彦四郎の中国生活

中国滞在記

最近の、気になる中国の報道記事より❸—2020年前後、台湾海峡緊張の予測

2018-02-06 08:00:07 | 滞在記

 1997年、99年間の租借期間が終わって香港は中国に返還された。この当時の中国共産党の総書記・国家主席は江沢民氏だった。そして、この年、永らく中国の最高指導者として君臨していた鄧小平氏が亡くなった。92才であった。返還の時に「一国二制度(一国両制)―社会主義政策を将来50年<2047年まで>にわたって、香港で実施しないことを約束した」を中国側も発表した。しかし、このことが反古(ほご)にされっっあることは、2012年の習近平政権発足後は顕著である。

 1960年にアメリカ大統領のアイゼンハワーが台湾を訪問した。朝鮮戦争後の1950年代の中頃から、アメリカは「台湾重視」の政策へと転換した。そして、1996年、第二次「台湾危機」が勃発した。中国は台湾に向け、ミサイル発射の準備等を整えたが、アメリカの空母群による台湾海峡封鎖という対抗措置に、「台湾侵攻」を断念せざるを得なかった。鄧小平としても、「自分か死ぬまでにぜひ実現したかった台湾統一」だった。彼は、毛沢東を超える中国の英雄とはなれなかった瞬間だった。しかし、香港返還は実現できた。

「香港返還」は「99年間の租借期間が決まっていた」ので、そんなに難事業ではなかったのかもしれない。台湾の統一は、現在、「香港返還」の数倍もの難事業であり、中国共産党政権にとっては歴史的な悲願である。これを成し遂げた者は、毛沢東と並ぶ、または超えるかもしれない(1950年代、毛沢東は台湾進攻に失敗した―第一次台湾危機)中国共産党の大英雄となれる、大事業であるようだ。2005年、中国共産党政権は「反分裂国家法」というものを制定した。これは、国内の民主化運動や人権運動はもとより、「中国共産党一党独裁」に反対する者に対する拘束を含むあらゆる行動(※台湾に住む台湾人の台湾独立なども)に対して厳しく処罰するという法律であった。

 2017年(昨年)10月に開催された第19回中国共産党大会における習近平主席の3時間以上にのぼる基調演説の中で、繰り返し言及したのは「中国の夢」であり「祖国統一」であった。祖国統一とは「まずは台湾と中国本土との統一事業」に他ならない。この党大会で、習氏は後継となる指導者を「チャイナセブン」から排除した。2022年に開催される第20回中国共産党大会以降も、ここ30年間あまりの慣例(総書記の任期は2期10年間までとする―権力の過度の集中を防ぎ、個人崇拝に陥った歴史の反省より)に沿わない方向性を鮮烈にアピールし始めたとみられている。2022年以降も政権の中心として君臨する意向が読み取れる。中国国家主席でもある習近平氏は、中国共産党党主席(かって毛沢東氏がそうだった―定年がなく、自分がやめると言わないかぎり、または死なない限り中国の最高権力者として存在し続けることができる。)の復活も考えているとの報道もある。

 これに対する国内の反対を黙らせるのに最も必要な事業が「台湾の統一」事業である。これができれば、仮に「一帯一路」政策が行詰まってもチャラにできる、批判にさらされないとの読みもあるようだ。そのために、軍備増強も急いでいる。アメリカによる台湾海峡封鎖による妨害をさせないためのものでもある。2020年に行われる「台湾総統選挙」の情況・結果次第では、台湾への武力侵攻も辞さずという構えをとりっっあるようだ。

 このために、今年に入り、インターネットやテレビ報道などで、中国国内及び台湾での世論造成・操作が本格的に始まったとみることができる。鄧小平氏を超え、毛沢東と並ぶ、または超える存在を目指す習近平氏の野望がかなり露骨になってきている。2020年~2021年は、「台湾海峡緊張」または「侵攻」の確率が高まってくるという今日の台湾を巡る情勢である。習近平氏にとって、なんとしても第20回党大会が開催される2022年までには成し遂げなければならないことでもある。

 最近の中国のさまざまなインターネット及びテレビ報道では、台湾総統の「蔡英文」氏への批判記事が非常に突出し始めてきている。「反分裂国家法」の大罪として、蔡氏を拘束しているような写真もインターネット上で見ることができる。

 中国には「五毛党」というものが存在する。インターネットの書き込みで「中国共産党政権」の主張に同調する書き込みをする人たちの存在である。これを「五毛党」と呼ぶ。その人数は推定1025万人にも上るとされる。1回の書き込みで「5毛[角](0.5元)」(約10円)が政府関係の機関より支払われる。現在では1元(約20円)に値上げられたようだ。1日100回の書き込みをしたら100元となり、1カ月では3000元となる。中国の大学生なども、かなりいい小遣い稼ぎとしてやっている者もかなり多いようだ。まあ、このようにして「世論形成」を中国共産党は計っている。インターネットの書き込みを見ていると、政権に対する批判というものは一切見ることはできない。