<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
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久しく映画館に通っていなかったので、せめてビデオでも。
ということで、久々にプレーヤーにかけたのは2003年作の「オーシャン・オブ・ファイヤー」。
実在の人物と実際にあった話を下敷きにした冒険物語だ。

まず結論から言うと、かなり面白い。

スリルとスピード感。
剣劇。
男の孤独。
愛馬。
砂漠の過酷だが、美しい大自然の風景。

映画の重要な要素が数多く詰まっているのだ。

アメリカのカウボーイがイスラム教徒と競り合う大冒険ホースレースはドイツの冒険小説作家カール・マイの作品を彷彿させるものがある。
イスラム教徒が何らかの競争に登場すると、必ず出てくるのは「アラーの思し召しだ」のセリフ。
勝者も敗者も、勝負を決定するのは競技者本人ではなく、アラー。
唯一神の思し召しなのだという。

このセリフが登場すると私はひしひしと異文化を感じる。
アラーへ帰依するイスラム教徒の信仰心を理解することは、私たち日本人にはなかなか難しいことだ。
なぜ、全てがアラーの成せる技なのか。
全能って何?

異文化というよりも異質なものを内蔵しているイスラム教徒の中で1人、私たちにとってノーマルなのがアメリカ人の主人公だ。
ノーマルな人がアメリカ人というのも、考えてみれば凄いことだが、この主人公はインディアン(ネイティブアメリカン)血が流れているというのが、ひとつの救いになっていて、つまりインディアンというアメリカ大陸に於ける馬の民と、アラビア半島に於ける馬の民の戦いという構図が本作の骨格であり、また面白みでもあるのだ。

そしてこの映画のもう一つの魅力が主人公の馬。
本作品の原題である「HIDALGO」は馬の名前なのだ。

このHIDALGOというアメリカ産の野生馬は、頭が良く、それでいてユーモアに溢れ、頼もしい相棒なのだ。
時として昔のテレビ番組「ミスターエド」のふざけた「話す馬」を思い起こさせるシーンがあるけれども、違和感はまったくなく、ごく自然で、見ているうちに自分もあの馬が欲しくなってくるのだ。
それも愛馬、というよりも相棒という感じでいとおしくなってくる。

2時間を越える少しばかり長い映画だが、その時間を忘れさせる魅力溢れる作品だ。
なお、最近めったに見ることのない美しい撮影は、是非、ブルーレイで見たいものだ、とも思ったのだった。

~「オーシャン・オブ・ファイヤー」原題:HIDALGO 2003年 ブエナビスタ配給~

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