このシリーズを読んだのは4年以上前。主人公のフレーヴィアが生意気でいけ好かない小生意気な化学好きな11歳の少女であったことは覚えている。図書館の棚にあった『不思議なキジのサンドウィッチ』はシリーズの第6話。2話からいきなり6話に跳んでしまったのだが仕方がない。
6話の書き出しはいきなり「おまえたちのお母さんが見つかったんだ」で始まる。死んでいたはずのフレーヴィアたち姉妹の母親のハリエットがみつかったとは??読み飛ばした3話から5話の間で何が起こっていたのかと思ったが、読んでいくと母親ハリエットの死体が見つかって地元バックショー荘に戻って来たのだった。ヒマラヤ山中で見つかったハリエットの死体は冷凍状態にあり、そのまま棺桶に入れられて地元バックショー駅に戻ってきた。棺桶に付き添ってきたのは軍服に身を固めた人々。空軍少将だという叔母も袖にストライプが入った軍服を着ており、しかも元首相のチャーチルまで来ている。時は1951年だから元首相だ。これだけの人物がいきなり登場するのだから、湧いてくる当然の疑問としてハリエットとは何者だったのだ?フレーヴィアが屋根裏部屋で偶然見つけた映写機と映画カメラ。カメラには未現像のフィルムが残っていたのだが、化学好きの少女にとってフィルムの現像は簡単な作業。フィルムに記録されていたのは飛行機から降りるお腹が大きなハリエット(中にいるのはフレーヴィア)。父と一緒にピクニックしているハリエット(だれが撮影した?)。カメラがパンした際に屋敷内に立っていた長身のアメリカ軍人と思われる男性。そしてカメラに向かって何かを伝えようと口を動かすハリエット。口の動きが伝える言葉は「キジのサンドウィッチ」。やった、題名に関連するキーワードが謎として提示された。同じ言葉は冒頭の死体が戻ってきた駅で元首相のチャーチルも口にしていたのをフレーヴィアは耳にしている。謎の言葉は何を意味しているのか、そしてハリエットがヒマラヤの氷河の中で死んだ理由は?
フレーヴィアは凍死した死体にアデノシン三リン酸とビタミンB1を注射することで凍死死体を蘇らせることができるという説を思い出して試そうとする。お通夜の夜伽の担当時間に決行する。覆いを開け、棺桶の中にドライアイスを閉じ込めている亜鉛の覆いを苦労して切り取ったところ、母親の顔が出てくる。手を差し入れたところ紙入れが見つかる。抜き出したその瞬間に内務省の役人たちがやって来てフレーヴィアは部屋から追い出されてしまう。せっかくの苦労が無駄になったものの、手に入れた紙入れの中に遺書があることを見つける。自分が読むべきではないと思ったフレーヴィアは父親に渡すタイミングを見計らう。そんなうちに夜が明け葬儀が始まる。紙入れに手がかりが残されていないか探そうとしているうちに、ブンゼンバーナーで炙った紙入れの表面に字が浮かび上がる。Lens Palace。母親が残したダイイングメッセージだと直感するものの意味不明。モヤモヤしたまま葬儀に出る一族だったが、教会のステンドグラスに書かれた文字からLens Palaceがハリエットを殺した犯人の正体に気付く。なんと身内のリーナ・ド・ルース。ばれたと分かり逃げようとするリーナは警察に追われ、教会のガラスに挟まれて出血多量で死んでいく。ハリエットは大戦中に日本軍のスパイをあぶりだす作戦に従事していたところ、スパイ本人のリーナに殺されていたのだった。
事が終わった後で、遺言が執行される。バックショー荘を含むハリエットの財産は末子のフレーヴィアが相続することとなり、フレーヴィアは母親と同じカナダの女子学校に寄宿することとなった。嫌がるフレーヴィアだが、化学実験装置が充実していることを知らされるや行く気満々になってしまうところが化学好きならではの思考回路だ。
第1話では11歳だったフレーヴィアは第6話で12歳。6件の事件が起こっているのが1年ちょっとの間。最初はいけ好かない科学オタクとした思えなかった少女だが、実は思いやりの情にあつい少女でもあったことが分かる作品だった。
窓というのはほとんど変化せずに存在しながら、つねに変化している外の時代を見ていることができる手近にある化学の奇跡だ!
