tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

侵入(2)

2007-09-27 20:03:37 | プチ放浪 都会編

2階の廊下に面しているドアは4つ。どれもひっそりと閉まっている。4つのドアのどれかが彼女の部屋のドアだ。徐々に彼女の匂いが強くなって来ている。一番奥の部屋のドアの前で、オレは立ち止まる。彼女の匂いが一気に強くなった。ここだ。この部屋だ。さて、どうしようか。オレはドアの前でしばらく考えた。
その時だった。廊下の電気が点灯して、オレは腰も抜かさんばかりに驚いた。だれかがやってくる。見つかる・・・・・・。
瞬間、体を隠せる場所を必死に目で探す。2階の廊下には、小さなテーブルがある。そのテーブルの下に身を潜めてかわすしかなさそうだ。階段下から上がってくる足音が聞こえてきた。スリッパをはいたパタパタ聞こえる足音はどんどん近づいてくる。階段を登りきれば、そいつの姿が現れる。そして、やってきた・・・・・・。それは彼女だった。
テーブルの下に身を潜めるオレと、入浴を終えてバスタオルを体に巻いてやってきた彼女と一瞬目が合った。しかし、彼女はオレに気がついた様子もない。そのまま、テーブルの横を通り過ぎて行く・・・・・・。
と、そのときだった。通り過ぎようとしていた彼女の足音が止まり、そして、彼女は、テーブルの下を覗き込んだ。たぶん、オレの姿を目にとめたときは錯覚だと思ったのだろうか、そして、目にとまったものの確認のためにテーブルの下を覗き込んだのだ。体に巻いたバスタオルから、彼女の形の良い足が見える。シャンプーの香りだろうか、あたりにフローラル系の香りが漂った。
のぞきこんできた彼女と目が合って、彼女の目が大きく見開かれるのをみた。その目には、まざまざと恐怖の色が浮かんでいた。
「キャーアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」

彼女のあげる悲鳴に、オレはとびあがりそうになった。心臓がバクバクしている。<ヤバイ、見つかった>
逃げだそうと、逃げ道を探すも、無事に通り抜けられそうなスペースはない。彼女の脇をすり抜けるのは不可能だった。もう、観念するしかない。

「アンタ!!また来たの!? 」 そう言って彼女はオレを抱き上げた。柔らかな髪の匂い。うっとりしそうだった。
「ミャア」 彼女の驚きの声にオレは答える。
「窓から出なよ」と彼女は、オレを抱き上げたまま彼女の部屋に入ると、窓を開けてオレを外に押し出す。ちょっと待てよ。2階のベランダからどうやって、帰れと言うのだ。
「そうはいかんにゃー」オレは抵抗する。が、あきらめるしかない。
「今日はもう帰るにゃー」とオレは言った。「また会おうにゃー」
オレは2階のベランダから決死の思いでひらりと飛び降りた。

おわり


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