ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

映画「12人の優しい日本人」

2011-04-16 18:21:25 | 映画
先日テレビで、映画「12人の優しい日本人」を観た(中原俊監督、1991年)。
脚本は三谷幸喜と東京サンシャインボーイズ。

言わずと知れた名画「12人の怒れる男たち」(シドニー・ルメット監督)に触発されて生まれた?作品。
被告が若い女になっていたり、始め11人が無罪説で1人だけが有罪を主張する設定にしたり、先の映画の主な要素を反転したものかと思いきや、どうしてどうして二転三転、謎解きも十分面白い。女の描き方など時々首をかしげるところもあるが。「ジンジャーエール」のギャグもまあ面白い。

女性は若い女、中年の女、老年の女の3種類が登場する。
男性作家にはこのように、女を年齢別にしか書き分けることのできない人が多い。
斉藤美奈子の「紅一点論」じゃないけど、ここでは12人のうちたったの3人、つまり4分の1しかいない。せめて半分の6人くらいは描き分けてほしいと思う。
でも考えてみれば、かの「・・怒れる男たち」は全員男だったのだから、だいぶ進歩してるとも言える。

林美智子さんが出ていて懐かしい。久し振りに見たが、お元気そうでうれしい・・って何だか親戚のおばさんみたい。
自分の職業を偽った男性がいたが、嘘をついて相手をやり込めるという卑怯な手を使ったのだから、最後に一言あやまってほしかった。
これが映画初出演の若き豊川悦司が、とにかくカッコイイ。


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映画「武士の家計簿」

2011-01-22 21:09:51 | 映画
先日映画「武士の家計簿」を観た(監督:森田芳光)。

原作は磯田道史の『武士の家計簿 「加賀藩御算用者」の幕末維新』。

幕末の加賀藩で、年収の約2倍の借金を負った家の下級武士が、ほぼすべての家財道具を売り払い、見えや外聞を捨てた耐乏生活を行って全額返済するという実際にあった物語。

これほど何も起こらない映画も珍しい。或る一家の日常が淡々と描かれる。

妻お駒役の仲間由紀恵は相変わらず美しく、声も魅力的。
草笛光子演じる「おばばさま」(曾祖母)は趣味が和算という知的な女性。好奇心も旺盛らしく、昔の自慢話を繰り返す息子の話をさえぎって孫に算数の問題を出すほど、頭がクリアで、ボケとは縁がない。そのせいもあろう、息子より長生きする。

息子直之は幼少の頃から母方の祖父を「与三八」と呼び捨てにする。これがまた変わった名前だから、始めは何を言っているのか分からなかった。自分より身分が下だからだろうが、江戸時代の身分制度の厳格さを思い知らされる。

主役を演じる堺雅人は爽やかさが印象的な人だが、どんな修羅場にあってもいつもと同じく爽やかな笑みを湛えているのには驚いた。個人的にはこんな人とは友達になりたくないかも。
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映画「おくりびと」

2011-01-13 14:49:14 | 映画
先日TV で、映画「おくりびと」を観た(監督:滝田洋二郎)。(ネタバレあり!これから見るかもという方は読まないで下さい)

チェロ奏者の大悟(本木雅弘)は、属していたオケが解散し失職。妻と共に故郷に戻り、求人広告を手に「NKエージェント」という会社を訪れるが、・・。

とりあえずつっこみたい所あり。
主人公はプロのチェリストだが、彼がローンを組んで買ったチェロの値段が1800万円というのは高過ぎるのでは?彼は自分のチェロの腕前がそれほどでもないことをよく自覚しており、属している小さなプロオケはいつも客の入りが悪く、当時から財政的に厳しくその運営は風前のともしびだったのだから、そんな無謀な買い物をするのはおかしい。せいぜい500万か600万という所では?故郷に帰って納棺師になるための動機づけとして「莫大な借金」を強調したかったのは分かるけど。

タコを釣ったから、と人から生きたタコをもらったり、鳥鍋だからとトサカのついた鶏の頭を皿に盛って食卓に出すようなことが、日本では日常的な風景なのだろうか。何か外国人の誤解を招くのでは?

