彦四郎の中国生活

中国滞在記

パリ五輪日本代表:張本智和・美和、両親は中国の元プロ卓球選手❷—幼年期は卓球英才教育を受けず学業優先で育つ

2024-03-06 20:31:52 | 滞在記

 パリ五輪の卓球男子代表に内定している張本智和。2021年の東京五輪の夏に17歳で日本のエースとして大舞台にも立った張本は、卓球王国、中国の血を受け継いでいる。「プロとして卓球をやらせるつもりはなかった」という両親の教育方針とは違い、これまで数々の最年少記録を塗り替えてきた。

 2017年にはわずか13歳ながら、ドイツのデュッセルドルフで開催された世界卓球選手権大会に日本代表として出場している。(男子シングルスベスト8まで勝ち進んだ)   得点を挙げるごとに、手を固く握りしめながら、「チョレイ!」と大きな声を響かせる。2018年12月には、卓球のワールドツァー(世界のランキング上位選手で争うグランドファイナル)を15歳で制した。(15歳172日での優勝は大会史上最年少記録だった。)彼は、世界から「天才少年」「怪物」などとも称されることになる。

 張本智和と妹の張本美和の両親は、中国・四川省出身で、父親の張宇さん、母親の張凌さんとともに中国のプロ卓球選手だった。張本智和は2003年6月27日に日本で生まれ、日本と中国の生活・文化が交錯する環境で育った。2歳の時には母親から小さなラケットをもらい、卓球を始めている。ただし、両親のもとで幼少から卓球の厳しい英才教育を受けてきたわけではない。むしろ卓球界の厳しさを知る両親は、「プロとして卓球をやらせたくない」と考えていたようだ。そのため、3歳のころから英会話教室に通い、小学校時代は学習塾へ。ラケットよりも鉛筆を握った。小学校を卒業するまでは、母の意向により1日2時間以上の練習をしたことがないという。

 それでも、やはり両親の影響なのだろうか―張本自身の中にある卓球への思いは、次第に大きくなっていったようだ。集中して机に向かい、早く宿題を終わらせる理由は、大好きな卓球を1分でも長くやるためだった。勉強の成績は優秀で、学研が主催する小学校全国共通テストでは国語と算数で計4回、全国1位になったというエピソードもある。母は将来、少なくても東北大学くらいの大学に入学してほしいとの思いがあったとも伝わる。

 小学校1年生の時、全日本卓球選手権大会で、小学2年生以下を参加対象にする「バンビの部」に出場した張本は、自分の顔より大きなラケットを振り回しながら、一学年上の選手たちをに次々に勝ち優勝した。その後も同大会の様々な学年対象の部で一度も負けることなく大会6連覇を果たしている。

 張本智和の人生を大きく左右する決断が家族に迫られたのは、智和が小学4年生の時。全日本選手権で「一般の部」に出場するには日本国籍が必要だった。(それまでは智和・美和は、日本と中国の二重国籍だった。日本政府は二重国籍を原則認めていない。[黙認というか、どちらかにするために努力する義務というか、まあ、いずれにしても21歳までには選択しなければならない。] そのような国籍規定になっているため、張本智和の家族も選択を迫られた。

 いずれ中国に戻ってコーチになろうと考えていた両親にとっては複雑な心境だっただろう。(両親とも中国国籍であり、日本での在留許可を取得し続けて日本で生活していた。) だが、一生懸命に卓球と学業の両立に向き合う息子の思いを尊重することに決めた。(※この時、父だけが日本国籍取得を取得。母は中国国籍のままかと思われる。)  2014年、日本卓球界の推薦も受け、父、妹とともに智和は日本国籍を取得した。(※これにより、父は中国国籍名の「張宇」から日本国籍名の「張本宇」へと、子供たちは「張智和」「張美和」から「張本智和」「張本美和」となった。)

 2016年にはJOCエリートアカデミーに選抜され入校(父もアカデミーのコーチに招聘された)。智和は仙台から東京に上京し、アカデミーの寮に生活しながら(※4人部屋、門限は午後6時30分、就寝時刻前には携帯電話は寮の事務室に預ける規則。)、アカデミー寮に近い東京都北区立の稲付中学校に3年間通学した。そして、2016年には18歳以下で争う世界ジュニア卓球選手権において、13歳で最年少優勝を飾る。さらに2018年には14歳205日の最年少で全日本選手権初優勝を果たし、日本男子シングルスの国内チャンピオンとなった。

■張本智和—2003年、宮城県仙台市で生まれる。仙台市立東宮城野小学校に入学。2011年、小学1年の時に東日本大震災を経験(震度6・家族全員が狭いトイレ空間に身を寄せて、地震のおさまりを待つ)。中学を経て高校は、神奈川県にある「日本大学高校(偏差値64~68)」に入学(2019年4月)し3年間を過ごし、2022年3月高校卒業後の4月からは、早稲田大学人間科学部通信制課程(eスクール)に入学し、現在に至っている。(中国の人々にとっては、日本の大学と言えば、東京大学に次いで有名なのが早稲田大学[中国共産党創立者の中心的人物たちが留学]、次いで京都大学や東北大学[文学者の魯迅が留学]。)

■張本美和—2008年、仙台市で生まれる。仙台の小学校卒業後は、Tリーグの木下アビエル神奈川に在籍し、神奈川県川崎市立川島中学に通学。現在3年生でもうすぐ卒業を迎える。高校の進学先はまだ明らかにされていないが、兄と同じ高校に進学する可能性が高いとも伝わる。

■2024年2月5日、パリ五輪の卓球日本代表に張本智和・張本美和の兄妹が選出された。

 ■私が暮らす福建省福州市のアパート近くの、福建師範大学の体育館で、親子が卓球をしている光景を見ることも多い。30個余りの卓球の玉を、連続して(矢継ぎ早に)親が子に打ち、それを子がひたすら打ち返すという光景だ。中国で一般の人(小中高生なども)がよくやっている(楽しんでいる)スポーツとして、バトミントン・バスケットボール、そして卓球がある。

 

 


コメントを投稿