強調されると思わずそうかも、と思ってしまう。ちょっとした哲学っぽい台詞。
恋愛と戦争と頑固な姉の操作にかけては何をやってもかまわないのだ。
12歳の少女なりにつかんだ仲の悪い姉たちとの付き合い方。それを恋愛と戦争にも応用させてしまうところにフレーヴィアの恐ろしさと賢さが見て取れる。作者の意図と計算が遺憾なく発揮されているなぁ。
光を与えよ(ダレ・ルケム)
多分ラテン語だろう。覚えておけば使えそうだ。
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■『人形遣いと絞首台』
シリーズ2作目となるこの作品でも、フレーヴィアちゃんは相変わらずいけ好かない子供だ。口は悪いし、自分の興味本位で行動するし、姉に対する悪戯が半端ない。それでも、この悪魔的な主人公に愛着を感じてしまうのは、主人公であるからなのであろう。彼女の一挙一足が物語を生み出し、彼女の意見や考えが述べられることでストーリーが進む。性格が悪いと断定されている姉二人から見た物語があったとしたら、フレーヴィアはさぞかしボロクソになっているのだろう。どんなに嫌なやつでも、その人間に密着して、その人間からの意見のみを聞かされると、許せるようになるだけではなく、愛着も感じるんだろう。
映画などで、ダーティーヒーローやヒールと呼ばれる役が愛され役になるのも、同じ心理なのだろう。現実の世で一緒に時間を過ごしたならば、決してそうは思わないことを感じてしまうのだろう。その意味で、欧米映画において、アジア人が一人の人間として描かれないことは、彼らの人種的な偏見に根付くものだろうし、彼らは決して一人の人間としてアジア人を見ようとしていないよね、本題とは違う話だけれど...
それにしても、フレーヴィアちゃんの化学知識は驚愕もので、罪の意識から殺鼠剤を飲んで自殺しようとした殺人犯に鳩の糞から解毒効果のあるNaNO3を抽出して飲ませることで一命をとりとめさせる。こんなことが11歳にできるのか?著者の化学知識も半端ないよね。
☆★☆★☆★☆★☆★
そりゃ、シンシアが仕切り上手だということは認めざるを得ないけど、そんなことを言えば、鞭を持ってピラミッドを立てさせた男の人たちだって仕切るのがうまかったわけでしょ。
厳しい一言だね。ピラミッドが奴隷によって立てられたかどうかは議論の余地があるようだが、そんなことはお構いなしに世にはびこっている偏見を利用して自分の嫌いな相手のことを悪く言っている。これが11歳か(もちろん、著者は11歳ではないが)。
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■『パイは小さな秘密を運ぶ』
主人子は、なんと11歳の女の子。11歳といって侮る無かれ、化学が趣味でそん所そこらの大人では太刀打ち出来ないほどに化学の知識を持っており、その上、性格がチョコッとねじまがっている。なにせ、2人いる姉に対して、辛らつな言葉を吐くだけではなく、化学の知識を使って復讐をしっかりと計画的に実行するくらいだから。
フレーヴィア・ド・ルースというのがその女の子の名前。イギリスの田舎に住んでおり、2人だが召使もいる。決して金持ちではないが、しっかりとした名家の有産階級の子供。この11歳が、自宅の庭で起きた殺人事件を解決してしまう。解決するまでに、あっちこっちをフラフラを放浪しつつ、それでもしっかりと推理しながら、誤認逮捕されてしまった父親を救い出すんだから大したものだ。
☆★☆★☆★☆★☆★
男性と女性の間は壊れた電話で繋がっていて、どっちかが電話をきったとしても絶対にわからない。でも女の子が相手なら、最初の三秒間でわかる。女の子同士の間には、音も無く目にも見えない信号が絶えず流れている。
これが11歳の女の子が口にする台詞だろうか。人生をしっかりと生き抜いたおばさんが口にしそうな深遠な哲理だね。こんな台詞が吐ける女の子という設定がいいよね。
ドガーは入ってきて、驚いてまわりを見渡した。まるで、気が付いたら古代シュメールの錬金術師の実験室に運ばれていた、と言わんばかりに。