気持ち悪くなって吐いている時に妻にやさしく介抱してもらったからってソノ気になるだろうか。何だか不自然で、見ているこっちが気持ち悪くなった。

納棺師が主人公だから当然のことだが、葬儀のシーンの連続で、嘆き悲しむ遺族の姿をカメラがとらえ続け、観客はそれをずっと見なければならない。見てはいけないものを見ているようないやな気分になる。普通そんなところにカメラは決して入らないのだから。

しかし、これらの疑問にもかかわらず、最後は感動を覚えた。
この人が納棺師になったのは、顔も覚えていない、憎しみの対象だった父との再会と和解のためだった、と言えるだろう。人生には、いつかは決着をつけなければならない宿題があるのかも知れない。そこに向かって人は我知らず導かれてゆく・・・。
脚本も描き方も薄っぺらだけど、たまにこういうことがあるものです。



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つまらない映画の必須条件

2009-11-05 15:48:20 | 映画
先日TVで或る映画を観たが、そのあまりのつまらなさに驚いた。だがその映画は面白いと大きく宣伝されていたのだ。そこで今回は趣向を変えて、その作品の欠点を挙げ、せめて憂さを晴らそうと思う。

① まず第一にテンポがのろい。イライラして体に悪い。

② 音楽のセンスなし。肝心な所で入るが、音がでか過ぎてかえって邪魔。かつ意図が見え見えでしらける。

③女が描けていない(男もだが・・・)。主人公はとても医者とは思えないほどおっとりしていて、深窓の令嬢か大学生、いや高校生のようだ。だから設定自体が そらぞらしく感じられ、感情移入が難しい。
 
・・・この辺で、既にご覧になった方はどの映画のことかお分かりだと思う・・・

④ ミステリーなのに謎解きの面白さがない。

⑤ 動機なき殺人には特に説得力が必要だが、それも足りない。

結論:見て損した。時間返して。

教訓:映画の宣伝を鵜呑みにするな。

コメント (3)
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映画「ダウト」

2009-03-12 14:43:01 | 映画
 先日、映画「ダウト」(監督ジョン・パトリック・シャンリー)を観た。トニー賞とピューリツァー賞をダブル受賞した監督自身の戯曲を映画化した作品だ。
 「2008年に観た芝居」のベスト10に入れたように、昨年4月文学座がこの芝居をやったのを観ていたお陰で、今回その映画化作品を見ながら、まさに至福の時を過ごすことができた。舞台劇が骨格だとすると、それに肉付けされてゆくのを観る喜びだ。

 冒頭、日曜のミサに集まる人々、そしてその準備に当たる人々。パイプオルガンは2階後方にあり、オルガニストは講壇(カトリックだから祭壇と言うのだろうか)の方が見えるように鏡の角度を調整する。
 そして神父の説教。いきなりdoubtについて。この最初のシーンから最後まで、このテーマが一貫している。
 ケネディ大統領暗殺の翌年であることが示され、その一言で時代が見事に設定される。

 主役M・ストリープの登場のさせ方がうまい。こういうところこそ映画ならではで、観客の心をときめかせ、いやが上にも期待が高まる。
 detailもしっかり描かれている。季節の変化も。

 ラスト、クリスマスの讃美歌が流れる中、思いがけないシスターの言葉。ここをどう解釈するか、意見が分かれるかも知れない。
私は、正義のためとは言え、犯してしまった自分の罪を悲しみ嘆く気持ち、心の平安を得ることのできない自分の性格を厭う気持ち、と取った。
シスターでありながら信仰が揺らいでいる(つまり神へのdoubtを抱いている)とまで取るのはちょっと頷けない。

 シャンリー監督は劇作家だが、映画の文法を熟知している。だからこそ至福の時を堪能することができた。


 
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