お愉しみはココからだ!!

映画・音楽・アート・おいしい料理・そして...  
好きなことを好きなだけ楽しみたい欲張り人間の雑記帖

札幌出張の愉しみ フルーツケーキファクトリー

2018年08月30日 | スウィーツを愉しむ
半年振りの札幌出張。お約束のフルーツケーキファクトリーで一息入れる。



今日のケーキは、苺とマスカルポーネのタルト、そして白桃とメロンのタルトに決定。マスカルポーネが甘すぎず、酸っぱさも適度で、とても良いお味でした。
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カポーティ短篇集

2018年08月16日 | 読書雑感
アイスティーのグラスがたてる澄んだ音にも似て、心持甘く透き通って冷ややか
そして
こわれやすいカットグラスのような硬質な文体

これは、『カポーティ短篇集』の訳者があとがきに記していた文章だ。訳者の河野一郎さんにとっては思い入れの深い作家なのかもしれないが、私にとっては『ティファニーで朝食を』の著者という程度でしかなかった。そのカポーティの短篇をいくつか読んでみた。

英語と日本語の性格の違いもあるだろうが、「壊れやすいカットグラスのような硬質な文体」を感じることはできず、カポーティ独自の文体というものが私には感じられなかった。唯一思ったこととして、この作家は比喩表現にコダワリをもっていたのではないだろうか?ということ。いろいろな比喩があちらこちらに見られる。

『イスキア』
島は、永遠に錨を下ろした船のようなものだ。

暑い季節の訪れた今、午後は白い真夜中のようだ。

ぼくらは春とともにやって来た。(中略)まだ冬ざれた三月の緑の海は、六月には紺碧に変わり、ねじれた枝に灰色もわびしくまつわっていたぶどうのツタも、はじめての緑の房をたわわにぶら下げている。蝶も姿を見せ、山にはミツバチのためのごちそうがあふれている。


『スペイン縦断の旅』
まるで何人の年老いた人夫が機関車を引っ張っているように、列車はゆっくりと這うようにグラナダを出た。

『フォンターナ・ベッキア』
一月にはじまるのだ、シチリアの春は、そしてやがてすばらしい花束に、すべてが咲きそろった魔法使いの花園になる。

残念なのだが、比喩の達人と崇めるわけにはいかない。それどころか、「この比喩を使ってやろう」的な、予め考えておいた比喩を散りばめただけのような印象を受けるものが多い。ちょっと気取って、「この表現はどうだ」的な出し方で比喩を繰り出してくる。「島は永遠に錨を下ろした船のようだ」には、力を込めての一文を差し込んだ感があるくせに、前後を読むと別にこの一文が無くても全く構わないのだ。そんな不自然さをカポーティ短篇集を読みながら感じてしまった。

とは言え、列車に乗っている時に起きたちょっとした出来事を8ページの物語に仕上げたり、道に迷った自分を泊めてくれた人里離れた住処に住む親切な老婦人との一晩をノスタルジックに書き上げた短篇など、この作家は遠い昔を思い出しながら含みを持たせて物語を紡ぐことに長けている。夜に一人で読む短篇作家と言えるだろう。
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『ツバキ文具店』 小川糸著

2018年08月11日 | 読書雑感
小川糸作品としては5作目になります。以前にNHKの番組で観ていて、今の時代に代書屋という仕事を若い女性がするというアナクロ的な設定が、鎌倉という土地柄と相まって、特殊な雰囲気を持った作品になって非常に愉しめるドラマになっていた。そんな記憶があったの、見つけた時に思わず手にとってしまった。

この作品も小川糸ワールド満載の物語で、読んでいるうちにホッコリと幸せになれること間違いなし。あちらこちらに乙女ちっくな言葉が撒き散らされ、そんな今様な雰囲気の中で若い女性が「代書屋」という、めったに目にしない職業ならでは物語が紡がれる。一種の逆張り戦略だよね、代書屋という仕事をする若い女性という設定が。

    ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

眠くなるのではない。自分の意識が、どこか深くて暗くて底のない場所へ、ゆっくりと後ろ向きに埋没していくのだ。後一歩で、恍惚の境地に達しえそうだった。
「ゆっくりと後ろ向きに埋没」という言葉のセンスが好きです。普通の人には出てこないはずの形容の仕方があちらこちに顔を出しているのが、小川糸さんの本を読む愉しみのひとつになっている。

百ワットの明るさの声を出す。
これもそう。職場にやたらと元気の良い声を出し、周りにエネルギーを振りまいている女性がいるが、「百ワット」という形容の仕方がぴったりとくる。多少、不必要な明るさという意味合いも伝わってくるのだが...

気がつくと、もう太陽が沈んでいる。目の前に、堂々と夜が姿を現す。生まれたばかりの夜という生き物に餌をあげるみたいに、浜辺ではこどもたちが花火に火をつけ遊んでいる。

その瞬間、朝陽が廊下の窓から差し込んできた。ピカーッ、という派手な音が聞こえそうなほどの強烈な光だった。まぶしくて、めまいがしそうになる。

きょうは旧暦のお正月である。そういわれると、なんだか町全体の雰囲気が、紅をさしたようにほのぼのと明るくなってくる。

「生まれたばかりの夜」、「ピカーッ」、「紅をさしたように」、はどれも純粋な心の持ち主だからこそ出てくる正直でストレートな物言いだと思う。心根の悪い人は誰も出てこない物語に相応しい表現であり、小川糸の小説ならでは幸福感をもたらしてくれている。

