堤卓の弁理士試験情報

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19.4.21 短答H18〔22〕

2007-04-21 14:53:15 | Weblog
 平成18年度 短答式試験

〔22〕特許権の効力に関し、次のうち、誤っているものは、どれか。

1 「医薬品」に係る発明の特許権がある場合、その特許権の存続期間終了後に、当該特許発明に係る医薬品と有効成分が同じ医薬品を製造し、販売する目的で、その製造につき薬事法所定の承認申請をするため、その特許権の存続期間中に、当該特許発明の技術的範囲に属する医薬品を生産し、これを使用して当該申請書に添付すべき資料を得るのに必要な試験をする行為には、その特許権の効力が及ばない。
〔解答〕正しい
 最高裁判決平成11年4月16日は、「特許権の存続期間終了後に特許発明に係る医薬品と有効成分等を同じくするいわゆる後発医薬品を製造販売することを目的として,薬事法14条所定の製造承認を申請するため,特許権の存続期間中に特許発明の技術的範囲に属する化学物質又は医薬品を生産し,これを使用して製造承認申請書に添付すべき資料を得るのに必要な試験を行うことは,特許法69条1項にいう「試験又は研究のためにする特許発明の実施」に当たる。」は判示した。
 最高裁判決を知っていれば、やさしい問題である。


2 「農薬」に係る発明の特許権の存続期間が延長された場合、当該延長登録の理由となった処分においてその農薬の使用される特定の用途が定められているときには、その特許権の効力は、当該特許発明の技術的範囲に属する農薬を当該用途について実施する場合にのみ及ぶ。
〔解答〕正しい
 特許法68条の2は、「特許権の存続期間が延長された場合(第67条の2第5項の規定により延長されたものとみなされた場合を含む。)の当該特許権の効力は、その延長登録の理由となつた第67条第2項の政令で定める処分の対象となった物(その処分においてその物の使用される特定の用途が定められている場合にあっては、当該用途に使用されるその物)についての当該特許発明の実施以外の行為には、及ばない。」と規定している。
 したがって、その処分においてその物の使用される特定の用途が定められている場合にあっては、当該用途に使用されるその物には、延長された特許権の効力が及ぶが、その他の用途に使用される物には、延長された特許権の効力は及ばない。
 条文レベルでやさしい。


3 「電気洗濯機」に係る発明の特許権がある場合、家庭内に設置され、日常の洗濯物の洗濯に用いられる家庭用洗濯機であっても、その家庭用洗濯機が当該特許発明の技術的範囲に属するときには、これをなんらの権原もなく業として製造し、販売する行為に、その特許権の効力が及ぶ。
〔解答〕正しい
 特許法68条本文は「特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する。」規定している。
 したがって、特許発明に係る「家庭用洗濯機」を業として製造・販売する行為(2条3項1号)には、特許権の効力が及ぶ。


4 「自転車」に係る特許発明の技術的範囲に属する自転車が、当該特許出願の時から日本国内にある場合、その自転車の所有者が特許法第79条に規定する先使用による通常実施権を有しないときであっても、その自転車には当該特許権の効力が及ばない。
〔解答〕正しい
 特許法69条2項2号は、「特許出願の時から日本国内にある物」には、特許権の効力が及ばないとしている。したがって、先使用権が認められない場合でも、当該自転車が当該特許出願の時から日本国内にあったときは、当該自転車には、特許権の効力が及ばない。
 条文レベルでやさしい。

5 「洋菓子の製造装置」に係る発明の特許権がある場合、当該特許発明の技術的範囲に属する洋菓子の製造装置を使用して製造した洋菓子についても、その特許権の効力が及ぶ。
〔解答〕誤り
 「洋菓子の製造装置」の発明は、物を生産する方法の発明ではないため、特許法2条3項3号が適用されることはない。
 したがって、特許発明に係る「洋菓子の製造装置」により製造した洋菓子を販売等することは、特許権の効力が及ばない。
 条文レベルでやさしい。