福建省と台湾、そして沖縄との関係は密接なつながり(交流)をもちながら歴史的に歩んできた。3つの地域ともに、海の民でもあった(東シナ海・台湾海峡・南シナ海・太平洋) 。 台湾海峡を挟んで、福建省と台湾には「媽祖(まそ)」という、海をゆく船人の守護をしてくれる女神を祀る「天宮」がかなり多い。その聖地ともいわれている島がある。福建省の福州に近い「馬祖島」と厦門(アモイ)や泉州に近い「金門島」である。福建省と台湾は、信仰的な面での歴史的な結びつきも強い。
最近新しくできた、アパートからまあまあ近い「天宮」に、先週の日曜日に初めて行ってみた。内部に入って「媽祖の像」の前でたたずんでいると、「天宮」の管理をしているおじさんが近づいてきたので、「日本から来ています。今は、ここ福州で仕事をしています」と言ったら、「よく来てくれました」と握手を求められた。寒い氷雨の日だったが気持ちが暖かくなる。
1月30日(火)、私が担当していた前期期末試験の最終日となった。夕方、アパートに戻るバスの中、大きな画材をもった女子学生(高校3年生:「大学美術学部の大学実技試験」に来ている。美術実技試験はこの時期にある。)が二人乗ってきた。荷物をバス内の狭い通路に置いている。完全に通路を塞いでしまった。次のバス停、そしてまた次のバス停で新たな乗客が乗ってきて、通路を通って後ろにいこうとするが、荷物を動かして通路を通りやすくしようという配慮は一切しない。ひたすら携帯電話の操作をしている。乗り込んできた乗客は、それを自ら動かして、文句も言わずに通って行く。「他人に配慮しない」という中国人の基本スタンスそのままだった。
中国という国が、他国に対して展開している「外交」。この中国人の国民性というものが大いに関係しているように思う。(※こんな人たちばかりではありません。他人に対する配慮がよくできる人もいます。しかし、おおむね、他者には冷淡、配慮しない傾向は強いようです。) 福建師範大学(倉山キャンパス)前でバスを下車し、正門前にあるパン屋に向かう。横断歩道には、たくさんの屋台が所狭しと並んでいて、横断歩道中に狭い通路だけ開けられていた。地方から出稼ぎに来ている人が中国には約3億人がいるようだが、みんな生きるために少しでも足しになるように、小さな商売をしている人も多い。
―最近の、中国や日本の報道記事で、気になったものより❶—
①河野外相の訪中―李克強首相や王毅外交部長との会談―
1月下旬に河野外相が訪中し、李首相や王毅氏と会談をおこなった。この2人との会談では、いつもは高飛車な物言いをする王毅氏だが、今回は、最近起きた「中国の潜水艦が尖閣諸島に接近した問題」に対する河野外相の抗議に対して、そのような高飛車な反論態度はなかったことが話題になった。また、「日中韓3か国首脳会談を今年の春に日本で開催したい」という河野外相の要請に、李首相は「3月以降に実現となるように前向きに考えたい」との回答があったと伝えられる。
なぜ、このように中国側の態度が日本との外交関係に配慮を見せ始めたのだろうか?本格的な「日中関係の改善は始まる」のだろうか?配慮を見せ始めた中国側の事情・思惑とは何か? まず考えられるのは「1、一帯一路への日本の参加を熱望している事情がある。」一帯一路は、中国の財政的にも世界の信用度からも 暗礁に乗り上げながら、ひたすら船の船体を傷つけながら無理矢理に海を航行しているさまにも見える政策実施の現実がある。日本やアメリカの参加なくして、その成功はかなり難しい。中国の人々もこの「一帯一路」に対しては、そんなに信用をしていないと言われている。この巨大な国策プロジェクトが完全な大きな暗礁に乗り上げて航行が難しくなれば、習近平政権の崩壊につながりかねない。日本の参加を熱望しているゆえんである。
次に「2、アメリカのトランプ政権の対中国政策が強硬になる可能性もあり、とりあえず日本との緊張関係の高まりを少なくしたい」という思惑もあるのだろう。そして、「3、おそらく2022年までに起きるだろう、台湾統合の問題(軍事衝突の可能性もある)」も絡んでいる。(※これについては、次号でもう少し詳しく述べたい) 本格的な「日中関係」の改善はとても難しい問題で、中国共産党の「反日」という基本政策は、中国共産党の正当性や政権の存続のためにも変更はまず これから少なくても10年間ほどはまずないと思われる。(※残念なことだが)
②―「無印良品」などの中国にある外国企業に対する政治的恫喝の問題―
1月下旬に、中国で展開する外国系企業に対して「会社のパンフレットにおいて、尖閣列島や台湾などの表記に間違いがあったり、島が書かれていないので、訂正や廃棄、そして謝罪や罰金を求める」という中国当局の発表が報道された。日本の「無印良品」なども対象にあげられた。無印のパンフに掲載されていた地図は「世界各国での店舗展開を紹介するための簡単な地図」だったようだ。
このような世界地図の場合、普通は日本の淡路島や佐渡島も書かない。ましてや、尖閣諸島は小さ過ぎて書かないのがあたりまえだと思うのだが、完全な「ヤクザのいちゃもん」と同じ外交姿勢にはあきれてものも言えない。これに対しては、日本政府の菅官房長官が、「尖閣列島は日本固有の領土」との反論はしていたが、反論内容としては「このような中国のヤクザ的な外交姿勢」に対しても反論すべきかと思う。「人のちよっとした弱みをあげつらって高飛車になる」のも中国人の傾向としては まま目にすることだ。
③―「ナミヤ雑貨店の奇跡(東野圭吾原作)」の映画と「北朝鮮楽団団長・玄松月氏」のことなど―
東野圭吾の本は、中国の書店では「平積み」にされていたり、特別コーナーを設置されて置かれていることが多い。おそらく、ここ4〜5年間、中国で最もたくさんの読者を得ている外国人作家である。『ナミヤ雑貨店の奇跡』が最近、中国で制作されヒットした。現在では、インターネットでも映画を見ることができる。主演は二人、「ジャッキー・チェン」が雑貨店のおじいさん役、中国の人気アイドルグループ・「TF BOYS」のリードボーカルである「ワン・ジュンカイ」が少年役として演じている。
平昌(ピョンチャン)オリンピックの開幕が間近だが、日本のテレビ報道でも大きく注目されていたのが、「北朝鮮の美女軍団」のこと。韓国を視察に訪れた「玄松月(ヒョン・ソンウル)」のことが中国のインターネット記事にも見られた。中国でもそれなりに彼女は注目されているようだ。現在は北朝鮮の管弦楽団の団長をしているようだが、中国のインターネット記事の見出しは「玄松月赴韓 手握重権的 她是金正恩"情人"?」となっていた。彼女が権力をもっているのは「金正恩の愛人だからなのか?」という意味である。彼女は「40才前後で、北朝鮮の美人で著名な歌手」でもあると紹介されていた。
④―「中国の春節(旧正月)が間近」―
これもインターネット記事だが、見出しは「中国国産空母 航母終于迎来大動作、給全人民送上新春大礼!」となっている。中国遼寧省の大連で造船されている「中国国産初の空母が進水した。新春(春節)を迎える中国人民にこの進水の喜びを送る」という意味となる。世界一流の軍事大国となるために、着々と軍備を増強している中国。