走る営業公務員、奮闘記!!

地方分権が進展する中での地方からみた木っ端役人の奮闘記です。

誰でも、誰かを支えてる。

2010年06月14日 21時34分30秒 | ちょっといい話
 ある大企業の人事担当部長の話。

 その部長は、リストラ担当部長で、組織のためと思ったら非情と言われようとリストラを断行したといいます。
ときには下請け企業にもリストラについて口出しをしていたというのです。
彼は、その行動を正しいと信じ、なんの迷いもなかったというのです。

 それが、あることからリストラが会社にとって決していいことではないと経営者の幹部たちに進言し、説き伏せたというのです。
 そして、リストラから苦しくとも社員を大切にする会社に生まれ変わってから、その企業の業績は上向きになったというのです。

 その出来事とは、ある社員の話です。
彼は真面目で、確実に仕事をこなすのですが、スピードが遅い。
人事異動のシーズンになると必ずと言ってもいいほど、名前が挙がるが社内でも有名で、どの部署からも敬遠されることはあっても取り手がみつからないというタイプでした。
結局、毎年、現状維持というとになります。
思い余った部長は、リストラのリストに彼の名前を書き込んだそうです。

 そして、それを内示する直前に行われた社内運動会に出たときのことです。
お昼休みに、その社員が家族とお弁当を広げて食べていました。
彼は、部長に気づかない様子でした。
好奇心で気づかれないよう傍に近づいていき、家族の会話を盗み聞きしたそうです。
勝手に、会社で信頼されていない彼が、家庭でも同様なのだろうと思ったからです。

子どもの声が聞こえてきました。
「今日は本当に楽しいね」
すると奥さんが
「そうよ、これもパパのおかげよ。
 パパがこんな大きな会社に勤めてくれて、毎日がんばってくれているおかげよ。
 みんなで、パパにお礼を言いましょう」と言ったそうです。
子どもたちは声をそろえて
「パパ、ありがとう!!」
続けて
「そして、パパを雇ってくれている会社にもお礼を言いましょう」
「うん、パパを雇ってくれてありがとう!!」

それを聴いた部長は、思わず植木に身を隠して声を押し殺して泣いたというのです。
例え仕事場で支えられる側であったとしても、家庭では家族を支える人であるんだと。
そのことに気づいてから、その部長は人が変った様にさまざまな部署に出向き、さまざまな人に声をかけていくようになったというのです。

 私も去年、ある組織の統合を経験しました。
その中で事務事業の見直しをすることになりました。
主管課には、何割かの業務を引き取って欲しいという話が持ち込まれました。
私はこのことに頑(かたく)なに「引き取れない」と反発しました。
 何度も担当課長と担当者が足を運んでくれましたが、答えはいっしょでした。
 部下たちの中には心配して、「私たちのことを思っているなら、私たちもがんばりますから引き取りませんか」と言う者まで出てきました。
 何回目かの時、担当者のプロパー職員が「課長さんらしくありませんね。課長さんは、仕事に対して常に前向きに取り組まれるという話を聴いていましたが、矛盾していませんか?」
「はい、どう思われようが結構です」
それを聴くと彼は顔をあからさまにそむけるようになりました。

後日、その担当課長さんが一人で見えられ、「らしくないなあ~」と言うのです。
私は、憤りました。
「あなたは本当に部下のことを考えていますか?」
「考えますよ。あなたなんかよりはるかに」
「そうですか、わかりました。ではすべての仕事を引き取りましょう」
「わかってくれましたか」
「わかりましたが、そうなるとプロパー職員はどこに配置されるのですか?
 この職場には席はありませんよ。
 それよりも新しい組織で仕事がないのに、どう雇うのですか?
 すべてクビにできるんですか?
 その人たちの家族はどうなるんですか?」
私は、つい声を荒げてしまいました。
相手は、真っ赤な顔をしてうつむいたままでした。
そして、彼は前言を撤回し、自分たちで引き続いてほとんどの業務を行うことになりました。

 そのやり取りを聴いたのでしょうか。
 どのプロパー職員も、私に挨拶をしてくれるようになりました。
 私は、組織人としては失格です。

 でも人を大事にしない組織に未来があるとは、私は思わない。