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風の谷のナウシカ


宮崎駿      徳間書店

「風の谷のナウシカ」というと、多くの人がアニメを思い起こすだろう。アニメも確かに名作だが、原作の漫画も非常に優れたSF漫画だ。
 漫画は全部で7巻。アニメはこのうちの2巻目までを映画化したもの。だから、原作は大変に長大な物語だ。読み応えがあり、読了後にズンと重みを感じる。
 巨大産業文明滅亡後1000年、腐海と呼ばれる濃い瘴気が立ちこめる地域が広がり、巨大な蟲(むし)が跋扈する世界は、居住可能な土地で、人々は細々と生きていた。その世界でトルメキア戦役が勃発。トルメキアと土鬼(ドルク)の泥沼の戦争が果てしなく続く。その戦役の重要なキーを握ったのが、トルメキアの属国風の谷の族長の娘ナウシカ。
 漫画はアニメより、より叙事詩的でエコロジカルなテーマが色濃く出ている。もちろん登場するキャラも多く、しかもみんな魅力的だ。トルメキアの王女クシャナはアニメでは悪役になっているが、漫画ではナウシカの良き理解者となっている。一番違うのが巨神兵。アニメではたんなる巨大兵器だが、漫画では後半のテーマに大きく関わる重要なキャラ。しかも、ナウシカは巨神兵の母となる。
 文明批評はSFの大きなテーマだが、そのテーマを真正面から描いた、メッセージ性豊かでなおかつ、物語を読む喜びを感じさせる非常に優れたSFだ。
 
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