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コージーミステリを読み耽る愉しみ その24 ウェディング・プランナー(ローラ・ダラム著)

2023年04月12日 | パルプ小説を愉しむ
ワシントンDCのウェディング・プランナーのアナベル・アーチャーとアシスタントのケイトは殺人事件に遭遇する。依頼された結婚式の最中に。しかも、殺されたのはMOB、花嫁の母親。この母親、クララ・ピアスはアナベルにとっては顧客というよりも頭痛の種としか言いようのない母親。小さなことをあれこれ言い立て、ブラックリストである小さな手帳に気に入らない出来事を片端から書き込み後々ネチネチと攻め立てる。誰もが殺したいと思うような母親が四季の最中に薬殺された。どれくらい嫌われていたかの証拠は、彼女の葬式後のパーティでは皆が浮かれ楽しむくらいに。自分の依頼案件がけがされ、そして仲間のケイタラーに容疑がかかったことから、アナベルは独自の調査を開始する。クララはDCに住む上流階級らしく好むものは権力と浪費。離婚した前の亭主と後妻のゴシップをあれこれと流して中傷するは、今の亭主はほっぽらかして政府高官と情事を愉しむ。その政府高官も脅すことを厭わない。そんな女性だから敵も多い。調査を始めてすぐに、第二の殺人が起きる。クララの今の浮気相手が被害者。その夫婦の娘の結婚式用の試食の場にいたのは、またまたアナベル、ケイト、そしてケイタラーという取り合わせ。自分のキャリアがどうなるのか???前の夫が逮捕されて一段落と思ったところ、土壇場で真犯人に気付いたアナベル。犯人は花婿だった。労働者階級出身の彼は、身分を偽り上流階級の人間として世に出ていたのがクララに身分を知られてしまい、秘密にする代わりにクララの言うことをなんでも聞かざるを得ない状態になるのが嫌で犯行に及んだもの。秘密ばばれたと知った花婿がアナベルを殺しに来るが、同じアパートに住むお世話好きの老女の手助けで一命を取り留めて一件落着。

このシリーズは始めて読んだが、何のひっかりも余韻もなく猛スピードで読み終えた。文章が軽い、お話が軽い、何も残らない。読み終えて考えてみたところ、このシリーズはコージーミステリーとしての要素だけで出来上がっており、それを肉づけるものがないことに気付く。例えば、街並みの素晴らしさ、仕事がどれだけ辛いか・愉しいか、自分の容姿や着ているものへの執着の度合い、何が好きか嫌いか、こんな本筋とは関係はないものの物語を膨らませてくれる」エピソードが欠けている。例えばティーショップを営むセオドシアは、地元のチャールストンの街並みの美しさを語るし、英国王位継承権35位を持つ貧乏お嬢さまだって行く先々の街や出会う人たちについてあれこれ語ってくれる。こんな周辺情報が欠けているのがこのシリーズ。ミステリー、コージーとしての筋はしっかりとしてはいるが、これだけではお話は楽しくならない。前に進むベクトルと同じくらいに状況を説明してくれるエネルギーが満ちていることがコージーミステリーとして不可欠であることがよ~く分かった。

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