平ねぎ数理工学研究所ブログ

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伝統的日本家屋の耐震性能は世界最低

2024-05-21 10:57:11 | 耐震構造

重い瓦屋根と梁と柱だけで構成された伝統的日本家屋の耐震性能は「世界最低」と言っても過言ではありません。
日本人は、地球上で最も地震の多い国に住んでいるにもかかわらず、世界一耐震性能に劣る家屋を使い続けてきました。
この( ↓ )画像は能登半島地震で倒壊した伝統的日本家屋です。


大曲駒村は「東京灰塵記」の中で関東地震のときの惨事を綴っていますが、関東地震から100年経っても、同じことが繰り返されています。
日本人はいつになったら目覚めるのでしょうか。

杉山英男:木造の家は地震に強いか、BLUE BACKS、講談社、1985、より


伝統的日本家屋の特徴は、①重い瓦屋根、②柱と梁だけで構成された骨組み、です。
耐震性を向上させるには、この二つを改善すればよいのです。じつに簡単です。
①は瓦をやめてガルバリウム鋼板などの軽量屋根材を用いる、②は筋かいや耐力壁を設ける、これだけでOKです。

柱と梁からなる骨組みはラーメン構造と呼ばれます。
ラーメン構造の要は、柱と梁の接合部です。
完全なラーメン構造では、柱と梁の接合部は剛になっています。
接合部が剛とは、荷重が作用してラーメン構造が変形した後も、柱と梁の角度が変わらないことをいいます。

伝統的日本家屋は不完全なラーメン構造です(次図)。
大きな水平荷重が作用すると、接合部の木材が潰れたりめり込んだりして、柱と梁の角度が変わってしまいます。
柱と梁だけで構成される伝統的日本家屋はラーメン構造としては不完全であり、建っているだけで精一杯の構造物です。

木造家屋の耐震化の研究に力を注いだ田辺平学は耐震建築問答(1933)の中でつぎのように述べています。




田辺平学は、和風木造における望ましい筋かいの入れ方として次図を示しています。




大工たちの作る和風木造には筋かいが入っていないし柱と梁を緊結する金物など全く使われていない時代に、
図のような現在に通ずる構法が提案されていました。
そして現在の木造技術は、田辺平学の教えを忠実に受け継ぎ実践しているのです。
田辺平学の提案に基づいて建てられた木造家屋は能登半島地震の際にもほとんど被害を受けていません。

 

追記 2024-05-21 14:31:53

明治初期に日本にやってきた御雇い外国人技術者は、日本の木造家屋について、つぎのような厳しい見方をしています。

御雇い技術者たちの指摘は、現在の伝統的日本家屋にそのままあ当てはまります。

田辺平学は、「震災直後には争って、少しでも軽い屋根をと望んで建てられた建物が、その後数年を出ぬのに、早くも体裁に囚われて、
元の危険な瓦葺に返りつつある」と嘆いています。





「喉元過ぎて熱さを忘る」は、災害慣れした日本人の習性なのでしょう。


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