟は番犬にとドーベルマンを一頭連れて来る。

兄は妻子持ちだが、妻にも亡父の遺品のことを内緒にしているので、最近の行動を怪しまれる。
車を売ったり連日帰宅が遅かったりするので浮気を疑われ、出ていけと言われて、とうとう父の部屋に引越して来る。
独り身の弟は、そんな兄を心配する。

切手商が兄に、ひとつの提案を持ちかける。
父親の切手は貴重過ぎて、とても買い手がつかないが、あの1枚を売る方法はある。
実は、切手商の娘は難病で、もし兄が自分の腎臓を彼女に移植してくれるなら、あの1枚を買ってもいい、
それをA が買い、B が更に買い取って外国に売るルートがある、と。
兄は迷うが、腎臓は2つあるし、人助けにもなり金も入るので、結局承諾する。
兄は弟に、自分の入院中、ずっと部屋にいてくれ、と頼む。

弟は、折悪しくバンドのツアーが始まる時だったが、仲間の反対を押し切ってツアー参加を断る。
入院先の病院に兄を見舞いに行くと、看護師の若い女性に捕まる。
「ひょっとして〇〇バンドの〇〇さん?」
彼女は彼の熱烈なファンで、キャーッと興奮。
「顔に触ってもいいですか?」挙句、彼の手を取り「あの・・あちらの部屋にベッドがあるんですけど」
弟は手を取られてそのまま仮眠室へ・・。

兄が退院する。
弟は3枚組の切手の最後の1枚を渡す。
兄は大喜び。
だが弟はしょげている。
実は、兄の入院中、部屋に強盗が入り、すべての切手が盗まれたのだった。
二人が部屋に行くと、部屋はメチャメチャに荒らされている。
棚は空っぽ。
弟が奥からドーベルマンを連れて来る。
兄は呆然として犬を見る。
(ここで笑いが起こる)
「こいつは何をしてたんだ?!」
弟「犬の扱いに慣れた奴がいたようだ」
その後、警報装置を、うるさいからと兄が切っていたことが判明。
二人は険悪な雰囲気になる。
弟は1枚の切手の代金を「腎臓の分だ」と兄に渡して去る。

二人は別々に警察に行き、この強盗事件について、それぞれ相手が怪しい、と訴える。
弟は、兄が警報装置を切ったことで、兄は、犬が騒がなかったことで、相手を疑っている。
だがその後、あの切手商とチンピラ?2人とが笑顔で握手するところを二人は偶然目撃!
彼らは始めからグルだったとわかり、兄弟は和解するのだった。

~~~~~~~ ~~~~~~~
珍しくコメディタッチだった。
ここでも人間たちの浅ましさ、愚かさ、哀しさが描かれるが、それと共に、そんな彼らを見つめる温かいまなざしが感じられる。
看護師の女性の積極性と奔放さには驚かされる。
彼女に誘惑されると、兄との約束も大事なお宝のこともコロッと忘れて、おとなしく、されるがままになってしまう弟が何とも可愛い。
強盗が荒らした部屋の奥からドーベルマンが出て来るのもおかしい。
十戒の第10戒は、カトリックでは「隣人の財産を欲してはならない」。


コメント
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