うーーーーーーーーーーーーん。 暇。 気のせいかもしれないけど、あと3時間30分はあることは確かだ。 カンヌはもう過ぎた? まだか。
手元にあった紙の隅を正方形に破る。
手が勝手にうごく。 大げさにいえば、鶴しか折れない。 だから鶴を折る。
ニース~リヨン間は、TGV(フランスの新幹線)を使っても4時間かかる。 特に地中海沿いを走るときは、在来線と同じ線路に入るから、早く走れないのも無理はない。 青い海を電車の中から眺めるのも悪くはないが、しょっちゅう海が見えるわけではないし、、暇な時間というのは存在する。 暇なとき、以前、前に座っていた子供と一緒にお絵かきしたこともある。その時は、その子の母親が携帯で話しをするのに夢中で、子供が暇をもてあましていたので、暇人同士、ということで、その子と象さんや、鳥さんやらを描いて遊んでいた。
今回は、有り余った集中力を使っているうちに時間も過ぎていくかなと思って、紙で鶴を黙々と折り始めることにした。
・・・・・・ ん。・・・・と。 ・・・・・・・・よし。
もう、1つ折り終わっちゃったよ。
・・・・・・と、何かの視線を感じたので、そっと肩越しに後ろを振り返った。
ビクっ。
私の真後ろの席に座っていた小学生くらいの女の子が、椅子と椅子の間から私の方を見ている。
『・・・Tu en veux ? Voilà, C'est un oiseau. (いる? トリだけど。)』
女の子は躊躇なく、隙間から手を伸ばし、うれしそうに 鶴を受け取った。
再び、鶴を折っていると、後ろから誰かが私の肩をたたく。
『 アタシ、あと2人兄弟がいるんだけど、その分もつくって。』 と、女の子。
なんじゃそりゃ。
『 Ok。 ちょっと待って。』 シャカシャカと2つ折り、女の子に渡した。
鶴の量産状態だな。
次に1cm四方の紙を切り、ミニ鶴を折る。 私の横に座っていたおばさんも、いつの間にかクロスワードを解く手を休め、私の手元を見ている。 通路はさんだ横の子供も私のことを見ていたようで、鶴が出来上がったのと同時くらいにめざとく『それちょうだい。』と手をのばしてきた。
『はい。』 私がその子にあげると、とうとう横のおばさんは、私に言った。
『ワタシにも作ってくれる?』 いいですよ。 ・・・・・ 暇ですから。
今度は4羽のシッポの部分がくっついた鶴をつくることにした。3cm×3cmに紙を切り、さらに、シッポが離れない状態になる紙の中央部分を残し4つの部分に切り込みを入れる。
シッポがつながった4羽の鶴ができあがった。 持っていたソーイングセットの糸を切り、真中にくくりつけ、鶴のモビールにしてみた。
はい、とおばさんに渡そうとすると、横から子供が『ちょうだい☆』の声。
『 だめよ。ワタシの分なんだから。』と、おばさん。 こんな鶴のために子供を制しないでおくれ。
シッポがくっついた4羽の鶴は、なかなかすごいものに見えるようで、そのあとも、私はさらに2つ、モビール鶴をつくることになった。---- 【手仕事日本】。
どんどんワザが難しくなる【中国雑技団】みたいだ。 私。
けど、とりあえずこれで、45分の暇つぶしができたことは確かだ。![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/fukis_z.gif)