古代シュメールと錬金術の2重の組み合わせが絶妙だね。
全体的にとても異質で、冥王星で起きている出来事のようだった。
6話の書き出しはいきなり「おまえたちのお母さんが見つかったんだ」で始まる。死んでいたはずのフレーヴィアたち姉妹の母親のハリエットがみつかったとは??読み飛ばした3話から5話の間で何が起こっていたのかと思ったが、読んでいくと母親ハリエットの死体が見つかって地元バックショー荘に戻って来たのだった。ヒマラヤ山中で見つかったハリエットの死体は冷凍状態にあり、そのまま棺桶に入れられて地元バックショー駅に戻ってきた。棺桶に付き添ってきたのは軍服に身を固めた人々。空軍少将だという叔母も袖にストライプが入った軍服を着ており、しかも元首相のチャーチルまで来ている。時は1951年だから元首相だ。これだけの人物がいきなり登場するのだから、湧いてくる当然の疑問としてハリエットとは何者だったのだ?フレーヴィアが屋根裏部屋で偶然見つけた映写機と映画カメラ。カメラには未現像のフィルムが残っていたのだが、化学好きの少女にとってフィルムの現像は簡単な作業。フィルムに記録されていたのは飛行機から降りるお腹が大きなハリエット(中にいるのはフレーヴィア)。父と一緒にピクニックしているハリエット(だれが撮影した?)。カメラがパンした際に屋敷内に立っていた長身のアメリカ軍人と思われる男性。そしてカメラに向かって何かを伝えようと口を動かすハリエット。口の動きが伝える言葉は「キジのサンドウィッチ」。やった、題名に関連するキーワードが謎として提示された。同じ言葉は冒頭の死体が戻ってきた駅で元首相のチャーチルも口にしていたのをフレーヴィアは耳にしている。謎の言葉は何を意味しているのか、そしてハリエットがヒマラヤの氷河の中で死んだ理由は?
フレーヴィアは凍死した死体にアデノシン三リン酸とビタミンB1を注射することで凍死死体を蘇らせることができるという説を思い出して試そうとする。お通夜の夜伽の担当時間に決行する。覆いを開け、棺桶の中にドライアイスを閉じ込めている亜鉛の覆いを苦労して切り取ったところ、母親の顔が出てくる。手を差し入れたところ紙入れが見つかる。抜き出したその瞬間に内務省の役人たちがやって来てフレーヴィアは部屋から追い出されてしまう。せっかくの苦労が無駄になったものの、手に入れた紙入れの中に遺書があることを見つける。自分が読むべきではないと思ったフレーヴィアは父親に渡すタイミングを見計らう。そんなうちに夜が明け葬儀が始まる。紙入れに手がかりが残されていないか探そうとしているうちに、ブンゼンバーナーで炙った紙入れの表面に字が浮かび上がる。Lens Palace。母親が残したダイイングメッセージだと直感するものの意味不明。モヤモヤしたまま葬儀に出る一族だったが、教会のステンドグラスに書かれた文字からLens Palaceがハリエットを殺した犯人の正体に気付く。なんと身内のリーナ・ド・ルース。ばれたと分かり逃げようとするリーナは警察に追われ、教会のガラスに挟まれて出血多量で死んでいく。ハリエットは大戦中に日本軍のスパイをあぶりだす作戦に従事していたところ、スパイ本人のリーナに殺されていたのだった。
事が終わった後で、遺言が執行される。バックショー荘を含むハリエットの財産は末子のフレーヴィアが相続することとなり、フレーヴィアは母親と同じカナダの女子学校に寄宿することとなった。嫌がるフレーヴィアだが、化学実験装置が充実していることを知らされるや行く気満々になってしまうところが化学好きならではの思考回路だ。
第1話では11歳だったフレーヴィアは第6話で12歳。6件の事件が起こっているのが1年ちょっとの間。最初はいけ好かない科学オタクとした思えなかった少女だが、実は思いやりの情にあつい少女でもあったことが分かる作品だった。
窓というのはほとんど変化せずに存在しながら、つねに変化している外の時代を見ていることができる手近にある化学の奇跡だ!
