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コージーミステリを読み耽る愉しみ その18 チョコ職人と書店主の事件簿(キャシー・アーロン著)

2022年04月12日 | パルプ小説を愉しむ
シリーズ第二作『トリュフチョコと盗まれた壺』では、主人公ミシェルと親友のエリカが営むチョコレートショップ兼本屋が、地元の名士一族の所蔵物であったマヤ文明遺跡品が博物館に寄贈されるにあたってのお披露目パーティ会場として貸し出さるところから物語が始まる。名士一族の指名でケイタリング業者がミシェルのチョコレートショップのキッチンを台無しにしながらもパーティが続けられる中で、後で事件の関係者と目される登場人物を一同に登場させる方法としてはこのパーティという設定は上手だね、

今回は事件は、ミシェルの店で展示されていたマヤ文明の展示品が盗まれてしまう事件。他のコージーミステリーとは異なり人殺しでなかったので、舞台として設定されているエリアの雰囲気や状況を加味した上でのことかと思ったところ、あにはからんや殺人が起きてしまう。もちろん、ミシェルとエリカはだらしない地元警察に睨まれながらも事件を探っていく。

チョコレートを食べだすと止まらないという一種のチョコアレルギー症状を持つ私としては、ミシュルが作る様々なチョコラがすべて美味しそうで堪らない。アメリカの甘味というと、彼らが作るド派手な色使いをしたくどいばかりの甘ったるさしかないケーキに辟易していた記憶しかない私だが、チョコレートとなると一切の記憶がない。口にする機会があまりなかったようなのだが、今思うとちょっと残念ではある。

さてさて、このシリーズは主人公2人がまともに事件を嗅ぎまわることと美味しそうなチョコレートが色々と出てくることが特徴で、2人の恋愛はちょっとばかり脇に置かれている。男っ気がないというわけではないのだが、ミシュルの意中の人であるエリカの兄との中が進展しないのだ。遠くから見て憧れを募らせる中で偶にお話をする程度。エリカは警察に勤めるボビーとついたり離れたりはっきりしない。恋愛にもっとハイライト当てて物語の脇道も華やかにした方がいいよ、とアドバイスしてあげたいぐらい。加えて、主人公2人のリアリティ感が乏しい。20代なのだろうが、20代ならではの溌剌さが感じられない。ミシュルはやたら人が良いように描かれているが、そんなに気前が良すぎて店の経営が成り立つのかが読んでいて心配になるくらい。物語の中のお話という匂いがプンプンするのもいかがなものか...

ラテン系イケメン2名がいかにも怪しげな存在として登場するものの、犯人は寄贈元の地元名士一族の次男。自分の出来が悪いことを棚に上げて、自分の扱いが不当との思いから一族が持っていたマヤ出土品を秘密裏に売っていた。それに加担していたのが殺された元大学教授で博物館キュレーターとなった人物。仲介手数料をごまかしていたことが晴れて始末されてしまった。でも、いくらひねくれていても金持ちのボンボンが簡単に人殺しなどするのかねぇ?読んでいる時は気にならないあったが、これを書いている今は気になる。

ほかの人が着ればさぞかし素敵だろうというカクテルドレスに身を包んでいた。
皮肉が利いている形容の仕方だね。素敵なドレスも着る人次第ということか。

プロの作家というものは、”すごくきれい”よりもっと気の利いたセリフを思いつかなければだめな気がする。
ミシェルが恋心を募らせている相手(作家)がミシェルのことを”すごくきれい”と褒めた時に、物足りなさを感じた主人公がこう言う。でもその直後に「まるで妖精のよう」とフォローさせることで、恋のお相手としての資格を物語の中で維持し続けることが許されている。私だって”すごくきれい”以上のセリフを口に出せると思うよ、日本語ならばね。

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コージーミステリーの主人公の主人公も段々と専門化してきた。このシリーズではショコラティエと共同店の片割れで書店を営む親友の2人組の活躍する東海岸の小さな村が舞台。早くに両親に死に別れて兄に育てられたミシェル・モラーノは、何に対してもやる気が行かったが、ある日チョコレートショップでアルバイトをしたときにチョコレートの魅力と自分の嗅覚能力に気付いてショコラティエとなった。そうだよね、順風満帆で育ってきた優等生という設定では共感が得られないからね。名門貴族の生まれであっても貧乏だとか、成功したお金持ちであったとしても性格がひねくれているとか、何か欠点だったり弱点があることが主人公となるための条件だね。

落ち目の町で町おこしイベントをすることとなったものの、イベント直前にミシェルの作ったチョコを食べて人が死んでしまった。しかもその人は隣の店で写真店を営むお知り合い。チョコには毒が仕込まれていた。さあ、町は大騒動。そして町興しイベントにも悪影響が出そう。それよりも、ようやく軌道に乗りかけて御贔屓さんも出てきたチョコレート店の事業に大打撃。警察も頑張ってくれているが、やはり自分たちで解決することが早道と、ミシェルと親友のエリカは捜査に乗り出す。コージーミステリーとして当然の進行。

犯人は、ミシェルたちが通っていた学校の尊敬されている校長先生と町長の2人組。この二人が犯行を行うようなそぶりや気配がまったくなく、完全に裏をかかれた。町長は新興のソーラーエネルギー会社から裏で政治献金をもらっており、校長はその町長と不倫関係。これをつかんだ写真店主のデニースが二人を強請り始めたために犯行に及んだもの。

最期の最後まで、とうとう誰が犯人なのか分からなかった。と言うか、ヒントが少なすぎて読み手の犯人捜しが進まない。そして、お話の進行もスロー。ミシェルの視点で物語が進行するように一人語りで書かれているが、興味をそそられるサブエピソードが乏しい。他に魅力的だったり強烈な個性を持つような登場人物がいないのだ。平均的な人物、良くも悪くも、ばっかりの田舎町での物語なので半分くらいまで読むのが辛かった。メインプロットとサブプロット、そして主人公に対抗できる魅力的な登場人物、それがストーリーテリングには欠かせないことがよーく分かった作品だった。

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魔法のあまりきれいではない部分はお客様に見せたくなかった。
白鳥の姿は優雅だが水面では必死に水かきしていると言う。人には知られたくない必死の姿や舞台裏を隠すときに、「魔法の・・・」という言い方はとても綺麗だよね。

字幕なしでスペイン語のメロドラマを見ているような気分だった。
日本だったら「字幕なしの韓国ドラマ」と言うところか。なんとなく雰囲気は分かるが細かいところが理解できない、ちょっと気取ってはいるが分かりやすい。

「ちょっと褒めすぎかも。わたしの類語辞典はもうネタ切れよ」
類語辞典を出しても、何人が理解してくれるだろうか。相手の知性の程度にもよる言い方だね、

「チョコレートにはアレルギーがあるのよ」
「食べるとどうなるの?」
「太るのよ」

この意表をつく冗談はいい。いろいろなケースで使えそうだ。特に私の場合、チョコレートを食べだすと止まらないというアレルギーがあるので。
コメント
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