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「べつに言いがかりをつけるつもりはない。ひとこと所見を述べただけと考えてくれ」

2006年04月01日 | パルプ小説を愉しむ
『夜がまた来る』(エド・ゴーマン)の主人公ジャック・ウォルシュは私立探偵らしくない。なにせ64歳と高齢な上に、住んでいるアパートの管理人もしている。家賃を半額にしてもらう代わりとして。

とは言え、老人には老人の武器がある、とぼくれるという武器が。小泉第一次内閣の財務相だった塩爺も最初の記者会見で使って一躍人気者になった強力な武器です。相手に対してキツイことを言いながら、

「べつに言いがかりをつけるつもりはない。ひとこと所見を述べただけと考えてくれ」

などと言ってチャッカリとその場を納めてしまう。相手が爺さんだと攻める相手もついつい敬老精神のせいか、ついつい攻め口が弱くなって許してしまうもんか。

年寄りとは言え、このジャック・ウォルシュ爺さんは隅に置けない。向かいに住む32歳の女性と恋仲だし、この女は自分の赤ん坊の父親をジャックだと言っている。警官時代に逮捕した男の妻からの依頼で、男の無罪を証明する仕事を頼まれる。当然断るが、その夜に依頼者宅の裏庭で一人の女が殺された。家族の過去を穿り返すこととなる。当然昔の事件も再調査することになる。

老人らしい雰囲気を出そうと「わし」と自分を呼ぶ。派手な立ち回りは一切無し。地味なキャラクターで物語も地味メ。読みながらも頭に浮かんだイメージは、ヘミングウェイの遺作『海流の中の島々』のトーマス・ハドソンの生活。半引退した身をビミニの海辺の民家に置き、島の生活の一部となりながら自由に好きな絵を書いている。高台のある自宅からおりたビーチで朝ひと泳ぎし、届けられたばかりの朝刊をゆっくりと読みながらの朝食。島の時間はゆったりとしている。こんな引退生活に惹かれているから、ジャックの探偵生活は私にはちょっと今イチだったな。

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