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「部分意匠」の図面記載のガイドライン (18.5.24)

2006-05-24 07:43:12 | Weblog
第9章 「部分意匠」の図面記載のガイドライン

1.提出する図について
 立体を表す場合は、「意匠登録を受けようとする部分」と「その他の部分」を含む創作のベースとなった物品全体について、様式6備考8の規定に基づき、原則、正投影図法により作成した「6面図」が必要になります。

 ただし、等角投影図法または斜投影図法により作成した図を記載したときは、様式6備考9の規定に基づき、その図に対応した正投影図法による三図またはその一部を省略することができます。

 平面的なものを表す場合は、表面図及び裏面図による一組の図面が必要になります。

 なお、創作のベースとなった物品全体について表現する必要があり、「意匠登録を受けようとする部分」が表れない面についても省略は認められませんので、必ず記載してください。

2.「意匠登録を受けようとする部分」の特定方法について
 「意匠登録を受けようとする部分」の特定方法について様式6備考11では、原則正投影図法による「6面図」において、「意匠登録を受けようとする部分を実線で描き、その他の部分を破線で描く等により、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を特定」することとされています。

 「意匠登録を受けようとする部分」の特定方法としては、上記備考に記載されているように「意匠登録を受けようとする部分」を実線で描き、「その他の部分」を破線で描く方法が一般的です。

 そこで、実線及び破線による特定方法での図面の記載について説明します。

(1)「6面図」の記載方法
 立体において、上部直方体部分について部分意匠として意匠登録を受けようとする場合には、「意匠登録を受けようとする部分」を実線で描き、「その他の部分」を破線で描き分けることにより、「意匠登録を受けようとする部分」を特定します。

(2)【断面図】の記載方法
① 立体表面の凹凸を表すための【断面図】
 【断面図】は、一般に「6面図」だけでは、意匠を十分表現することができないときに加えるものですが、部分意匠の【断面図】も例外ではありません。

② 「意匠登録を受けようとする部分」を特定するための【断面図】
 「意匠登録を受けようとする部分」を特定するにあたっては、「6面図」において特定することが原則(様式6備11)ですが、「6面図」だけでは特定できない場合もあります。
 その場合は、例外として【断面図】を加え特定できることとしています。

(3)特定方法として適当ではない事例
 様式6備考11の規定上、「意匠登録を受けようとする部分」は「一組の図面」において特定し、かつ、様式6備考11の規定に基づき、願書の【意匠の説明】の欄に当該部分が図面上どのような方法で特定しているのかについての記載が必要なことから、次に挙げるような特定方法は適当ではありません。

(a)「一組の図面」上で特定するための記載がなく、願書の【意匠の説明】の欄の文章による記載のみで「意匠登録を受けようとする部分」を特定する方法
(b)「一組の図面」以外の図面、例えば【参考図】等により「意匠登録を受けようとする部分」を特定する方法
(c)「一組の図面」において「意匠登録を受けようとする部分」に意匠を構成しないものを記載する(例えば、薄墨を施したり、斜線等を引く)ことにより、「意匠登録を受けようとする部分」を特定する方法
(d)指示線等により「意匠登録を受けようとする部分」を特定する方法

3.「意匠登録を受けようとする部分」と「その他の部分」の境界について
 様式6備考11に基づき、例えば、「意匠登録を受けようとする部分」と「その他の部分」とを実線と破線で描き分けたり、その両者の境界が明確になれば、「意匠登録を受けようとする部分」を特定することができます。

 逆に、境界が明確でない場合は、当該部分が特定されず、意匠が具体的でないために意匠登録を受けられない原因となりますので、境界を明確にすることが重要です。

4.部分意匠の中間省略について
「極めて長い部分を有する物品」の部分について意匠登録を受けようとする場合、「意匠登録を受けようとする部分」はもちろん、「その他の部分」についても、基本的に通常の意匠と同様に電源コード等の中間部分の記載を省略することができます。

5.部分意匠の【部分拡大図】について
 部分意匠の場合も、通常の意匠と同様に「6面図」のみでは細部を十分に表せないときには、【部分拡大図】を提出します。


6.【操作部等を説明する参考図】等について
 部分意匠の出願において、全体意匠と特に異なる点は、「意匠登録を受けようとする部分」の用途及び機能を出願当初に明確にしなければならない点です。

 当該部分の用途及び機能を明確にする方法としては、一般に、前記した【意匠に係る物品の説明】の欄に記載する方法と【操作部等を説明する参考図】、【各部の名称を示す参考図】等により明確にする方法があります。

 もちろん、願書の記載及び願書に添附した図面等を総合的に判断して、当該部分の用途及び機能を導き出すことができるのであれば、それらの記載は不要ですが、出願人の方々にとっては当然に用途及び機能がわかっている部分でも、第三者が推定困難な場合もありますので、出願当初にいずれかの方法で当該部分の用途及び機能を明らかにしておいた方がよいでしょう。

7.「その他の部分」の開示の程度について
 部分意匠の意匠登録出願については、「意匠登録を受けようとする部分」と「その他の部分」を含む、部分意匠の意匠に係る物品全体の形態に、願書の「意匠に係る物品」の欄に記載された物品の区分に属する物品を認識するのに必要な最低限の構成要素が少なくとも明確に表されていなければなりません。

8.物品の孔部を部分意匠とする場合について
 「孔」、あるは「切り欠き部」自体は、空間であって物品の外観とはいえませんが、「孔」あるいは「切り欠き部」を囲む壁面を「意匠登録を受けようとする部分」とし、結果、形状に特徴のある「孔」あるいは「切り欠き部」を部分意匠として出願することができます。

9.「ひな形」又は「見本」作成のガイドライン
 ひな形または見本について、「意匠登録を受けようとする部分」以外の部分を例えば黒色または灰色(本体が黒色の場合は白色)で塗りつぶすことにより、「意匠登録を受けようとする部分」と「その他の部分」とを明確に表してください。その際は、容易に色落ち等しないよう注意してください。

 また、願書の【意匠の説明】の欄に、黒色または灰色(本体が黒色の場合は白色)で塗りつぶした部分が「意匠登録を受けようとする部分」以外の部分である旨を記載してください(様式8備考3)。

 なお、色を塗りつぶす等により「意匠登録を受けようとする部分」を特定できないときは、図面により出願することをお勧めします。

10.「写真」作成のガイドライン
 ひな形または見本の特定方法により、「意匠登録を受けようとする部分」を明確にしたものを写真に撮って現すことにより、「意匠登録を受けようとする部分」と「その他の部分」とを明確に表してください。

 なお、図面に代えて写真を提出することができる場合は、写真により意匠が明瞭に現される場合です(意施4条)。