一方、日ごろメールなどでものを書く習慣がありながら、知らなかったことも教えてくれている。

手紙の最初に書く「拝啓」という言葉は、「へりくだって申し上げます」という意味だ。その言葉出始めた手紙は、「敬具」でしめるが、それは「以上、うやまって申し上げました」という気持ちを表す言葉である。もっと丁寧に格式をもって書く時は、「謹啓」とし、その場合は「敬白」で結ぶ。要するに、これはお辞儀のようなもの。季節のご挨拶もすべて省いていきなり本題に入る時は、「前略」と記し、「不一」で結び、十分に意を尽くしていないことを示す。走り書きをわびる場合は、「草々」で締める。前略は、挨拶で言うところの「やぁー」とか「ハ~イ」といった、ごくごく親しい間柄で交わされる気軽な挨拶だ。

へぇ~、そうだったんだ。単に、「かしこ」は女性の結び言葉、「草々」は「前略」とセットで使うという程度の理解でしかなかった。チコちゃんに"ボーっと生きてるんじゃねーぞ"と叱られずに済みそうだ。そして、日本人に伝わる体をいたわる為の食の知識がこれだ。

春は苦み、夏は酢の物、秋辛味、冬は油と心して食え

心得を通り越して、文章としても美しいね。だからこそ、物語の中で主人公は、墨で手書きしたものを部屋に張り出しているのだね。よく分かる、そして、この小説の中身をもよく表している。
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四十路キャリアウーマンに昭和のオヤジ戦士が乗り移った (アッコちゃんシリーズ)

2018年08月08日 | パルプ小説を愉しむ
そもそものきっかけは、NHKオンデマンドで観たドラマ、「ランチのアッコちゃん」。ダメOLがキャリアウーマンにビシビシとシゴかれながらも、人と人の間の機微にも通じて人間として一回りも二回りも大きく育っていくというヒューマンドラマが心のどこかに引っかかっていたんだろうな。図書館でタイトルが目に入った瞬間に借りていた。

   ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

真の主人公である黒川敦子は、見た目も精神的にもたくましいキャリアウーマン。それも、ひとつの会社文化の中でのみ通用するカスタマイズされ飼いならされたキャリアウーマンではなく、自分でどんどん新しい事業を切り開いていくバイタリティ溢れるアントレプレナーにして、世の人々を磁石のごとく引き寄せる不思議な磁力を持っている。でも実態は、日本に高度成長をもたらした昭和の"24時間"働ける企業戦士そのもの。その証拠に、言う事がオヤジの論理丸出し。

仕事は仕事、プライベートはプライベートとはっきりと線を引き、押し付けられた忘年会の幹事役にまったくやる気を出せない新入社員(一応、男)に対して、
「あなたが言っていることって矛盾だらけねぇ。文句ばっか言ってるくせいに結局戦わず、昔からのやり方に従うわけ?」
と挑発しておいた上で、トドメの台詞が
「幹事が楽しめば、その忘年会は絶対に成功するの。あなたのフィールドにみんなを引っ張り込めばいいのよ。こんなに合理的でシンプルで双方にとって得なことはないじゃない。(中略)営業の仕事って人対人で出来ているんだから、相手に合わせるだけじゃなく、自分に巻き込むしたたかな力は絶対に必要なのよ」
だって。気持ちと気合の世界を忘年会の幹事役の心得に持ち込んだと思ったら、返す刀で仕事の営業についての説教にまで化けている。ロジックそこのけで、自分の信じるコトを"これしかない!これが絶対!!"とグイグイ押し込む迫力、これこそ昭和のオヤジそのものだろう。

どうして他人が一度食べた串揚げを二度付けしない保証があるのか?と串揚げ屋のソース壷に対して不潔感を露わにするや、
「そうよ。そのとおり。人間はエゴイスト。自分さえよければいいと思っているからこそ、誰も二度づけしないんだとわたしは信じているの」
これって論理が通っているか?でも、こう言われるとそうかなと思ってしまう。ロゴスは大事だが、最後にモノをいうのはパトス。人間としての生命力が強いかどうかが大事であることをこのキャリアウーマンは体言してくれている。
「もし、例えば誰かが隠れて二度づけしてごらんなさいよ。もう何も信じられなくなるじゃない、その人。疑心暗鬼でこの店にもこられなくなるわよ。それがわかっているから、みんな規則を守るの。いわば自分の為に。他人を裏切るということは自分を裏切ることだもの」

そんな黒川敦子のことを冷静に分析する同年代の雑誌編集者がこう言った。
かつて惹き付けてやまなかった能力とは、カリスマ性でも人を引き込む話術でもマーケティング能力でもない。おそらく-。問題を可視化し、物事をすっきり単純化するセンスだ。

そのくせ、妙に神妙なことを言い出す。
私のように、人の上に立つ立場をずっとやっていると、からからのスポンジが水を吸うみたいに知識や技術をぐんぐん吸収するという心地よさを忘れてしまう時があるの。だから、こうして習い事をするのかもしれないわね。あなたみたいな素直な姿勢を時々は取り戻しておきたいと思っているのよ
こんな台詞を敬愛する上司から言われたら、部下として目がハートマークになってしまうやろ!!!!

   ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

この「アッコちゃん」シリーズ(「ランチのアッコちゃん」「三時のアッコちゃん」「幹事のアッコちゃん」)は、男中心の不条理なビジネスの世界で必死に生きる努力を続ける不器用な女性に対するレッドブルのような栄養ドリンクであり、心の清涼剤でもあり、そして一種のビジネス書でもある。
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