『影の叫び』(エゴ・ゴーマン)の主人公ジャック・デゥワイアは私立探偵。それもフィリップ・マーローばりのとびきりハードボイルド派。でもちょっと違うんだな、人物が。弱いものに暴力を振るう奴等には強い腕っ節で対抗し、日々の生活に追われる市井の人々には優しい目を向ける。毎日を精一杯生きている人たちに対して、その人ならでは美点を見つける優しくヒューマンな心の持ち主という文句のないハードボイルド主人公なんだが、やりすぎちゃいましたね、エド・ゴーマンは。あまりにハードボイルドとしての印象を強めた結果、かえって不自然になってしまった。清廉潔白すぎて近づきがたい人間がいるように、この主人公も親近感が持てないお話の中での作り物としての存在になってしまった。ロス・トーマスが描く登場人物たちだと、ワルとは分かっていながら好きになってしまう人間臭さプンプンなのに対して、ジャック・デゥワイアはアンドロイドみたいに完璧な主人公なので、尊敬はできても好きになれないのです。小説の主人公としてはちょっとね、って感じがしてしまうのです。
超一流レストランのオーナーの一人が殺され、その奥方に殺人事件調査を依頼される。この奥方も、もう一人のオーナーも被害者を嫌っていた。2ブロック先にあるホームレス保護施設に勤める女性を訪ねて色々なことを聞き出そうとするのだが、そのシーンでタイトルに書いた台詞が登場する。
これって便利な台詞だと思いました。女性にあれやこれや辛らつなことを言ったり、こちらにとって都合の悪い状況下で相手が興奮したりした場面で、相手の逆上した醜い姿を軽く言及して
「そういうあなたを見たくないんです」
というのは使える手だと思ったのです。興奮して逆上した相手と100%面と向かうのではなく、上手にはぐらかしつつ、「君は本当は素晴らしい女性なのになぜそんなことをするの?」と言いたげな余裕を持った対応。ズルイ手だとは思うものの、いちいち相手をしていられる程の暇人でもなし、適当にあしらっておきたい時ように頭にメモリーしておくことにしました。
超一流レストランのオーナーの一人が殺され、その奥方に殺人事件調査を依頼される。この奥方も、もう一人のオーナーも被害者を嫌っていた。2ブロック先にあるホームレス保護施設に勤める女性を訪ねて色々なことを聞き出そうとするのだが、そのシーンでタイトルに書いた台詞が登場する。
これって便利な台詞だと思いました。女性にあれやこれや辛らつなことを言ったり、こちらにとって都合の悪い状況下で相手が興奮したりした場面で、相手の逆上した醜い姿を軽く言及して
「そういうあなたを見たくないんです」
というのは使える手だと思ったのです。興奮して逆上した相手と100%面と向かうのではなく、上手にはぐらかしつつ、「君は本当は素晴らしい女性なのになぜそんなことをするの?」と言いたげな余裕を持った対応。ズルイ手だとは思うものの、いちいち相手をしていられる程の暇人でもなし、適当にあしらっておきたい時ように頭にメモリーしておくことにしました。