<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
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新車を買うと、新車の匂いというのがやけに印象的で、この香りを嗅ぎたいがために新車を買い求める人がいるという。
私は生涯で一度だけしか新車を買ったことがないが、確かに工場出荷したての独特の香りはたまらないものがある。
「おおおおお~。ついに買ったで~~」
という満足感と、誰にも触られていないという、独占欲が満たされる。
それはある意味新築の家に入るよりも満足感があり、ワクワクする。

飛行機はどうなのだろうか。

これまでも時々、見るからに真新しい機体の飛行機に出会うことが何度かあった。
シンガポール航空のB777-200。
エアーニッポンのB737-800。
ピーチエアのA320。
どれもこれもインテリアのプラスチック部分が妙に明るく、しかも清潔。
なんとなく「しんぴ~~~ん!」という香りも漂っていた。

これとは反対に古い飛行機も独特の雰囲気があった。
タイ航空のA300。
エアーバガンのHopper100。
座席に封をされた灰皿が付いていて、ところどこに凹みがある。
窓は細かい擦り傷がたっぷりついて、すりガラスみたいになっている。
なかなか味がある。
とりわけエアマンダレーのデ・ハビラント・カナダのDHC-8型機は座った席の足下の壁面が「ボコッ」と凹んでいて、
「んんんー、大丈夫か、この飛行機は」
と離陸前から心配になるものであったが、
「プロペラ機だから万が一でも助かる確率は高いはず」
と訳の分からない言い聞かせを自分自身の中で展開し、旅行したものであった。

さてさて。
最新のB787-8はというと......。

当然ながら新品のB777-200に乗った時と似たような空気を感じたのであった。
いや、それよりもなんとなく違った雰囲気がある。
なんだろ.....と思いながら通路を歩いた。
機内はほとんど満席だった。
B767と似たような中型機でありながら、なんとなくB777ぐらいの広さを感じる。
でも、なにか違うぞ、と思ったのであった。

やがて自分の席を発見し、腰をかけた。
窓際なのでさっそくシートベルトをして、窓の外を見た。
その瞬間、目の前に広がる景色を見て、ものすごく新鮮な空気を感じることとなった。
視界が広い。
ものすごく広いのだった。
従来の飛行機の1.6倍あるというB787の窓は縦長丸の形をしているのだが、地上から空まで、窓に顔を近づけずに普通に座ったままの姿勢で眺めることができる。
新幹線の窓が0系からN700系に至る過程でだんだんと小さくなってきたのとは正反対に、B787の窓は、戦後すぐのころに就航した旅客機の一部機種を除いて、従来よりも大きくなっているのだ。

思わず事前に用意していたコンデジを取り出し、シャッターを押した。
窓が大きいので、全体を入れようとすると、思いっきりシートにのけぞらなければフレームに収まりきれない。
なんとも嬉しい苦労なのだ。
シャッターを押してから周囲を見渡す。
するとなんと、反対側の窓からもはっきりと外の景色が見えるではないか。
人が邪魔してなかなか見えない反対側、ではなく、電車の窓のように反対側の座席の窓からも景色が見える。

飛行機の中が広いだけではない、何かを感じたというのは、この広い窓による密室感の大きな緩和にあったことに気づいた瞬間であった。

つづく

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