強調されると思わずそうかも、と思ってしまう。ちょっとした哲学っぽい台詞。
恋愛と戦争と頑固な姉の操作にかけては何をやってもかまわないのだ。
12歳の少女なりにつかんだ仲の悪い姉たちとの付き合い方。それを恋愛と戦争にも応用させてしまうところにフレーヴィアの恐ろしさと賢さが見て取れる。作者の意図と計算が遺憾なく発揮されているなぁ。
光を与えよ(ダレ・ルケム)
多分ラテン語だろう。覚えておけば使えそうだ。
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■『人形遣いと絞首台』
シリーズ2作目となるこの作品でも、フレーヴィアちゃんは相変わらずいけ好かない子供だ。口は悪いし、自分の興味本位で行動するし、姉に対する悪戯が半端ない。それでも、この悪魔的な主人公に愛着を感じてしまうのは、主人公であるからなのであろう。彼女の一挙一足が物語を生み出し、彼女の意見や考えが述べられることでストーリーが進む。性格が悪いと断定されている姉二人から見た物語があったとしたら、フレーヴィアはさぞかしボロクソになっているのだろう。どんなに嫌なやつでも、その人間に密着して、その人間からの意見のみを聞かされると、許せるようになるだけではなく、愛着も感じるんだろう。
映画などで、ダーティーヒーローやヒールと呼ばれる役が愛され役になるのも、同じ心理なのだろう。現実の世で一緒に時間を過ごしたならば、決してそうは思わないことを感じてしまうのだろう。その意味で、欧米映画において、アジア人が一人の人間として描かれないことは、彼らの人種的な偏見に根付くものだろうし、彼らは決して一人の人間としてアジア人を見ようとしていないよね、本題とは違う話だけれど...
それにしても、フレーヴィアちゃんの化学知識は驚愕もので、罪の意識から殺鼠剤を飲んで自殺しようとした殺人犯に鳩の糞から解毒効果のあるNaNO3を抽出して飲ませることで一命をとりとめさせる。こんなことが11歳にできるのか?著者の化学知識も半端ないよね。
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そりゃ、シンシアが仕切り上手だということは認めざるを得ないけど、そんなことを言えば、鞭を持ってピラミッドを立てさせた男の人たちだって仕切るのがうまかったわけでしょ。
厳しい一言だね。ピラミッドが奴隷によって立てられたかどうかは議論の余地があるようだが、そんなことはお構いなしに世にはびこっている偏見を利用して自分の嫌いな相手のことを悪く言っている。これが11歳か(もちろん、著者は11歳ではないが)。
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■『パイは小さな秘密を運ぶ』
主人子は、なんと11歳の女の子。11歳といって侮る無かれ、化学が趣味でそん所そこらの大人では太刀打ち出来ないほどに化学の知識を持っており、その上、性格がチョコッとねじまがっている。なにせ、2人いる姉に対して、辛らつな言葉を吐くだけではなく、化学の知識を使って復讐をしっかりと計画的に実行するくらいだから。
フレーヴィア・ド・ルースというのがその女の子の名前。イギリスの田舎に住んでおり、2人だが召使もいる。決して金持ちではないが、しっかりとした名家の有産階級の子供。この11歳が、自宅の庭で起きた殺人事件を解決してしまう。解決するまでに、あっちこっちをフラフラを放浪しつつ、それでもしっかりと推理しながら、誤認逮捕されてしまった父親を救い出すんだから大したものだ。
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男性と女性の間は壊れた電話で繋がっていて、どっちかが電話をきったとしても絶対にわからない。でも女の子が相手なら、最初の三秒間でわかる。女の子同士の間には、音も無く目にも見えない信号が絶えず流れている。
これが11歳の女の子が口にする台詞だろうか。人生をしっかりと生き抜いたおばさんが口にしそうな深遠な哲理だね。こんな台詞が吐ける女の子という設定がいいよね。
ドガーは入ってきて、驚いてまわりを見渡した。まるで、気が付いたら古代シュメールの錬金術師の実験室に運ばれていた、と言わんばかりに。
古代シュメールと錬金術の2重の組み合わせが絶妙だね。
全体的にとても異質で、冥王星で起きている出来事のようだった。